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異界暗殺業  作者: 紅鈴
化生
168/183

8-5

「ルインさん、少し話しませんか?」


ジタンとダリウスが出て行った後、マグヌスが雑談を申してきた。


「良いですよ。と、いっても結構な頻度で会ってますから何を話しましょう?」

「そうですね。・・・あの遺体に使われたのが毒煙と判った理由を話すのではどうでしょう?調書も書きたいですしね。」


ルインとしてはサリン患者の特徴に一致していた為毒煙と言ったが、サリンを知らないマグヌスからすれば何故それが毒煙なのかが解らない。

だから調書として残して後記の役に立つ様にしたい様だった。


「構いませんよ、準備が出来たら話し始めます。」

「では・・・。」


マグヌスが机を漁り、直ぐに紙と羽ペンを取り出した。


「準備できました。」

「ではまずあの死体の特徴からいきます。あの死体は神経異常が起きていましたが現在の治療院の方針からそれを見つけるのはほぼ不可能でしょう。」

「理由を。」

「簡単です。神経異常を感知するには脳や各神経の異常を感知する必要がありますが、治療院の方針・・・正確に言えば教会の教義がそれを許しません。」

「貴方は何時も言いますね。『無垢なまま人の命を預かる事はするな、外殻を開いてでも探求せよ。』と。」

「はい、今回はまさにそれですね。神経異常は何処の神経がどのような働きをするのかを知らなければ意味がありませんが、その為には膨大な体内の知識が要ります。」

「見えている部分を治療するだけの治療院では、その時点で何もできない様ですね。実際に貴方が国王を救った際の病気・・・癌、でしたね。あれは体内の構造を詳しく知っていなければわからないでしょう。」


マグヌスの言う通り、治療院では基本的に外傷治療が専門で、一部の者が専門知識を得て内傷治療をやるのだが、その内傷治療も、はるか昔に偶然その知識を得たからやれるだけで、治療の研究をしている訳では無かった。


「まあ、癌細胞はかなり特殊ですがね。・・・話を戻します。あの遺体には他にも瞳孔の異常収縮と胸部の異常圧迫があり、それに対して身体的外傷は全くなかったんです。だから、何かを飲んだ又は吸い込んだと考えました。」

「2択を1択に出来た要因は何でしょう?」

「消化器官内の残留物。死後4日、保存10日をしているとはいえ、消化器官に全くと言っていい程残留物が無いのは可笑しいですし、胸部の圧迫があったので呼吸に関する何かが在ったと推測して、毒煙だと思いました。」

「納得の理由ですね。・・・っと、書けました。こんな風でどうです?」


マグヌスが書いた書類を差し出してきたが、ルインは見ようともしなかった。


「マグヌス様、一応俺の立場は異端者ですので、公式の文章は他の人に見てもらってください。」

「はっはっは、良いではないですか。報告書には貴方の名前はのせていませんが、度々貴方と思わせる報告はしているのですよ。」

「やめてくださいね!そのせいで教国からの襲撃が結構あるんですから!」

「あっ、泥棒ってそう言う事ですか。」


医院を開設以来、最低でも1月1度のペースで教国の異端執行官が襲撃にきており、その度に撃退し、ついでに怪我の治療もかねて健康診断をして健康にして送り返すようにしていたのだが、その原因が此処にいた様だった。


「幸いなのは新人の奴ばっかなので、昼間の人が居る場所には絶対来ないし、戦闘能力もおざなりなんで、金を多めにふんだくって治療までやってますがね。」

「まあ、貴方が他殺で死んだら、真っ先に教国をやり玉に挙げる王様ですから、実力者は送ってこないでしょう。」

「・・・ついでに報告書に『新人教育で送ってくるならもう少し健康体を送ってこい。』って書いてくれません?なんか知らないけど、どいつも此奴も内臓が一部、機能不全寸前だったんですけど・・・。」

「・・・治療して元気にするからでしょう?手痛い敗北での成長と健康体になるのでしたら、私だって同じ方法をやりますからね。」


どうやら、教国の上層部は暫くの間に、相当愉快な実地訓練をするようにしたらしい。・・・被害を受ける側には黙ってだが。

そしてその状況が変わりそうにない事を理解したルインは、ため息を吐くと同時に思い出した。


「・・・そう言えば、ザムザは元異端執行官でしたよね?」

「ええ、かなり短い間でしたが。凡そ1年程でしたかね?」

「その間に何処かの錬金術師を異端者として執行してませんか?」

「・・・ちょっと判らないですね。そもそも異端執行官は全任務極秘扱いで、完了報告だけが教国の資料室にあるだけですから。」


異端執行官の任務の全てが教国の同じ部署によって決められており、執行完了の報告と内容が記された物だけが教国の保管庫に移され、其処で初めて他の教会員が閲覧できるようになる。

その為、何らかの理由で執行が完了されて無い場合は報告書すら作成されていない状態であった。


「まあ、あの性格ですから失敗はあり得ませんね。異動理由も、彫刻じみたあの顔が特徴的過ぎて、執行官として致命的だからですし。」

「そうですか。」

「・・・やはり貴方はザムザが怪しいと?」

「巡礼中に1人でいる。これで怪しむなというのは、ちょっとお門が良すぎますね。」

「・・・ルインさん、ここだけの話、私も怪しんでいます。ですが、今回に関しては教会員として奴の行動を黙認するしかありません。奴がやった確実な証拠が無い限り、誰も動けないでしょう。」

「そうですね。」


話に一区切りがついた時に、扉のノック音が聞こえた。


「マグヌス様、ダリウスです。警邏の者を連れてきました。」

「解りました。・・・この話は此処までです、今日はお帰り下さい。」

「マグヌス様も気をつけてくださいね。」

「ええ。・・・では。」

「はい。さようなら。」


ルインが扉開け、ダリウス達が入って行く代わりに、ルインは部屋を退室した。

切りが良いのでここで切ります。

ギルファ医院のあまり表沙汰に出来ない収入源でした。(全部治療費として計上はしています。)


異端執行官について

教国の1組織。

異端者に対しての執行官で、基本は教国の同組織の上層部が執行官に任務を依頼。任務を遂行する。

完了報告とその内容が保管されて教国の保管庫に保管される。(閲覧は教国の者ならだれでも閲覧できる。)

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