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異界暗殺業  作者: 紅鈴
化生
175/178

8-12

医院が襲撃にあった次の日、ルインは普通に営業していた。


「はい、次の人~。」

「・・・先生。いい加減その異様な背後霊、退かした方が良いですよ。」

「ねっ。ほんと邪魔。」


診察に来ていた1人がルインの背後にピッタリくっ付いている件の襲撃者を見て言い放ったが、例の襲撃者は聞こえている筈なのに何も言わずに佇んでいた。


「ストーカー容疑で警邏隊引っ張ってきましょうか?」

「そうしてほしいんだけど・・・。」

「任務だ。此奴を監視している。」

「との事だ。尚、そんな任務が無い事は、昨日此奴を引き渡しに治療院に行った時に確認済み。」

「ええぇ・・・。」


不思議な事に、マグヌス達が襲撃者を受け取り拒否をした為、此処に居座られる羽目になった。


「まあ、此奴の宿泊費用とかは、教会が出してくれるから良いんだけどね。」

「それにしたって邪魔でしょ。さっき治療した人もなんか変な顔してたし。」

「彼奴は病状が不明瞭すぎる。サボる為に来たとしか思えん。だから返した。」

「正直それは助かってるが、解らない症状を1回1回こっちに聞いてくるのだけはやめてくれ。」

「治療者じゃ無いから聞いただけだ。解る様に説明するのも仕事だろ。」

「まあ、そうだな。症状の説明を省くのは好くない。」


問診結果に対して質問するのは良いのだが、質問が細かすぎて精神的に疲れが出てきていた。


「そんな訳だから、居候みたいなものと思って気にしないでくれ。正直、後何日居座られるか判らんが、次の任務が決まるまでの待期期間だろうから、後4日程じゃないかな?」

「4日も居座られるのか・・・。此処に来るの、暫くやめようかな?」

「何だ?貴方も不明瞭な症状でサボりか?」

「いや、そういう訳じゃあ・・・。」

「貴様、目を見せろ。」


襲撃者が来院者に近づき、至近距離で目を見始めた。


「・・・目が揺れている。何か嘘を言ったようだが?」

「・・・仮病でサボりに来ました。」


聞こえたルインはため息を吐いた。


「帰れ。仮病でも金は取るんだぞ?同じ事で来た奴もそうだ。そんな事で金を払いたくないだろ?」

「じゃあ。」「すみませんでした。」「クソ、半休分の言い訳が・・・。」


どうやらサボりが大半だったらしく、受付に居た人数が少なくなった。


「で、残りの人はどんな症状?簡単な打ち身だったらこの場ですぐ直すから。」


居残りした人達も酷い症状は余り無く、午前中に少し長めの休憩が取れそうだった。

だが、そうはいかなかった。


「すいません!先生居ますか?!」


医院の入り口を慌てて開けて入ってきたのは、ガダルだった。


「居るけど、どうした?」

「妹を助けてほしいんです!」

「何処にいる?何処にも見えないが?」

「ついて来てください!」


どうやら患者はその場から動けない様だった。


「少し待ってろ。最低限の用意だけして行く・・・おい、なんで俺のバック持ってこれるんだよ?」

「魔力登録式の棚の中に、何故か大切そうに置いてあったからな。そいつが慌てて入って来た時に、これが必要になるかもで引っ張り出した。」

「・・・棚を無理やり壊しやがったな。後で教会に弁償代払わせるからな。始末書も書けよ。」

「ゔっ。・・・それは嫌だ。」

「諦めろ、書け。・・・じゃあガダルさん、行こうか。」


医院側の扉から出て、看板を裏返して『close』にすると、ガダルの案内に従った。

暫く走って現場に到着すると、酷い惨状だった。


「えげつない。馬車同士の衝突か。」


まさかの馬車での衝突事故現場だった。


「とりあえず動くぞ。」


そうして現場に入ろうとしたルインだが、


「あんた何現場に入ろうとしてるんだ!邪魔だから離れてろ!」


当然のように止められた。


「はぁ・・・これ見て。」

「あん?探索者の証なんか・・・すいませんでしたぁ!!!」


どこぞの黄門様の印籠の如く探索者の証を出すと、通してくれた。


「まだ治療院から誰も来てないんだよな?」

「はい!まだ来ておりません!如何か、この人達を助けてください!」

「助けるが、その前に見えてる範囲の6人の意識確認からだ。」


どうやら安全確保の概念から重傷者を事故現場付近から離したようだが、生きてるかどうかの確認までやってほしかった。


(まあ、素人にそれをやれってのは酷か。)


