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異界暗殺業  作者: 紅鈴
医者
24/185

1-23

ルインが裏の仕事を行った翌日、ロイエンタール憲兵隊第2隊長ジタン=オルフェスは治療院の中でダリウス上級治療師から目の前の死体の所見を聞いていた。


「死体は首の爆発による出血死です。それしか分かりません。」

「分かりませんじゃない!この死体の情報を、もっと詳しく調べてくれ!」

「本当に分からないのです!首の爆破に使われた方法が謎なのです!魔法だと思ったのですが、調べても何も反応が無かったのです!」

「なんだソレは!?魔道具ではないのか!?」

「道具でしたらそれなりに痕跡があります!仮に、爆発の魔道具だとしたら火傷の跡が残ります!それすら無いのですよ!」

「未知の方法での破壊だと言うのか!?あなた以上に調べられる者はいないのか!」

「それは・・・」


そう濁したダリウスに、さらに詰めようとしたジタンは、マグヌス医院長に止められた。


「申し訳ありません、ジタン隊長。私も確認しましたが、ダリウス上級治療師と同じ意見です。私以上がいない以上、この遺体の検視はここで打ち止めです。」

「マグヌス医院長がそう言うのなら駄目なのですね。」

「・・・1人、いましたがその方は異端者として、治療院から去っております。現在は行方知らずですね。」

「手詰まりか・・・、怪死事件に一歩近づけたと思ったのだがな。」


その死体・・・ライルの体を調べる事によって犯人の情報を得ようとしたのに、即座に暗礁に乗り上げたのだった。そして、一連の怪死体に纏わる噂を知っているマグヌスはジタンに聞いたのだった。


「しかし、憲兵隊の隊長と在られるお方が、噂話に翻弄されるのですか?」

「その噂話での被害者が後を絶えないからですよ。・・・ご協力ありがとうございます。また、このような事を頼むかもしれませんが、その時もよろしくお願いいたします。」

「分かりました。・・・ジタン隊長、貴方に神の御加護が在らん事を。」


マグヌスとダリウスに礼をしたジタンは、治療院の外で調査していた部下と落ち合った。


「ジタン隊長!被害者の情報が出ました。名前はライル=デミトリス。建築士の卵で、数日前に殺されたマリン=ストラグの夫、ケイ=ストラグと諍いを起こしています。」

「でかした!ケイ=ストラグを引っ張って来れそうだな。」

「それなんですが、無理かと思われます。昨日の夜に現場とは違う地区でケイ=ストラグを見ている人が多数います。」

「その証言の信憑性は?」

「確度は高いかと。何ならその地区で、酒を買っているのが確認されました。」

「一応の白だな。他には?」

「その諍いを収めたルイン=ギルファと言う人物も、昨日の夜に現場とは別地区で確認されています。こちらは少し怪しいですが、目撃情報がケイ=ストラグ以上にあります。」

「両方とも一応の白だな。ハァ・・・。」

「どうしますか?」

「両者とも確認の為に一度、家に伺うぞ。そこで本人から聴取して確認が取れ次第、他の線を探すぞ。」

「了解しました。」

そうして、ジタンとその部下が2人の家に向かう中、ジタンは思考に耽っていた。


(医院長に言われた通り、噂話に振り回されている。もし、この噂話が本当だと仮定してみれば、その背後には大掛かりな犯罪組織がある。そこに何とか潜入できる糸口は無いのか?)


そう思うジタンは、この怪死体の不気味さの影を掴もうと藻掻いていた。


そんな事があった翌日にケイの仕事場にルインが新聞を持って訪れていた。


「ケイさん、治療院ぶりだね。ちょっと聞き入れておきたい事があって来たんだ。」

「ルインさん、どうも。聞き入れておきたい事って何ですか?」

「いや、昨日憲兵隊が来てさ、その事でちょっと、と思って。」

「僕の所にも来ましたよ。かなり濁してましたがライルが死んだそうですね。」


そう言ったケイは、ため息と共に肩を落とした。そのため息に、酒の匂いがしたのでルインは諫め始めた。


「酒、飲みすぎだよ。此処まで匂って来た。」

「飲みたくもなりますよ。妻とお腹の子供が死んで、家に居ても虚しくなって、酒に逃げるしかないんですよ。」

「まあ、判るよ。酒じゃなくても、何かに逃げたくなるのは。」

「先生もですか?」

「そりゃそうさ、俺だって大切な物はある。それが守れなかったら逃げ出したくもなるさ。」

「・・・先生の大切な物って何ですか?」


そう聞かれたルインは多少大振りな動きで語り始めた。


「治療者の大切な物なんて一つだよ。命を救う、その思いだね。」

「立派ですね、その思いは。」

「立派なもんか、助からない命を何度も見てきたからな。どうして救えなかった?どうしたら救えたか?そんな日々だから、逃げても仕方ないって事に気付くんだよ。本当に立派な奴は、大切な物を失っても立ち上がれる奴さ。」

「僕は駄目そうですね。今は挫けてますから。」

「そんな事は無い。何かの切っ掛けで立ち上がれるさ。その切っ掛けになりそうな物を持ってきた。」


そうしてルインは新聞を差し出し、指で一点を差した。

その記事には、ライルが怪死した事、噂として横恋慕した事、怪しい噂が有った事、そして部屋には違法薬品や品物が有った事が載っていた。


「これは?」

「今、憲兵がライル自身を調査中らしい。もしかしたら、マリンさんの事件はライルの仕業として処理される可能性が出てきた。」

「そうですか・・・良かった・・・!」


そうして泣き始めたケイの肩に優しく手を置いたルインは言った。


「立ち上がる切っ掛けになったか?なったのなら幸いだ。これからも辛いだろうが頑張ってくれ。」

「はい・・・頑張ります・・・!」

「君の家具には助けられたからな。良い物を作ってくれ。可能な限り、大事に使うから。じゃあな。」


そうして、ケイに別れを告げて、ルインは離れた。


(さて昼飯、何喰おう?久しぶりに醤油で煮た魚を食べようかな?)


昼食を取る為に東区に向かうルインは、はるか昔の記憶にある味を思い出していた。

章が終わりました。

これから章の登場人物を紹介したり設定を書いたりして次章です。


憲兵隊について

警邏から調査まで幅広くやってますが部隊ごとに特徴があり第2隊は殺人事件の調査が多い。

その為、憲兵隊の中では結構な武闘派。

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