表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界暗殺業  作者: 紅鈴
医者
21/187

1-20

そこは広くも無いが、決して手狭と言う事は無い劇場だった。劇場の中は暗く、その劇場の広さには釣り合わない人数が客席に座っていた。

疎らに座っている客は、泰然自若とした態度で劇の開始を待っていた。

そこに、一人の女性がスポットライトに照らされて入って来た。いつもの服に豪華なアームカバーを着けたパインだった。

パインは壇上の中心に向かうと、客席を向いて一礼した。


「皆様、大変長らくお待たせしました。只今より、緊急の『オークション』を開催いたします。」


礼を終えたパインがオークションの説明を始めた。


「いつもの事ですが入札者の皆様にご案内いたします。当オークションは出品者の嘆きや無念、遣る瀬無さを、お金と言う形で受け取り出品物に対して、殺害をしていただく為の競売となっております。」


そうここに居る入札者が全員殺し屋だったのだ。


「その為、各規約がございますが現在、違反になるような者や初めての者が居ない為、割愛させていただきます。」


そうして、応業な身振りで内容を話し始めた。


「今回の出品物はライル=デミトリスと申します。彼は、出品者のケイ=ストラグの妻に当たりますマリン=ストラグを殺害いたしました。」


客席から嘆息が聞こえ、それに満足したパインは続きを話した。


「何故、ライルがマリンを殺したかの説明をいたします。我々の調べによりますと彼は、マリンに恋をしていたそうです。ですが、その恋は恋とすら呼べない物でした。彼は、結婚して妊娠中の人妻に対し、夫であるケイと別れて自分に靡くように迫っていたのです。」


そう話した所、客席の何人かから既に殺気が出始めていた。


「彼の犯行は、用意周到でした。使い捨ての認識疎外の魔道具を用いてマリンに接近し、至近距離から胸を貫きました。その傷は背中まで貫通しており、数分後、彼女は死亡。自分は安全に逃げ去りました。」


実際はライルは錯乱して逃げたのだが、それは密偵以外は犯人であるライルしか知らない事実なので、多少の捏造で観客が湧くのなら良しとしてパインは締めに入った。


「この出品物に対しての提示額は金貨5枚からとなります。落札方法は提示額から競売者呼びかけでの値下げ式で行ないます。では、入札者の皆様、存分に競り合ってください。」


俗に、ダッチ式オークションと呼ばれる方法で、人の命を弄ぶ競売が開始された。


「金4と銀90」「金4と銀85」「金4と銀75」「金4と銀50」「金・・・」


どんどん値段が下がて行くその中で、


「金2」


その値段が提示され瞬間、周りが静かになった。


「金2・・・金2以下は無いか?・・・無いようですね。ではこの出品は金貨2枚で落札となります。」


打ち鳴らしは無かったが、その言葉で落札者が決まったのだった。


「本日のオークションは以上です。落札者はこのまま残ってください。」


そうして競売が終わると、客席の客が劇場を出て行った。最後に落札者となった者が、パインに近づいて来た。


「あら、運よく落札できたのね、先生?」


近付いて来たのはいつも着ている白衣ではなく、黒いジャケットを着たルインだった。


「落札する気ではあったからな。どこら辺が下限値かは、周りを聞いてれば分かるからな。」

「ではこの殺し、ルイン=ギルファ様に果たして頂きます。よろしいですね?」

「構わない。」

「現在の犯人の状態は要りますか?」

「頼む。ただ、現在位置だけで良い、それと変装の為に化粧室を貸してくれ。」

「承知いたしました。では、お仕事を開始してください。」

「了解した。変装が終わったら始める。」


そうして、ルインは劇場の化粧室に入り、ジャケットの内ポケットから整髪剤を取り出した。

その整髪剤を手に塗り、髪を後ろに流して一度鏡の前に立った。


(別に、ナルシストって訳じゃ無いが、こうやって印象を変えるのは変装の意味があるからな。・・・ケイさん、あなたの無念、俺が引き受けました。)


そうして化粧室を出たルインの顔は『医者』から『殺し屋』に変わっていた。

切りがいいのでここら辺で切ります。

やっと例のBGMが流れる状態まで来ましたね。


オークションについて

基本はダッチ式で行ないますが別の方式でも行われます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