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異界暗殺業  作者: 紅鈴
化生
164/180

8-1

8章開始です

ルインは患者も居ないのに手術室にいた。

それと言うのも近日に手術の予定が入り、治療室では見せ難い物を観る為であった。


「さてと、さっき念写した物をもう一度見ますか。」


念写はこの世界の魔法の1つで、モノとしては転写に近い魔法である。

転写が紙に書いて在る物の複製に対して、念写は自分の頭の中に描いた物を紙に写しだすものだが、余計な考えや雑念が入ってしまうとそれも写してしまう為、扱いが難しい魔法の1つである。

ルインはこの魔法を使い、患者に腫瘍や外傷部分の説明の補完・・・いわゆるCTやMRIの様に使っていた。

そして幾ら患者とは言え人間の内臓を簡単に他人に見せる訳にはいかない為、手術室に入るしかなかったのだった。


(腫瘍の個所は一応患者にも見せたが、もう一度見ておかないと危ないからな。)


患者の症状は初期の胃癌で、ルインとしては簡単な部類の手術だが、治療院で治療できない病気を『腹を開かせてくれば治せるよ』と言われた患者に説明するのが一苦労であった。

その為、念写写真を詳しく見る事が出来ていなかった。


(ガンスさんもなぁ、其処等辺の説明をやってくれると助かるんだが・・・。)


患者を紹介してくれたガンスには感謝はしているのだが、如何せん連れてくるだけで詳細の説明を省く事が多い為、何で治療院では治療できないのかの説明までしなければいけないのが悩みの種であった。


(さて・・・念写の写真を見た感じだと、癌細胞の転移は・・・無いな。念の為に手術前に精密検査すればいい。)


念写を見て手術前にやる事を決め、手術の工程を頭の中で組み立て始めたその時、ポケットに入れていた呼び鈴の魔道具が鳴り始めた。


(呼び鈴解除よし。・・・さて、お仕事お仕事っと。)


現状、入院患者は居ない為、この呼び鈴の魔道具が鳴るとしたら受付側の入り口以外無かった。

その為、受付側に赴いたルインは、来院した人物に疑問を覚えた。


「ジタンさん。外傷もない人間を連れてこられても困るんだけど。」

「いや、ちょっと待って先生。治療院では治療できない事だからここに運んだんだよ。」


ラフなTシャツにジーンズといういかにも休日満喫中のジタンが、同じような服装の男を肩に担ぎながら受付に立っていた。


「またその手合いかよ(小声)。」

「何か言いました?」

「いや、何でも無い。・・・で、症状は?」


ジタンが患者を受付にある長椅子に横たえると、ルインが質問した。


「何か今朝方から腰が痛かったらしいんですけど、少ししたら直って街を散策してたらしいんですよ。」

「朝から腰が痛んだが、引いたからと街を散策してたら再発したのか。」

「ええ、そうです。で、今度は動けなくなったようで、近くを通った俺が治療院に運んだんですが、治療院では直せないって言われてここまで運びました。」

「あの馬鹿共がね。・・・おい、聞こえてるか?今、腰のどこら辺が痛い?」

「今は・・・腰と言うか・・・腹の・・・辺りです。」

「あん?」


痛みが移動した事に違和感があったルインは患者に近づいた。


「【構造解析】・・・あ~、成る程。これは俺でも治せんわ。」

「おや?貴方でも治せないのですか?」


突如、後ろから声がしたので振り返ると、そこにはマグヌスとダリウスが立っていた。


「マグヌス様。何でここに?」

「いえ、うちの者が誰も治せない患者が出たというので治療してみようとしたのですが、その患者が出て行ったと言われましてね。恐らく此処だろうと思って出向いたのですよ。」

「成る程。・・・ダリウス、其処の机に紙が置いてあるから持ってきてくれるか?」

「自分で取りに行け!!全く・・・。」


指を指した方に素直に歩いていくダリウスを見て、ツインは患者に向き直った。


「まず言っておく。アンタの症状は『治療が出来ない』じゃなくて『治療の意味が無い』が正解の治せないだ。」

「治療の・・・意味が・・・無い?」

「そうだ。アンタの症状なんだが「持ってきたぞ。」有難う。【念写】・・・これ、見れるか?」


患者やマグヌス達が念写した物を観ると、男性器と菱形の図形とその上に管に繋がっている2つの球が映し出されており、管の中間の所に丸い物体があった。


「これは小便を作るのに必要な内臓を簡易的に映し出したやつなんだが、管の中間に丸い物体があるだろ?これがアンタの痛みの原因な。」

「これは何だ?」

「有体に言えば尖った石だな。正確には結石って言うんだが、これが管の中を通る度に擦れて激痛になるんだよ。」


頭の中でその光景を想像したルイン以外の全員が痛そうな顔をした。


「まあ、痛いのは想像できただろ?で、問題なのはコレの大きさなんだよ。かなり小さいんだ。この絵だと丸いけど実際には細長い針みたいな形でな、今ある器具だと取り出せないし、もう少し痛いのを我慢すれば小便と同時に出てきそうな位置にあるんだよ。だから、痛覚減衰の魔法をかけて利尿剤飲んで、飲み物をがぶ飲みして大量の小便を出せば、今日中には取れちまうんだよ。だから治療の意味が無い。」

「飲み物はどれ位必要ですか?」

「正直、解らないです。下にある菱形は膀胱って言いまして、人によって大きさが違うから、一律にどれだけ飲めば良いなんて言えないんですよね。」

「そうですか。・・・ダリウスさん。申し訳ありませんが、契約魔法薬店に行って利尿剤を買ってきてくれませんか?」


張り付いた笑顔のマグヌスを見たダリウスは有無も言わずに受付から出て行った。


「ルインさん、先程『今ある器具では取り出せない』と言いましたね?どの様な物なら取れますか?」

「・・・尿道から管を入れて専用の鋏を使って砕く方法ですね。体の中で自在に曲がる管や鋏なんて無いので出来ませんよ。」

「言い淀みがあると言う事は他にもありますね?」


()()()()()()()()()()を言う気はなかったが、マグヌスはそれを目ざとく咎めた。

だから隠すしかなかった。


「無いです。今ある物ではどうあがいても出来ません。言い淀んだのは話し難い内容だからです。」

「・・・そう言う事にしておきましょう。・・・あ!ついでです、ちょっとお時間宜しいですか?」

「何でしょう?」

「あなたに見てもらいたい遺体があるのですよ。少し、妙な物でしてね。」

「例の死体ですか?」

「ええ、警邏隊には通達の在った、意味不明の毒物での死体です。」


興味をそそられる言葉だったが、今言わなければいけない事を言った。


「この患者を治療してからなら良いですよ。店も閉めなきゃいけませんし。」


医者として患者を放っておくのは気が引けた。

切りが良いのでここで切ります。

痛いよね、尿管結石(作者は一度も無いですがこの先は心配です)


使用魔法について

念写・・・系統外系統の魔法で頭に浮かべた光景を紙に写しだす。

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