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異界暗殺業  作者: 紅鈴
恩讐

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201/206

9-14

「始まりはある時、父とパーティーに行った事でした。」


そうしてメローネはエドウィンとの出会いを語り始めた。


「父と一緒にある伯爵家のパーティーに行ったんですよ。その伯爵様は父の上司でして、今でも清いお付き合いをしております。」


メローネの父・・・現エルシャン男爵は今から6年前に昇爵し、子爵から男爵へとなった事で色々と付き合いが増えた。

その1つが上司である、さる伯爵家へのパーティーの出席であった。


「その時のパーティー自体は立食形式の楽しいものでした。話の合う友達も出来ましたし、美味しい料理に舌鼓をしたのも嬉しかったです。」


6年前まで子爵家・・・爵位としては1番下の爵位だった事もあり、庶民とほぼ同じ生活をしていたメローネはパーティーを楽しんでいた。

同じ様に昇爵して話し相手がいなかった女の子達と話し合って仲良くなった。

珍しかったり趣向を凝らした数々の料理を口にして、態度に出ない様に喜んだ。

偶然来ていた音楽隊の演奏も素晴らしかった。

本当に楽しい事が一杯あったパーティーであった。


「私が浮かれてはしゃいでたのが悪いんですよ。悪い虫が引っ付いて来てしまったんです。」

「それがエドウィンさん?」

「ええ。何でも嬉しそうにしている私を見て、1目惚れをしたそうです。」


唯々楽しんでいたメローネに、突如話しかけて来たエドウィンの第1印象は『普通』であった。

魅力も何も感じない、唯々普通の出会いであったのだが、向こうは1目惚れと言う状態であり、『恋は盲目』と言う言葉通りであった。

その時のパーティーの雰囲気を全てぶち壊し、その日のパーティーの全てが不快になる程しつこく構ってきたのであった。


「・・・同じ女性として、楽しい一時をぶち壊されるのは怒りを覚えますね。」


ノクスも今の話で怒り始めていた。


「それからパーティーで彼に会うと、しつこく付き纏われる様になったのです。その内、勝手に婚約者の様に扱われるようになり、噂の火消しに必死になりました。」


一度立った噂と言うのは往々にして消しにくいもので、どれだけ火消しをしても勝手に燃え上がり、憶測が飛び交う事態に、メローネは辟易するようになった。


「そんな時にディノスと再会いたしました。」

「再会?元は一緒だったの?」

「一緒と言いますか、子供時代によく遊んでいたんです。」


子供時代に家が近所であった為よく遊んでいたが、昇爵によって疎遠となったディノスが騎士伯となって騎士隊からエルシャン家に派遣されたのを機に、色々と話すようになった。

互いの近況やお互いの会えなかった間の出来事を話し合っていると、心が何処か安らいだ。


「多分、エドウィンさんの事で色々と限界だったのでしょうね。」

「メローネは悪くないよ。悪いのは何度も言っているのに話も聞かないエドウィン様だろ?」

「そうね。でも、その後の行動も良かったわ。」


それを聞いたディノスは同じ騎士伯や上司や同僚を頼り、メローネの噂の火消しを手伝った。

それによって現在エドウィンの件は、ディディカ侯爵家とその関連家の1部だけで噂されるだけになった。


「私から見ればディノスは白馬の王子様だったわ。恋に落ちるのは当然でしょ。」

「こんな薄汚れた鎧と数打ち剣を携えた王子はいないよ。」

「でも、私を暴漢から何度も守ってくれたでしょ。一緒にいたエドウィンさんは怯えて助けてくれなかったじゃない。」

「派遣騎士としては当然の事だよ。」


騎士として何度も助けられた事、比較対象が全くのダメ人間だった事。

この2つが重なった結果、ディノスはメローネからの告白を受け、それを了承した。


「おめでとう御座います、ディノス様。」

「有難う御座います。」


ノクスの賞賛にディノスが礼をした。


「あれ?じゃあ、何でこのディディカ家の帰郷に来たの?領地が無いなら関係無いよね。」


メイリンは素直な疑問を投げかけた。

6年前の昇爵から今現在まで何処も領地の譲渡はおきていないので、メローネがディディカ領に来る意味が無かった。


「・・・無理やりだったんです。」


今回の帰郷はエドウィンがメローネを領都に無理やり誘った様だった。


「私は断ったんですが、父やその上司がディディカ家から色々頼まれたらしく、仕方なく行ってくれと折れてしまったんですよ。」

「小癪だなぁ。」

「メイリンさん、直球ですね。」

「事実を言っただけ。」

「アハハ・・・その代わり父に交渉して、向こうに着いたら即帰る様にしましたけど。」

「あっ、帰還の時の護衛依頼って、それ?」

「そうですね。一応、ディディカ家からの要請って事になってますが、実情はメローネさんの護衛ですね。費用はディディカ家から出ています。」


ノクスが今回の即帰還依頼の内情を語った。


「向こうが無理やりですから、こっちだって仕返ししただけですよ。」


自信たっぷりに胸を張るメローネに、メイリンは拍手を送った。


「と、まあこんな所です。エドウィンさんが諦め悪くて足掻いても、もうディノスと結婚いたしますので、これを最後に縁を切りたいんですがね。」


そう笑顔で言うメローネに、


「縁切り手伝おっか?」


メイリンが言った。


「どう手伝うんですか?」

「ん、私の知り合いにミストレルの人がいるんだけど、その人に言ってディディカ家の今までの迷惑行為を記事にしない?」

「そんな事が出来るのですか?!」

「多分出来るんじゃないかな?実害迄出てるんでしょ?」

「そうですね。父もディディカ家には頭を悩ませていますし・・・。」

「なら大丈夫。少し痛い目見れば目が覚めると思うよ。」

「・・・お願いしても良いですか?」

「ん、帰ったら協力する。」

「やった~~~!!!」

「ちょ、メローネ!」


ディノスと手を繋ぎ小躍りし始めたメローネを後目にノクスが話しかけてきた。


「大丈夫ですか?そんな約束して。」

「できない約束はするなって、ある人に言われた。」

「そうですか。もしできたのなら、男爵家と繋がりが出来ますね。」

「探索者はやめないよ?私の本業は娼館の下働き、探索者はついでだから、安心して。」

「・・・普通は逆なんですがねぇ。」


ラスティに言われた事を、ノクスにも言われてしまったのだった。

切りが良いのでここで切ります。


騎士て派遣されるの?問題

一応護衛の為に貸し出しの名目で貸し出されます。

(主に経済的な理由で騎士を雇えない家への救済処置)

ただし、男爵家以上では無いと貸し出されません。

(子爵や騎士伯は結構緩めに爵位を授けられる為)

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