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新章開始です。
オーバン=ファルドはアトリエの中で唸っていた。
依頼でも無い商品を久々に作ろうかと思い『まずはスケッチを!』と思い至ったが、
(・・・何ですかコレは?何故、一般の方用の服で、服を全部を広げると蝶の文様が出てくるなんて物が出来るのですか?)
ルインが見たら『年末のラスボスの仮装か?』と言われそうな、かなり奇抜な物が書き上がっていた。
(何でしょうね?原因は?)
原因を暫く考えていると、思い至る事があった。
(仕方ないとは言え、貴族の方の・・・それもかなり個性の出る様な方の依頼を受け過ぎましたね。)
有名税のせいか貴族からの依頼が多々あり、依頼で1点物の工夫を取り入れてしまいがちだった為、新作の奇抜さにこだわり過ぎたのが原因だった。
(もう少し抑えましょう。・・・しかしデザインは良いんですよね。案だけは取っておいといて、奇抜な服の依頼が来たら提案してみますか。)
奇抜なデザインは取って置き、新しい紙にペンを走らせると今度は良い感じに出来上がったが、最後に何色を入れるかで悩んでしまった。
(足首がダブついたズボンは紺色が良いですがグレーも捨てがたい!あ、紫も良さそうですね!・・・ストライプを入れて多色構成?・・・良い!凄く良い!!!ならば上着として作ったこの胸元を紐で締めるシャツは同じ様に多色構成で・・・)
思い付いた色案を書きつつ新規デザインが続けざまに出てくる状態がしばらく続いていると、
「何回呼べば気が付くんじゃ~!!!!」
「ゴビュファ!!!」
誰かが自身の頭を何かで叩かれて現実に戻され、その時にデザイン画の紙束が散らばった。
「おっ、・・・おおっう・・・。」
叩かれた方を振り向くと、サマンサが丸めた紙束を片手に立っていた。
「さっきから『来客です。』って言ってるのに、気付かずに没頭しないでください!」
どうやら自身に来客があったらしい。
「それはすみませんでした。どうも良い案が思いつくと止まらないんですよね。」
「まあ、結構良いですよね、このデザイン。」
拾うのを手伝っていたサマンサが手に取って見ていたのは3番目に書き上げたデザインで、書き直したデザインを女性向けに変え、少し野暮ったく見えるロングスカートでも、フレアと花模様フリルを足しつつ、アーガイルに千鳥格子を織り交ぜた様な模様で華やかさを出していた。
「これ、何処の貴族が頼んだんですか?」
「いえ、一般用に売り出すつもりですよ?」
「・・・店長、価格設定如何する気ですか?」
サマンサが怪訝な顔で価格設定を聞いてきた。
「出来るだけ低価格帯にするつもりです。最高でも銀10枚までですかね。」
「高ッ!もう少し安くしましょうよ!」
尚、一般的な服の値段は銅貨30枚で単色のシャツが買える程である。
「高い理由は模様の難しさや縫製技術からですしね。引ける所は引いて、安くしますよ。」
「例えば?」
「こんな複雑な模様では無く、もう少し模様を少なくするか大きくしてしまえば良いですし最悪、大きくして染色してしまえばコストは多少下がります。」
「あ~、そういう方法もありますね。」
「縫製の方もフレアの数を少なくして、余裕をわざと作れば価格を下げられまし、フリルをこんな模様では無くストレート布でやってしまえばこちらも価格を抑えられます。」
「う~ん、良いデザインなのに勿体ないな~。」
「経営者として時には妥協は必要です。それが何回あるかは判りませんが、少なくとも今回は価格を抑える為に妥協が必要でしょう。」
サマンサの手伝いもあり早々にデザイン画をかき集め、ちゃんと全部在る事を確認したオーバンは、デザイン画を机に仕舞いながらサマンサに向き直った。
「さて、どの様な方が来たのですか?」
「クジャスト様です。」
「・・・嫌な名前を聞きました。」
「私も名前を出すのが嫌でした。」
名前を聞いたオーバンも言ったサマンサも苦虫を噛み潰した顔をした。
「ですが、お客様としてきたんですよね?ならば会わなければいけませんね。」
「はい。何でも知り合いの方が舞踏会用の服を所望している様でして・・・。」
「会うしかありませんね。・・・ハァ。」
ため息を吐きつつも部屋を出る準備をし始めたオーバンにサマンサは苦笑を隠さなかった。
切りが良いのでここで切ります。
江戸時代の羊蹄山での復讐とNINJAになって黒龍を討伐して帰ってきました。
どんな人?問題
次に書きます。




