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異界暗殺業  作者: 紅鈴
仕立屋
27/185

2-1

2章目です

ロイエンタール西区に『ファルド服飾店』と言う店がある。

この店の店長はちょっと厄介なクセがあるがその服飾のセンスは高く、王都の中でも一番と言われる程の服屋として庶民から貴族まで大変な人気がある店である。

その店に夜明けの時間に来客があった。


「お~い、『仕立屋』居るか?」


いつもは白衣を開けているのに両手でキッチリと閉めているルインが店に入って来た。


「少々お待ちを・・・おや、ルインさん?まだ開店、いえ、朝食すらも取って無い方が多い時間にどうされました?」


そう言いながら奥から出てきた人物は中々に決まっていた。

すらりと細長い体躯、それに見合ったスリーピースのスーツは、全部のボタンを閉めてその細さを引き立てるような装いをしていた。足の革靴も光沢を十分に出しつつも、スーツを引き立てるように主張は抑えめだった。スーツの隙間から見えているワイシャツはペンシルストライプ柄で、堅苦しさを軽減していた。

そんな『一度はそんな装い着てみたい』と思わせる人物の顔は細く、糸目と吊り上がった唇のせいで狐を思わせる様だった。髪は同量を左右に流し毛先をカールさせて遊ぶ様に跳ねさせていた。

そんな人物へルインは話しかけた。


「いたか。仕立屋。」

「それはいますよ。自宅にして作業場、そして服を披露する店に、主人がいなかったら可笑しいでしょう?」

「それはそうだが・・・」

「それにしてもルインさん、今日はこんな時間にどうされました?何時もはその白いジャケットを開けて、中のシャツを見せるのがポリシーだと言っているあなたが、両手でしっかりと閉じて?」

「寝ぼけ眼にぼやけた思考で飯作ったら、シャツ燃やしたんだよ。他は全部洗って替えが無いからこの下は上だけ裸だ。」

「おやおや、ではシャツをご所望で?」

「そうだ。適当に見繕った物で良い・・・」

「いけません!!!」

「ぬおぅ!」


そう言って仕立屋と呼ばれた人物はその顔をルインの顔に迫った。その距離はルインがのけぞって無ければキスをしている距離だった。


「貴方が基本的には暗めの単色を望むのは知っていますが、一度は明るい色を着てみるべきです。その白のジャケットの下に水色のワイシャツに光沢のある肌色のスラックスをするだけでもあなたの印象を明るくするでしょう。さらに言えば水色ワイシャツでしたら赤系統のチェック柄を入れるのはどうですか?ああ、いいですね。それをするのならスラックスではなくサブリナパンツなんてどうで・・・」


そしてとにかくマシンガントークで似合いそうな装いを捲し立てた。


(これがあるからここは厄介なんだよな~。)


この店主の厄介な所は似合いそうな装いを捲し立てて、自分の想像を膨らませ、その中で対象を好き勝手に着替えさせる事であった。

そのせいでココの店主は通称『着せ替え狐』・・・ビスティリシ・ヴォルペとも呼ばれていた。


(一度妄想の世界に入るとしばらくは捲し立て続けるから、止める為には殴るのが良いのは解ってるのに、医者として殴るのはな~。)


そうしてしばらく語っていた店主の背後に太い棒のような物を持った影が差した。


「あ・・・」

「おや?どうされマジィン!!!」

「何やってるんですか店長!お客さん引いてるじゃないですか!」


その太い棒・・・成人男性の胴体程ある巻き布を振り下ろし、店主の頭に直撃させた。店主はその衝撃でしゃがみながら身もだえし始めた。


「やあ、サマンサさん。助けてくれてありがとう。」

「お久しぶりです、ルインさん。今日は開店前にどのようなご用件で?」

「シャツを燃やして替えが無いので、シャツを適当に見繕おうとしてまして。」

「ああ、それは災難でしたね。でしたら、こちらで良いですか?」

「ありがとう。俺好みのシンプルな奴だ。」


そうして、サマンサはルインの好みに合ったシャツを渡す頃に身もだえの終わった店主が立ち上がった。


「痛いですねサマンサ!装いが決まって無ければ減俸でしたよ!」

「店長!お願いですから捲し立てるのやめてください!それはそうとありがとうございます。でも減俸やめて!」

「服飾店の店員として恥ずかしい装いは減俸ですよ。私はそう決めています。」

「オーガ!デーモン!ビスティリシ・ヴォルペ!」

「なんとでも言いなさい。・・・ルインさん、そちらでよろしかったですか?」

「軽く合わせた感じ大きさもちょうどだからこれで良い。」

「では御代ですね、そちらは銅貨40枚です。」

「おい、開店前に来たんだぞ。いつもと同じ値段にするな。」

「いえ、適正価格です。そちらはあなたがいつも着ている服の生地より多少、質の悪い物で出来ていますので。」

「開店してたらどれぐらいだ?」

「銅30枚ですね。」

「本当に適正だな。仕立屋。」

「仕立屋と呼ばれるのは好きですが他の店員がいますので、出来ましたら名前を。」

「すまん、オーバンさん。これ代金な。店、開けないといけないから行くわ。」

「大丈夫ですよ。その装いがあなたの為なら多少の無礼は目を瞑りますので。・・・ちょうどですね。ご来店ありがとうございました。」


そうしてシャツを着たルインはファルド服飾店から見送られながら出て行った。

切りがいいのでここで切ります

Google翻訳最高!!!


ファルド服飾店

王都一の服飾店と名高い店

オーダーメイドから量産品まで出す幅広さとデザインセンスは他の服飾店からは羨望の眼差しを向けれられている

ただし、オーバンの奇行は慣れて無いと客が逃げ出しかねない

店員はもっぱらオーバンを(物理的に)止める為に居る(もちろん弟子入りもしているが)

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