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異界暗殺業  作者: 紅鈴
化生
166/182

8-3

ザムザが去った後、霊安室の中に入った4人は遺体の検視に入った。


「遺体の情報だが、名前はロウ=ヴェンデッタ。20歳男性、死因は恐らく毒物なのだが・・・。」

「毒の種類が解らない?」

「そうですね。恐らくは新種の毒物だと思われます。」

「それ以外は?」

「それ以外ですか?」

「遺体の在った場所、時間、現場残留物。その辺りの情報が欲しいな。」

「何故だ?」

「遺体を見ただけだで情報が得られるような物じゃ無さそうだ。なら周辺まで見ないと解らん。」

「成る程、一理あります。ジタン殿、事件資料を取って来てもらえますか?お願いします。」

「解りました。ルインさん、何でもいいので情報をお願いします。」

「任せろ。」


霊安室を颯爽と出て行ったジタンに振り返る事無く、ツインは遺体と対面していた。


「さてと・・・。」


ルインは死体の前で軽く祈りをおこなった。


「相変わらず不思議な奴だ。教義に無い事を平然とやるのに、その所作が一番美しいだなんて。」


前世では自身で検視を行う時はやっていた行動を準えただけだが、この世界で『検視時に祈りを捧げろ』なんて言う戒律は無い。

だから、教義に忠実なダリウスはこの行動の意味が解らないのだが、その所作に一種の美を見出していた。

短い祈りが終わるとルインは死体にさらに近づき、


「・・・では始めます。【構造解析】」


早速構造解析の魔法で検視し始めた。


(死因は・・・何だこれ?かなりの複合だな。縮瞳に胸部の圧迫、神経異常・・・おい!待て!ヤバイ!!!!)


ルインはこの死体に使われた毒が何か分かった瞬間、叫ぶ様に言った。


「おい!この死体は何日前に見つかった?!」

「発見は10日前だが?」

「この死体には浄化の魔法は掛けたのか!?」

「掛けましたが、何故です。」

「・・・なら良い。毒は不浄なものとして浄化されてる筈だからな。」


一旦息を整える為に死体から離れたルインを見てマグヌスが訪ねた。


「毒の種類が分かったのですね?」

「・・・神経毒の1種です。ただ、ハッキリ言います。この毒を作れるのは相当な錬金術師です。」

「詳しく話せ。」

「荒唐無稽に聞こえるかもしれんがよく聞いてくれ。人間だろうが其処等辺にある石だろうが、分解すればかなり小さい物質だって言ったら信じるか?」

「信じれんな。だが、お前が言うとそうなのだろう。」

「この死体にはその小さな物質に効く毒で、殺し方は恐らく空気の様に揮発させた煙を吸わせたのでしょう。」

「毒煙ですか・・・。現場情報が要ると言った貴方の言葉は正しかったようですね。」


ダリウスやマグヌスには毒煙と認識させたがソレの知識があるルインは最悪の事態を予感していた。


(何処の馬鹿タレだ!!!サリンなんて物を生成しやがった馬鹿野郎は!!!)


C兵器の中でもトップクラスに凶悪な毒ガス兵器の死体を目の前にしたルインは、これから始まる地獄への予防策を言うしかなかった。


「マグヌス様、直ぐに王宮に行き事態の収束に騎士隊の協力を得てください。恐らくは現場には何もない状態でしょう。」

「そうですね。毒煙の様な物なら人海戦術で犯人を見つけるのが良いでしょう。」

「ダリウス、直ぐに治療院に居る全員に浄化魔法の向上と特別追加人員の手配を頼む。最悪の事態ならこの王都丸ごとが危険だ。」

「・・・そこ迄か。」

「少なくとも解決方法が浄化以外無い状態だ。知り合いの錬金術師に当たってみるが、そいつもコレの解毒剤なんて作れんだろう。」


サリンの治療薬の1つであるPAMやアトロピンはこの世界でも生成できるだろうが、それを作れる腕を持った技術者がいないのが現状であった。


(最悪、塩基水溶液か活性炭さえあればなんとかなるが、あれもこの世界じゃあ生成が難しい。・・・だぁああぁぁぁ!!!!こういう時に前世の製薬会社や化学物質精製工場が欲しいわ!!!)


無い物強請りをするにも限界があるが、流石に手持ちの札がゴミなのを自覚してしまえば心の中で叫びたくもなってしまった。


「事件資料持ってきました。それで、どうなんですか?」

「経過はマグヌス様に聞いてくれ。その調書は俺に。」


ジタンは言われた通りに調書を渡し、マグヌスに検視経過を聞き始めたのをしりにルインは調書を読み始めた。


(現場は屋外。発見時には死亡しており、検視結果上、死後4日が立っていたのか。なら、ガスの毒は恐らく抜けきってるな。)


揮発性が高く少量でも毒性があるが、ある程度の日数さえあれば毒素が抜けるのでこの辺りは安心したが、同時にこの毒が何処で合成され、使用されたのかの情報が無いのが手詰まりになってしまった。


「ジタンさん。申し訳無いが、あんたはファルド服飾店に行ってちょっと特殊な服の依頼をしてきてほしい。」

「特殊な服?」

「通気性度外視の長袖長ズボンと手袋。材質は量産前提の使い捨てで良いから、長袖はパーカー付きにしてくれ。」

「解った。」

「俺は知り合いの錬金術師の所に行ってくる。依頼が出来たら全員何処かに集合してほしいんだが・・・。」

「私の執務室を貸しましょう。それで良いですね。」

「有難う御座います。・・・じゃあ、動いてくれ。馬鹿が調子に乗って王都を地獄絵図にする前に止めるぞ。」

切りが良いのでここで切ります。

地獄状況開始。


何頼みに行くの?

次章で書きますが、まあそう言う物です。

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