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異界暗殺業  作者: 紅鈴
恩讐

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196/202

9-9

昇格試験当日、メイリンは指定の時間より10分前・・・何時もメイリンが利用する時間よりだいぶ前に探索者ギルドに来た。


(頑張るぞ~!!!)


扉の前で声を出さずに気合を入れると、メイリンは探索者ギルドに入った。


「あれま?珍しいのが来たじゃん。」

「今日は雨か?それとも何かの襲撃があるのか?」


メイリンを知っている探索者の知り合いが、何時もこの時間に見ない彼女を見て囃し立てた。

それらを無視して、メイリンは受付まで来た。

何時も対応している受付係がいなかったが、目的は判っているので聞いてみた。


「ディディカ領迄の護衛依頼の集合場所何処?」

「え?・・・お嬢ちゃん、探索者?」

「そう。はい、証。」

「・・・本当だな。少し待ってろ、確認してくる。」


そう言われたので暫く待つと、先程の受付係と共にもう一人近付いてきた。


「ノクスさん、あの子です。」

「そうですか。・・・初めまして、メイリン=スリザス様。私はノクス=フェミル、貴方の昇格試験を監査する者です。」


行儀よく礼をするノクスを見たメイリンは、聞かずにいられなかった事を聞いた。


「男の人?」

「よく間違われますが、女性ですよ。」


メイリンに男性と間違われたノクスの衣装は、全くゆとりの無いすらりとしたスーツと革靴、白手袋に懐中時計とぱっしりと決まっており、体形も女性にしては胸が無く骨盤も細いので遠目では男性と間違われる様な立ち姿であった。

顔もメリッサよりは女性的とは言え、服装で何方の性別か判らない位に整っていた。

だからメイリンも性別を間違えたのだが、


「ふ~ん。」


メイリンからすればメリッサで慣れていた為、驚きはしなかった。


「意外ですね。普通の人は私の性別を間違えたら驚くのですが。」

「フィグマ魔法薬店の店主は友達。」

「ああ、あの方ですか。確かに知り合いでしたら驚きはしませんね。」

「メリッサを知ってるの?」

「容姿で有名ですからね。・・・と、今回の同行者の元へ案内いたしますので、私について来てください。」

「ん。」


言われた通りにノクスについて行くとギルドの奥に通され、大きな扉の在る部屋まで来た。


「此処は探索者ギルドの会議室です。基本的にはギルド職員の会議にしか使われませんが、大人数の面通しをする為にも使いますので、覚えておいてください。」

「解った。」


ノクスが丁重にノックして扉を開け、そのままメイリンを中に入るように諭した。


「うっそでしょ。メイリンちゃんだ。」

「・・・マジ?」

「いぃぃやったぁぁぁ!今回楽できる!」


メイリンの姿を見て歓声を上げたのは不変の風のメンバーだった。

ネリーはメイリンの登場に驚き、ラスティは本当かどうか確かめ、アマンダはメイリンが同行する事に素直に歓声を挙げた。

唯一デニスだけは声を挙げなかったが、小さくガッツポーズをしながらも驚愕の顔をしていたので、この依頼を受けるのを驚きつつも嬉しい様だった。


「アマンダ、知り合いか?」

「ええ。戦力としては心もとないけど、索敵者としてなら太鼓判を押すわ。」

「そうか。」


メイリンが声のした方に顔を向けると、大柄の男が大剣を担いで立っており、その周りもいかにも『猛者』という感じの人が10人程集まっていた。

此方に目を向けてきたので軽く会釈をすると、向こうも笑顔になり手を挙げて答えてくれた。


「メイリンちゃん、こっちこっち。」


手招きをするネリーの誘いに乗り、メイリンは不変の風のメンバー近くまで来た。


「メイリンちゃんもこの依頼受けるの?」

「受けるからいる。それに、これが試験だから。」

「あ~、言ってたな。昇格試験受けるって。」

「ん、・・・ラスティ達は何で受けたの?この前帰って来たんだよね。」


そうを言った瞬間、アマンダが顔を明後日の方に向けたが、デニス達が言及した。


「・・・アマンダのせい。」

「だな。」

「そうよねぇ。」

「・・・ええ、ええ、ええ!!!悪かったですね!!!」

「どういう事?」

「メイリンちゃんに話したよな。前の長期依頼で飯がまずかったの。」

「ん、言ってたね。」

「それの埋め合わせに美食に手を出したら思いの外食費が掛かって、金欠になったんだよ。」


ラスティの話を聞くと、アマンダは前回依頼で用意した食事が不味く、依頼報酬で口直しの食事をしていたら、自身の分の報酬全部とパーティーの貯蓄資金を少し使ってしまったらしい。

その為、本来なら数日休息日を設けるのだが、即依頼を捜してこの依頼に行きついた様だった。


「今回の事でエジカ商会ではもう買わないって決めました~。」

「何だ?エジカ商会で保存食を買ったのか。あそこの商会で食える保存食は乾燥サラミスティック位だぞ。」

「そのサラミスティックでも不味いけどね。」


例の『猛者』パーティーの大剣使いともう一人が笑いながらエジカ商会の商品の酷さを語り始めた。


(エジカ商会のご飯は不味いね、覚えとこ。)


メイリンはそれを無関心を装い真剣に聞いていた。


「メイリンちゃんは保存食何処で買ったの?」

「ラスティに教えてもらったシグマ糧食店と他の人に教えてもらったファニン保存食所。特にファニンは良いよ。安くて美味しい。」

「おっ!嬢ちゃん、良い場所知ってんな。ファニンは良いぞ。あそこの保存食は日持ち品程美味いからな。」

「今度教えて!もう不味い保存食は嫌!」

「依頼が終わったらね。」


そんな事で保存食の感想を言い合っていたら、入り口から気配がした。

その気配を全員が感じた後に、扉が乱暴に開かれた。


「・・・んだよ、ガキがいるじゃねえか。今回の依頼は外れだな。」


入って来たのは『粗暴』という言葉がぴったりな風貌の8人だった。


「・・・うっわぁ、『タイラント』か。今回は低評価ね。」

「ネリー、どんなの?」

「無駄に戦闘力が高い御陰でこのランクに入れる馬鹿集団。正直、今回の一番の不安要素に繰り上がる位ね。」

「んだぁ、文句あんのか?」


『タイラント』パーティーの1人がネリーに突っかかって来た。


「無いから離れて、馬鹿がうつる。」

「・・・っけ。」


そのまま『タイラント』パーティーの1人が引き下がったが、此方を睨んでいた。

その睨み方はネリーと言うよりメイリンに向いていた。


(理由はさっきの言葉かな?)


子供がいる事に悪態をついたメンバーがいたので、それが理由だとメイリンは思った。

そんな事を考えていると、ノクスが咳払いをして注目を集めた。


「カンザス様、アマンダ様、デッド様。今回の依頼に参加してくださったメンバーがそろいました。これよりディディカ領護衛依頼の説明をいたします。」


殺伐とした空気の中でノクスは涼しい顔で説明に入ろうとしていた。

切りが良いのでここで切ります。


今回出た商会について。

エジカ商会・・・総合商会の為色々売っているのだが、質の悪い物しか売ってない。探索者の評価は最後の駆け込み寺位のもの。

シグマ糧食店・・・値段は少し高いが質の良い物をそろえている。ただ、保存食より新鮮食材の方が多い。

ファニン保存食所・・・保存食しか売っていないが、その分質も値段もお手頃価格。その代わりロイエンタールにしか店舗が無い。

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