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異界暗殺業  作者: 紅鈴
鍛冶屋
153/183

7-17

サイモンは特に寄り道もせずにデロイス商会にたどり着いた。


「いらっしゃいませ!」

「すいません、この紙に書いて在る物をください。御代はスノームーンが一括で月末に払いますので。」

「解りました、少々お待ちください。」


髪を持って裏側へ行った従業員を見送りつつ、サイモンは店の中を見回した。


(よく見たらここの商品、結構他国のやつが多いな。)


スノームーンに入って数週間、色々と頼まれ事をこなしてきたおかげで様々な商品を見ていた。

誰がどの品を使うか解らなければいけなかったので、従業員の先輩やダミアン等に聞いていたら、どの商品が何処の国の物と言う余計な事まで教えられたからか、大体の商品の出所が分かる様になってきていた。


(多分、行商の時に出来た縁から取引できているんだな。)


そんな事を思いながら店内を物色していると、1つだけ気になる商品を見つけた。


(ハンマー?・・・いや、なんか変な感じがする?なんだ?)

「其方の商品が気になりますか?」


ハンマーに気を取られていて、背後に立ったムーアにサイモンは気付かなかった。


「ああ、いや。今の貯金では買えない物を観るのはいけないんですけどね・・・。」

「いえいえ、将来を見据えて物色するのは良い事ですよ。・・・それにしてもお目が高いですね。こちらの商品ですがちょとした魔道具でして、持ち主の魔力を消費して打ち付ける威力を高める物なのです。」

「へぇ~。大工仕事には便利そうだな。」

「そうですね。ただ、魔力消費がかなり激しいらしいので、あまり大工の方は買わないんですよね。」

「ああそっか、高所に登っている時に魔力枯渇でふらふらになるのは避けたいな。・・・ならさ、鍛冶師とかは買わんの?」

「正直そっちもまちまちですね。職人によってはいきなり威力が変わるのを避ける人がいますし、仮に使いこなせても、魔力消費が激しいので1人作業の時に使う位しか無いようです。」

「成る程。・・・これさ、そんなに人気が無いなら、もう少し安くならない?」

「今ご購入ですか?」

「いや、恩人にプレゼントで渡したいんだけど、今金が無いから大体3ヶ月後に買いに来ようかなって、それまでに売れて無かったら値下げできないかなと思って。」

「・・・正直に言いますと、そこ迄残っていたら値下げしても良いですね。ただ、一応言っておきますがこちらの商品現品限りですので、無くなったらそれまでです。」

「ははっ!やったぜ!」


小さくガッツポーズを取ったサイモンにムーアは呆れていた。


「スノームーンの従業員さんの恩人は相当な変わり者のようですね。普通、贈り物ってその人が喜びそうな物を送るんですが、ハンマーを欲しがるような御仁なんていませんよ。」

「その人、仕事人気質って言うのかな?仕事と家族の事以外はあまり興味なさそうだから、感謝の印ならこんなもんでも受け取ってくれんじゃないかなって思って。」


その話を聞いたムーアは、1人だけ思い当たる人物がいた。


「もしかしてその御仁って、ダロン鍛冶店の店主さんですか?」

「そうです。あの人、なんか知らんけど気配が全くしないし、立ち振る舞いがなんか怖いんだけど、面倒見がよくて、色々よく見ていて・・・。」

「楽しそうですね。」

「あ・・・その・・・あの人、あの風貌なせいか誤解受けやすそうで、少しでもイメージ回復をと思いまして・・・。」

「全然回復できていませんよ。」


ムーアの指摘にサイモンはバツが悪そうに頭を搔いた。

その時、サイモンはストリートチルドレン時代の嫌な気配を入口の方から感じ取った。


(おい冗談だろ!?何でこんな時に!!)

「すまん!強引にいくぞ!」

「何を・・・!」


傍にいたムーアを押し倒したと同時に扉が内側に吹き飛んだ。


「きょきょうぉお~おしょえびゃ~てんごくびゃ~。」


入って来たのは異常な程の筋肉で膨れ上がった上半身と、それに不釣り合いなやせ細った下半身、そしてある薬物の中毒者特有の焦点の合わない目と可笑しな言動をした大男だった。

その大男を見たサイモンは叫んだ。


「嘘だろ・・・何処の誰がミダニスなんて物を過剰摂取させやがった!!!」

「ミダニス!あんな禁止薬を誰が・・・!」


ミダニスは一時的に筋力を増大させるのだが、効果が効いている間思考能力が低下し、犯罪の加担に繋がる他、過剰摂取すると硬化時間が切れると同時にと死に至る為、国によって輸入禁止にされている危険な魔法薬である。


「おい!逃げるぞ!此処にいたらあのバケモンの破壊に巻き込まれる!」

「ですが店が!」

「命と店どっちが大切なんだ!裏口在るんだろ!?そっから逃げるぞ。」


2人は店内の破壊を始めた薬物中毒男から何とか気づかれない様に従業員専用の扉迄来たが、何故か扉が開かなかった。


「おい、さっきの従業員迄グルかよ!」

「そんな!?」

「しょこきゃ~、にゃまやごみゅ~。」


2人して後ろに振り返った時、大男が拳を振り上げていた。


(クソ、回避できねぇ!)


サイモンは拳が振り下ろされる前に何とか両腕を顔面の前に持ってきたが、叩きつけられた威力が強すぎて衝撃を受け止めきれなかった。


(ク・・・ソ・・・が・・・・。)


そしてそのまま気を失ってしまった。

切りが良いのでここで切ります。

過剰摂取は無理矢理でも駄目ですよ。


魔法薬紹介

ミダニス・・・液体型の筋力増強剤。(レシピ複数あり)

経口摂取により一時的に血流を上げて筋力が増大する。(増強する場所は作った時の材料によって決まる)

効果時間中は思考力低下が目立ち、場合によっては犯罪に利用される事がある。

過剰に摂取すると効果時間が切れた際に過剰な血流が一気に心臓に流れ、異常血流により心臓発作を起こす。

大概の国では禁止薬だが、探索者は闇ルートによって仕入れる事がある。(危険時に使用し、ピンチの脱出をする為)

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