重症者に近づいたルインはバックを開け、自分にとっては慣れ親しんだ物を出した。


「それは?」


それを目ざとく見つけた襲撃者が聞いてきた。


「トリアージタッグって言ってな、患者の状態を色で識別するやつだ。手伝う気なら俺の言う通りにこいつを患者の腕に貼ってくれ。」


ルインは手早く構造解析の魔法を行ない、1人ずつタグの色を決めて行った。


「1番右の人は黄色から貼っていってくれ。次に緑、黒、赤、赤、緑の順番だ。」


言われた通りに貼っていった襲撃者だったが、全員に貼り終えると質問してきた。


「色の違いは何だ?」

「安全な順に緑、黄、赤の順で生存している。赤は重症、黄色は中傷、緑は軽傷だ。」

「黒は?」

「死亡。手の施しようがない。見て視ればわかるだろ?」

「・・・ああ、確かに。」


黒を張られた唯一の人は、頸が切れて、ほぼ取れ掛かっていた。


「俺は赤から順番に処置する。お前は治療院からの応援が来たらタッグの説明をして、腕前順に治療させろ。」

「解った。」


ルインは赤を貼った1人の内、最も重症な方を治し始めた。


「患者の状態は足の数か所に木材での貫通創、腕にも同様な物が数か所。胸部に同じく貫通創があり、他にも頭部裂傷や全身打撲があり余談を許さない状況となっている。ではまず、胸部の貫通創の処置を始めます。」

「・・・患者の説明いるのか?誰も気にして無いのに?」

「俺の治療方針を明確にする為だ。気にするな。」


ルインはまず、一番危ない胸部の貫通創から処置に入った。


「【痛覚減衰】、【魔力腕】・・・【修復】。」


患者の痛覚を減らし、魔力椀で腕を増やして作業補助を行い、慎重に胸部の木材を抜きながら、傷の修復を開始する。


(焦るな。前世みたいな現場輸血の方法が無い訳じゃ無いが、教会の戒律がある以上、体を傷つける行為をすれば面倒事が増える。)


前世であればできた行為が出来ないのは歯がゆいが、逆に前世には無かった魔法の力で傷の修復が前世の倍以上の速度で出来るのは助かっていた。


「背面表層部、修復完了。・・・次いで内部修復・・・完了。」

「おい!そんなゆっくり抜いてんじゃあねぇよ!さっさと引き抜きゃいいだろうが!」「そうだ!」「早く助けてやれ!」


安全にゆっくりと引き抜きながら修復していくが、この治療の難しさを理解していない野次馬からのヤジが飛んで来た。


(無視しろ。遮断しろ。集中しろ。助けろ。)


だがルインは意識的にヤジを遮断し、治療に専念した。


「だぁああぁ!まだるっこしい!そんな物、俺が引き抜いてやるよ!」


そしてヤジを飛ばした1人がルインに近づこうとした時、後ろに引き飛ばされた。


「素人は黙ってろ。あれの難しさは相当だぞ。」


引き飛ばしたのはダリウスだった。

ダリウスが治療師を連れ立ってルインの近くに行くと、状況を聞きだした。


「ルイン、状況は?」

「俺はいい。それより、そこの奴から説明聞いて、治療に当たらせろ。」

「解った。・・・ダリア殿、申し訳無いが説明してくれ。」

「解った。」


襲撃者・・・ダリアから説明を聞いたダリウスがトリアージタッグの説明を聞き、班分けして自分はもう1人の赤タッグ患者の治療を、ルインの近くで行ない始めた。


「胸部表面まで木材の摘出確認。・・・胸部修復終了。続いて、脚部の重要血管付近の貫通創処置に入る。」

「・・・相変わらず凄まじいな。普通の治療師なら5人がかりの仕事を、1人でやるとは・・・。」

「そういうお前も腕を上げたな。伊達に上級に上がった訳じゃ無いらしい。」

「ぬかせ。差は縮まる処か、お前の偉大さと差が広がる絶望感しかないぞ。」

「腐らず腕を上げてるのなら御の字だろ。俺等の同期の内、何人が治療師の道を諦めたか。」

「そうだな。・・・腹部貫通創修復完了。続いて腕部骨折修復処置に入る。・・・トリアージタッグだったか?あれの作り方を後で教えろ。あれは使える、教国の本部も欲しいだろう。」

「教えてやるからまずは患者を治せ。」

「そうだな。・・・腕部修復完了。各所の裂傷処置に入る。」


そう言いながら、2人は重症者の治療に専念した。

これは余談だが、凄惨な馬車事故ではあったが、死者は1人に抑えられた。

切りが良いのでここで切ります。

尚、ルインが治療したのがガダルの妹です。

そして襲撃者の名前判明が遅い!(超反省)


トリアージタッグ誰が作ったの?と襲撃者のフルネーム

タッグ製作はメリッサ。案はルイン。理由は何時か要るかもで作った。(つまり治療院脱退後に作った)

襲撃者のフルネームはダリア=ミジェス

基本的にはルインは『お前』や『そいつ』呼びしかしない。(迷惑がっているから嫌味を込めてる。)


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