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異界暗殺業  作者: 紅鈴
恩讐

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198/202

9-11

メイリンが不安を覚えながらも開始された護衛依頼はロイエンタール出発から2日程経つが、一応今の所順調に進んでいた。

それと言うのも毎日大きな町に泊る様に進んでいる為、街道が整備されている且つ危険生物や魔物が定期的に駆除されている道を通っている為であった。

その為戦闘が発生していないと言う意味では順調ではあった。


「あ・・・ふぁあぁ・・・。」


その為唯々歩いて、時たま欠伸をしてしまう程であった。

ただ精神的には疲労が蓄積している。


「おいおい、コレだからガキは!お眠なら此処から帰りな。」


馬車の先頭で索敵を行っているメイリンの周りに『タイラント』のメンバー1人が常に近くにおり、此方を煽ってくるからだ。


「貴方が帰れば?私は索敵してるけど、貴方は此方を煽ってくるだけじゃん。」

「索敵って・・・ウケル!このだだっ広い道の何処に危険があるんだよ!」

「・・・動いてるから正確じゃないけど、周囲500メートル異常無し。これが今朝からずっと続いてるけど?」

「そんなのこの辺りは整備されてるからだろ!意味がねぇじゃん!」

「私はこの子に賛成だね。危機ってのは何時来るか判らんのに、唯々索敵要員煽ってるなら帰りな。」


『タイラント』のメンバーに煽られてると、一緒に索敵していた『テルミナント』のメンバーがメイリンに同意した。


「んだとコラァ!殺っちまうぞ!」

「がなるな、馬鹿。無駄な体力があるならそこら辺の雑草相手に獲物でも振ってろ。」

「・・・ケッ!!!」


自身の味方がいない事を悟って、悪態をつきながら『タイラント』のメンバーが去って行った。


「すまないね。ああ言う馬鹿のヘイトを、君みたいな子供に向けてしまって・・・。」


先程の『テルミナント』のメンバーが謝ってきたが、


「疲れるけど、気にはしてない。やっかみを受けるのは仕方ないから。」


この状況になった原因が自分のどう仕様もない部分からきている事が解っている為、気にはしていなかった。


「そうかい。・・・アレッサだ。何かの縁だ、困った事があったら『テルミナント』を頼ってくれ。」


そう言って手を出してきたので、素直に手を出して握手した。


「有難う。今のパーティーに相談しても解決できないなら相談する。」

「それで良いよ。・・・しかし凄いね。確かに500メートル位は何も無いよ。魔法かい?」

「感覚。こんな所で魔法を使ってたら最後の方に息切れする。」

「尚の事凄いね。私なんか魔道具に頼りっぱなしなのに。」


そう言って胸元から鎖のついたブローチを取り出した。


「索敵の魔道具だ。定期的に身に着けている者の魔力を吸って、魔力の波を飛ばして索敵する。消費が少ないから便利なんだが、大体5分のインターバルが在るし、索敵範囲も500メートルが限界、他にも制約一杯で使い辛いったらありゃしない。」

「感覚鍛えたら?」

「専門職ならともかく、私みたいな戦闘メインの奴が索敵に回されるのが稀なの。」


アレッサの申告通り、女性にしては長身且つ筋肉質で、武器もツヴァイヘンダーと女性が持つには豪快な武器だった。


「なら何で索敵役なんてやってるの?」

「本職の索敵役が今朝、体調を崩してな。その代りだよ。便利な魔道具を持つと直ぐこれだ。」


どうやらテルミナントは本来の索敵役が体調不良らしい。


「大丈夫なの?」

「今回は馬車が多いからね。貴族様の乗る馬車以外の馬車に放りこんで休ませれるから助かってるよ。」

「なら安心。」

「しかし彼奴等、索敵役はいないのかね?よくこの依頼を受けれるランクになれたな。」

「昇格の条件は色々在りまして、彼らの場合は戦闘能力の一点ですね。他は殆ど及第点ですよ。」


実はメイリンの近くにずっと居たノクスが、タイラントの実情を話し始めた。

一応、戦闘力だけ見ればもう1段位上のランクらしいのだが、依頼人への暴言や納品依頼の雑さ等からこのランク留められている様だ。


「本来なら今回の依頼に参加させる事はなかったのですが、丁度良く彼等を抑えてくれそうなパーティーが参加してくれましたので、了承しました。」

「うちも不変も貧乏くじ引いたな。」

「どうでしょう?受けた順の内情を言ってしまいますと、テルミナントが最初で不変の風が2番、3番目にメイリンさんで彼等が最後でしたから、何方にしろ変わらなかったと思いますよ。」


それを聞いたアレッサは、肩を竦めた。


「メイリンさんは気になりませんか?」

「気にしない。この依頼が終わったらあいつ等と関わるのは、多分娼館に来た時だけだし。」

「娼館?何でそんな所に?」

「私の本業はスノームーンの下働き。探索者はついで。」

「・・・クッ、ハハハッ!随分変わった子だ。探索者の仕事がついでとは。」

「可笑しいかな?私は私を助けてくれた人に恩返しがしたいから、下働きをやってる。」

「いや、可笑しくは無いさ。私もそんな状況ならそうしただろうね。クフフ・・・。」


アレッサが豪快に笑い出したのを見ていたメイリンだったが、ふいに気配を感じた。


(これは・・・進行方向のちょっと右側に何か居る?)


丁度自分の探知範囲ギリギリに何か居るのを感じ取ったが、その辺りの草が妙に高くなっており、何がいるのか分からなかった。


「アレッサさん、肩貸して。」

「良いよ。何かあったのかい?」

「それを確かめる。」


手早く肩に登ったメイリンは、


「【遠視】」


気配を感じた辺りを魔法を使って目で直接見た。


「・・・ゴブリン、5体。ただおかしい。」


それを聞いたアレッサが真剣な声で聞いてきた。


「どうおかしい?」

「何かに跨ってる。恐らくグレイウルフ。」

「ライダーか。ならリーダーに「2体、何処かに行った。」よう・・・大事じゃないか、アンタはそのまま監視してな。リーダー!ちょっとこっちに!!!」


アレッサの叫び声を聞いたカンザスが大急ぎで来ると状況を聞いてきた。


「何だ?」

「ゴブリンライダーが味方に報告に行った。大部隊が来るよ。」

「距離は?」

「・・・此処から1キロ先。3体が距離を取りながら伺ってる。」

「大手柄だ、メイリンちゃん。俺は騎士や他の者に相談してくる。アレッサとメイリンちゃんはそのまま監視してくれ。」


そう言ってカンザスが離れながら各馬車を停止する様に走って行った。

切りが良いのでここで切ります。


メイリンの探知範囲と魔法と魔物と魔道具紹介

何もない平原なら大体1キロ位。

建物が在ると250~500メートルが限界。


遠視・・・補助魔法で魔力を使って遠くを見る(術者によるがかなり遠くまで見れる)


グレイウルフ・・・狼の魔物でかなり小型、その代りなつき易い(子供位なら乗れる大きさ)


探知の魔道具・・・装備者の魔力を吸って装備者にしか分からないソナーを放つ(ピンキリがあり、作中のはキリに近い物)

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