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異界暗殺業  作者: 紅鈴
恩讐

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194/203

9-7

ラスティから長期依頼に必要な物の伝授が終わった2日後、メイリンは探索者ギルドに来ていた。


「たのも~。」

「いらっしゃい、メイリンちゃん。昇格試験の依頼、出来てるわよ。」


ギルド内のカウンターに近づくにつれ、少しだけ興奮が見えたメイリンに受付係が笑った。


「何?ちょっと興奮してる?」

「ん、長めにこの街を離れるのは初めての事だからね。」

「あら?私はスノームーンみたいな大きい所だと、保養で何処かに休みに行くと思ったんだけど違うの?」

「私は行かない。そもそも無理やり入れてもらった下働きだから、他の人より休息日が多い。」

「えっ?そうなの。」


実際にはその休息日の殆どに密偵の仕事や探索者の仕事等をしているので休みなんてほぼ無いのだが、パインが気を使って他の密偵達より休みを多く作っている為、休める時は休んでいた。

その為、嬢の心の休息の為に行う保養旅行の時は、ルインやメリッサの所に勉強もかねて泊まり込みをする様にしていた。


「う~ん、だとするとこれは結構厳しいかな?」


それを聞いた受付係が1枚の用紙を脇に退けた。


「どんなの?」

「この前凋落したヴィジカ侯爵領にある、ギルド管理の危険地帯に咲く花の回収。花の回収自体は簡単なんだけど、そこに行くまでにちょっとね。」

「何が在るの?」


興味津々で聞いてくるメイリンの目を見た受付係は、げんなりとした感じで話した。


「・・・男ばかりのくんずほぐれつの場所。」

「行きたくない。何が悲しくてそんなのが在るの。」


顔には出ていなかったが、メイリンの機嫌が悪くなったのを受付係は感じた。


「いや、そういう系統の魔物の生息地でね。下手に男性が行くと変な趣味に目覚めるから女性ばかりが行くんだけど、そう言うのに慣れて無いと途中で吐いちゃうんだよ。」

「もしかして保養地でそういう事やってる嬢がいると思ってる?」

「うん。」

「無いから。そんなの幻想。」


メイリンが知っているスノームーンの嬢は、全員異性愛者の為そういう嬢はいないし、そもそもスカウトの時点でそういう嬢は弾いているとパインが言っていた。


「パインさんが言ってた。『そういうのを入れると客を選ぶから、店の空気が悪くなる』って。」

「聞いたことあるんだ。」

「興味本位で聞いた。聞かれたパインさんは変な顔してたけど。」

「あはは・・・。今度会ったら労いの言葉かけよ。・・・で、それを抜いたあなたの試験依頼はこれね。」


受付係が3枚の紙を出した。


「3つの内どれか1つを選んでね。」


メイリンが3つの内容を流し読みしてみた所、自領迄の合同護衛と危険地帯の観測と納品依頼であった。

そして納品依頼を詳しく見て、疑問をぶつけた。


「この納品依頼、さっきのと何が違うの?」

「納品する物が違うのよ。これは複数の魔物の部位を納品しないといけないから、戦闘必須ね。」

「パス。私に戦闘力は余り無い。」

「あら?何時も1人で依頼をこなしてるのに?」

「それにしたって不意打ちとか届かない距離からの攻撃とかで倒してるだけ。この内容だと直接戦闘が必須だから、私じゃ無理。」


メイリンの宣言通り、正面切っての直接戦闘は最も不得意としており、魔物との戦闘では魔法での狙撃か不意打ちでの一撃必殺が主流だった。

その為、複数の魔物を相手取るような事は何時も避けていたのに、いきなりそれをしろと言うのは酷であった。


「・・・この観測依頼、意味あるの?」


次に手を取った観測依頼は確かに遠出且つ数日を要するものだが、観測場所が辺境の安全な山であった。


「その山ね、温厚なドラゴンが生息しているんだけど、偶に腹を空かして出てくるのよ。それが大災害の予兆だから、監視してドラゴンが出てきたら麓に知らせなきゃいけないの。」

「麓に知らせたら何が在るの?」

「備蓄品を出してドラゴンに捧げる。それだけ。」

「ふ~ん。」


簡単な任務なのでこれにしようとしたが、


「期間が長い。お店に迷惑かける。」


流石に移動を含めて3ヵ月の拘束は長すぎた。


「やっぱり長すぎる?」

「うん。それに、この依頼内容だったら私以下の他の人でも出来るよね?」

「ええ、それを選んでいたら昇格試験失格にしている所だったわ。」

「・・・意地悪。」

「依頼の内容を読み解く試験でもあるからね。」


そう言われて最後の依頼内容である合同護衛依頼を見ていたら、つい最近知った名前を見つけた。


「ディディカ領・・・か。」

「どうしたの?」

「この行き先が不安なだけ。」

「そうかしら?確かに依頼人はちょっとアレな人だけど、同行者は良い人よ。」

「・・・これにする。」

「不安なのに?最初のくんずほぐれつや戦闘依頼でも良いのよ?」

「何に不安なのかが判らないし、判らないなら調べたいかなと思って。」


そう言ってメイリンは依頼書を受付係に差し出した。


「解りました。じゃあ、これを昇格試験依頼としますね。出発は5日後なので、その間に装備や必要な物等を整えてください。貴方の試験監視役に1人同行しますが、その人は員数外なので頼らない様に。他に質問は?」

「同行者は誰?」

「まだ決まって無いの。だから5日後に記載されてる時間に集合して自己紹介して依頼開始ね。」

「ん、解った。」

「じゃあ、準備頑張ってね。」


その言葉と共にカウンターを離れたメイリンだったが、扉を開けた瞬間、首筋に寒気が走った。


(嫌な予感でもあるのかな?)


経験からこれが悪い予感だと察した。


(あの依頼からも嫌な予感がしたし、ディディカ領の文字を見たら余計に強くなったから、用心しとこ。)


杞憂で済めば良いと思いつつも、払拭できなかった為、ラスティと回った時以上の準備の為に街に繰り出した。

切りが良いのでここで切ります。


男性相手にくんずほぐれつする魔物いるの?問題

インキュバスに似た魔物がいます。

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