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異界暗殺業  作者: 紅鈴
仕立屋
28/185

2-2

自身の店の開店前に来店したルインを送り出したオーバンは開店準備に戻ろうとした。


「そういえば店長?何でスリーピース着てるんですか?ここ店内ですよ?」


スリーピースとはズボン、ベスト、ジャケット、の3つを1つの布で作る物だ。室内でもジャケットの着用をする事は有るが、夜明けの時間に外に出る用事もない時に着ているのはおかしかった。


「サマンサさん、我々は服飾士ですよ?その日一日を彩る衣装を着て、それが合っているかの確認をしないのですか?」

「私はしますね。店長に減給されたくないので。」

「現金ですねぇ・・・まあ、その確認を自室でしていた時にルインさんが来店したのですよ。」

「よく自室なのに来店が分かりましたね。」

「ドアの所に呼び鈴の魔道具を付けています。対応する対の魔道具は、私が離さず持っていますので。」

「あ~、理解しました。」


サマンサが納得の言葉を出す間にオーバンがジャケットを丁重に脱ぎ、それをカウンターに乗せた。


「それより、昨日言っていた布はそれですか?」

「あ、はい。この布です。」


そうしてサマンサがオーバンに打ち下ろした巻き布を差し出し、オーバンが検品しだした。


「・・・物は良くも悪くもないですね。確かこの布は、この巻きで銀貨1枚でしたね。」

「はい、そうです。」

「合格です。この布を使って作りなさい。」


サマンサはその言葉を聞いて小躍りし始めた。


「ありがとうございます!よかった~。昨日出かけた時にこれで服を作りたかったんですが、自分の鑑定眼が信用できなくて。」

「まあ、この店に弟子として入って半年。貴方には店舗の店員以外は基本の縫い方位しかやらせてませんでしたしね。」

「お仕事多いですもんね。」

「王都一の名は伊達では無いですよ。」


そう話す通り、この店の忙しさは有名だった。オーダーメイドから量産品の物まで売っているのだ。縫子は多いに越した事は無い。

そこに加え、弟子の教育をしなければ成らないとなれば、縫子をさせながら教えるしかない。普通に考えればスパルタだ。

だが、オーバンがスパルタをやる理由は大いにあるのだ。


「今のご時世、オーダーメイドの服の大半は魔方陣を書いて、その効果を発動できるように魔道金属を縫い込まなければなりません。その魔法陣の複雑さのせいで手縫いしかできませんから、多少の忙しさは許容してほしい物です。」

「防護兵装って、意味無いんですか?」

「意味は有ります。ですが、国内でこれ見よがしに見せびらかせるような真似は流行りません。」


昨今の国内の風潮は、お洒落にも気を使った物が多いせいで、実用性丸出しの物が流行らず、打ち捨てられる様になってきているのだ。

その為、服飾士が服の裏地に魔方陣を縫い付ける事や、お洒落目的のアクセサリーが魔法付与によって防護兵装になるなどの魔法関係の物作りの仕事が多いのだ。


「サマンサさんが入る少し前のお客様ですが、裏地に要塞防護級の魔方陣をご所望されましてね。できる訳無いとお帰り願いました。」

「・・・何と戦う気ですか?その人は?」

「ご依頼の内容としては暗殺の危険性を排除したいそうです。」

「どんな魔物が暗殺に来るんですか!」

「分かりませんよ、このご時世何が起きても不思議では無いのですから。噂の通りに、恨まれて殺される危険性はありますよ。」

「店長って噂を信じるんですか?」

「噂は、情報の一端です。その噂の確度はどうであれ、心に留めて置くのは必要な事ですよ。」


そう言っていると他の従業員達が出社して来た。すでに夜明けの時間を過ぎて、日が高く登ろうとしていた。


「さあ、皆さん。本日も忙しいですが、よろしくお願いいたします。」


その言葉から程なくして『ファルド服飾店』はオープンした。

切りがいいのでここで切ります。


魔道金属

みんな大好きミスリルとかですね。

大半は魔力が籠っている金属全般がこれに当たります。

合金もあります。(製作には錬金術師が必要)(薬屋の収入源の一つ)

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