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異界暗殺業  作者: 紅鈴
鍛冶屋
156/180

7-20

数日後。無事に退院したサイモンはスノームーンに向かった。


「事件に巻き込まれたとは言え、業務に穴をあけました。すみません!」」

「いえ、それは大丈夫ですよ。それより怪我は大丈夫ですか?」

「打撲と打ち身でした。ただ、その時の傷で気絶してたので、検査に数日かかりました。」

「そうですか。・・・何はともあれ、無事に帰ってこれた事を嬉しく思いますよ。」

「有難う御座います。・・・で、副支配人。物は相談なんですが、給料の前借ってできませんか?」

「前借ですか?構いませんが、何に使うのです?」

「・・・それは言えないです。」


正直に言おうと思ったが、言っても信じない事を言う気にはなれなかった。


「なら駄目ですね。意味不明な事の為に、貴方の生活を苦境に立たせるわけにはいきませんので。」

「そうですか・・・。」


ダミアンの言動は正論ではあったが、今のサイモンにとっては意味は無かった。


(前借は無理だったか・・・なら次の手は・・・。)

「言っておきますが、お客様の物やこの中の物を盗むのはやめなさい。半月も働いてくれた貴方を犯罪者にしたくはありません。」

「・・・じゃあ、どうしろって言うんですか!?ダミアンさんだってデロイス商会が襲撃されたのは知ってるでしょ!あの現場に俺は居たんですよ!」

「それは知っています。ですが、裏の組織が貴方の前借した端金で動く事はありません。」


そう言ってダミアンがカウンターの中から新聞の記事を取り出すと、サイモンの方に投げた。


「読みなさい。そこに馬鹿の末路が書かれてますよ。」


記事を読んでみると、川に死体が複数人浮かんでいたというだけの記事だったが、その記事に乗っていた名前は見覚えがあった。


「すまないと思いましたが、貴方の過去を無断で調べました。まあ、ある程度は知ってはいたので、それの補完としてです。・・・どうです?自身を裏組織に引っ張った構成員の死に様は?」


ダミアンの言う通り、その溺死体は自分を裏組織に誘った人と、あの時の仕事仲間だった。


「裏組織に何らかの事を頼むのは相当な金額がかかります。裏組織だからと舐めて掛かると、同じ目に遭う可能性が在りますよ。」

「そんなのは判ってんだよ!だけどさぁ、あの事件が迷宮入りなんて許せないんだよ!!」

「・・・詳しく話しなさい。」

「驚かないでくださいよ・・・。」


サイモンが治療院での出来事を聞いたダミアンは、渋面を隠さなかった。


「警邏隊から騎士隊への捜査権限の委譲ですか・・・、なかなかのゴミ貴族ですね。」

「だったら!」

「それとこれとは話が別です。先程も言いましたが端金ではどこも受けてくれませんよ。」

「・・・端金でも受けてくれそうな所があるんだよ!」

「・・・何処ですか?」

「副支配人も殺しをしてくれるろくでなしの噂話は知ってるだろ?俺、その依頼場所について心当たりがあるんだ。そこに行く!で、有り金全部はたいて依頼しようって!」


それを聞いたダミアンは手で顔を覆ったが、数秒後には作り笑顔になった。


「前借ではありませんが、私の個人貯金から出しましょう。・・・だから、少し待ちなさい。」

「え?ちょ、早!」


サイモンの制止を待たずに奥に消えたダミアンが戻ってくると、その手に金貨が1枚あった。


「これで良いですね?行きなさい。」

「え?あ、は、はい!行ってきます。」


颯爽と飛び出して言ったサイモンを見送ったダミアンは柏手を2度、打った。


「お呼びで?」


ダミアンの近くに外套を纏った人が降って来た。


「話は聞いてましたね?あの馬鹿について行きなさい。金貨は回収後、私に返してくださいね。」

「承知。」


ダミアンの指示を聞くと外套の人物がサイモンを追いかけた。


「若いですねぇ。私も、あの子も・・・。」


ダミアンから金貨を受け取ったサイモンは、ある廃教会に来ていた。


(何でか知らんがここら辺に夜近づくと、変な話し声が聞こえてたんだよな。)


ストリートチルドレン時代にこの廃教会周辺を寝床にしていた時期があり、その時に何回か人が廃教会に侵入してきた気配があったので、身を守る為に起きて、離れた位置で会話を聞いていた事があった。


(表の情報はあまり入らかったが、誰が殺されたみたいな情報は何度でも入って来たからな。)


廃教会に侵入者が来て数日後には話に出た人物が殺されたという噂が立つ事が多かった。

だからこの廃教会の気味の悪さから寝床を変えたのだが、今思えば噂のろくでなしの依頼場所の1つだった事が分かった。


「さて、こっからだ。」


時間帯はまだ昼だが、廃教会の中に入ったサイモンは辺りを見回した。


(誰も居ない。なら、夜までここで待機だな。)


話し声は夜に聞こえていたので、サイモンはこの廃教会で待機できる場所を探し始めた。


{珍しい時間に人が来たねぇ}


その時、何処からか声が聞こえた。


「・・・誰だ?」

{おやおや、あんたは此処の噂を知らないのかい?}

「噂は知らんが、此処で何かをやってるのは知っててね。もし、噂のろくでなしに依頼を出せるのなら出したいんだが?」

{・・・できるよ。どうしたいんだ?}

「デロイス商会は知ってるか?」

{知ってるよ。あそこの店主が数日前に死んだねぇ。}

「その店主の殺害を依頼した奴がいる筈なんだ、そいつを殺して欲しいのが1つ。もう1つはあの商会の商売の邪魔をした奴を殺さずに破滅させてほしい。」

{難儀な仕事だねぇ。・・・解った、やってやみるよ。}

「有難う!此処に金おいて置くから!じゃあな。」

{あ、ちょっと!}


引き留める声に耳を貸さずにサイモンは金貨を置くと、廃教会から逃げ出した。

1人取り残された密偵が金貨を取ると、来た道を帰った。

切りが良いのでここで切ります。

報連相は大事ですよね。


ダミアンについて。

パインの部下ですよ?当たり前じゃないですか?

(密偵衆の男性衆筆頭です。)

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