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異界暗殺業  作者: 紅鈴
鍛冶屋
152/180

7-16

サイモンはダミアンからの指令を黙々とこなしていた。


(確かに大変なんだけど、何か知らんが性には合ってるんだよな~。)


昔から他人からの命令に対しては仕方ないと割り切ってせいか、唯々諾々と命令を聞いて実行する事は苦にはなっていない。

ストリートチルドレンの頃の危機管理のせいで寝ている時以外立ったままの生活が続いたので、立ち仕事も辛いとは思わない。

だからかも知れないがこうしてスノームーンの従業員の仕事は、ある意味では天職だった。


(ええっと、次は・・・)

「サイモン、終わりだぞ。」

「え?もう終わったんですか?」

「そもそも掃除は全従業員が毎日してるからな。そんなに汚い所なんて無いんだよ。・・・今、午前中だし、客の入りも無いなら余計な。」


娼館の裏方の仕事で一番大変なのは掃除である。

館内の清潔さは元より、営業中は客が使用した後もその部屋を次の客に使うので、急いで奇麗にしないと営業に支障が出てしまう。

だから手早く隅々まで清掃するようにしており、暇な時でも掃除をする程だった。


「俺の考えてる娼館って、おっさんの体液と姉さん方の体液が混ざってとんでもない匂いだと思ってたんですがね、やっぱ高級娼館ってそんな事にならない様にこんなの毎日してるんっすね。」

「それは何処の場末の連れ込み宿だ?高級には高級なりの格が求められるからな、可能な限りの清潔感は必要なのさ。」

「だからって屋根の上までやる必要あります?」

「昔なんだが馬鹿が別の娼館の屋根に登ったんだが、その屋根が鳥の糞だらけで腐っててな。屋根突き破って、いたしてる最中の部屋に落ちたんだよ。屋根修理の上に清掃費用に諸々がその馬鹿におっ被さって、そいつは鉱山に強制労働に行ったよ。」

「うわぁ、それは最悪だ。」

「こっちだって夢を売る店でそんなの出したくないから、ここも清掃してるんだよ。」

「理解は出来ました。・・・まあ、その、馬鹿には同情できませんけどね。」

「まったくだ。・・・片付けたら暫く休憩な。」

「ういっす!」


手早く掃除道具を片付け終えたサイモンはあてがわれた休憩室に入ろうとしたが、ダミアンに呼び止められた。


「すまん、休憩に入って貰う前に少し買い出しに行ってきてくれ。品はこの紙に書いてある。デロイス商会に行けば買える物ばっかだ。少し多めに渡すから、何か帰りに食べてくると良い。」

「解りました。じゃあ、行ってきます。」


颯爽とスノームーンを飛び出したサイモンはデロイス商会に向かって歩き出した。


(正直な話、あまり行きたくは無いんだけど仕事だからね~。)


襲撃に失敗したとはいえ、自身が迷惑をかけようとした店に、客として入る様になるとは思わなかった。

最初の頃は迷惑の事が何時バレるかと怯えていたが、一向にその気配も無い様なので次第にその考えが薄れていったが、それでも罪悪感だけは残った。


(ダミアンさんが言ってたな。『気にしすぎも良くは無いですが、気にしないのはもっと駄目だ』って。)


罪悪感だけでも持って店に接しろと言われた時は驚いたが、暫く通ってみてそう言った意味が分かった。

デロイス商会の商品は基本的に他の雑貨店より質がよく、その割にはお手頃な値段で購入できるように設定してあった。


(利益は出てるだろうが、それよりも人の暮らしの方に寄り添おうとして商売してるんだな。)


店を利用したお客はそれを理解しているかどうかは判らないが、少なくとも従業員は全員がそれを理解して支えている様だった。


(このまま行けばあの店はもっと栄えるだろうな。・・・それなのに厄介なのに目を付けられちまって・・・。)


タイレルに持っていった報告書を偶然見てしまったサイモンは、デロイス商会のボトルネックの部分が、読めただけで何となくだが判ってしまった。


(多分あの襲撃の依頼人が例の商会なんだろうな。・・・問題は俺が依頼人の名前を知らん事なんだよなぁ。)


あの元上司は入ったばかりの新人に詳しい内容を明かさなかった為、依頼者の名前が判らなかった。


(判っていればあの店長さんに話したのになぁ・・・。)


そんな事を考えながらデロイス商会に向かって行った。

切りが良いのでここで切ります。

次話かなり短いかも。


サイモンの学習能力について

物凄く高いです。

勉強できる環境が在れば伸びたんですが、如何せんこの年までストリートチルドレンだったので全く勉強らしい勉強をしてこなかったです。

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