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異界暗殺業  作者: 紅鈴
鍛冶屋
148/179

7-12

タイレルは回転研ぎ機を使用し、鋳造品を仕上げていた。


(昨日の鋳造で目標の半分は出来た。この調子なら2ヶ月と言わずに1月半でも良かったか?・・・いや、不測の事態に備えるのも経営者の務めだ。油断はや慢心は禁物だな。)


デロイス商会の依頼を受けてから早半月が経った。

製造初めから奇数日は鋳造、偶数日は研ぎ上げと鋳造と決めて、調子のいい時は数を増やしつつ、進めていくと予想よりも早く依頼が完了しそうだった。


(魔力量の桁上りがいつの間にか起きていたのか。)


その原因はタイレルとミルドの魔力量がいつの間にか上がっており、そのおかげで鋳造の量が増え、増産に成功していた。


(鍛冶屋としては嬉しくは無いが、魔力を使う仕事をやっていると増えたのは嬉しい限りだ。)


ダロン鍛冶店は本来鍛造をメインとしており、鋳造はちょっとした小遣い稼ぎや、嫌がらせをしてくる商店に対しての意趣返し的制裁にしか使っておらず、魔力量が上がる機会なんて事は余り無い。


(一度くらいは自身で魔法を練りこんだ剣を作ってみたいと思っていたが、この位の魔力量ならこの仕事が終わった後に趣味でやるのも吝かではないかな?)


俗に付与剣や魔剣と呼ばれる武器を作るのは鍛冶師としての夢ではあった。

今までは魔力量が足りずに手を出さなかったが、これだけの魔力量が在れば1回だけやってみたくなってきた。


(だが今は仕事に集中!趣味の時間はそれなりの金銭が出来てから!)


仕事をして家族を養わなければいけないのに、それを疎かにしては仕事の意味が無い。

だから一度霧散した集中力を再起動して研ぎに集中し始めた。

暫くすると未完成品だった剣が全て研ぎ上がり、実用として使えるようになった。


「親父、『試し』をしなくて良いの?」

「・・・大丈夫。今日、休み時間、1本、試す。」


『試し』とは試し切りの事で、ダロン鍛冶店では程よい太さの丸太を切りつけて、切れ味を確かめていた。


「それならいいけど、無理してない?」

「・・・無理、やって無い。依頼、終わり、夢、やってみる。それ、モチベーション。」

「夢?何かあるの?」

「・・・言うの、初めて。魔剣、付与剣、やってみたかった。」

「出来るの?作るのに魔力がかなりいるって書いてあったけど・・・。」

「・・・1回だけ、出来なかったら、次の機会。チャンス、まだある。」

「次の機会って、・・・魔力が上がるのに何年かかるか判らないじゃん。それで良いの?」


魔力量は魔法を使い続ければ上がるとされているが、どれだけ上がるかは研究者でも判っていない為、今みたいに鍛造を優先してやっているだけなら何年かかるかをミルドは心配した。


「・・・出来ない、仕方ない。ああ言うの、作る、鍛冶師、憧れ。だが、家族、蔑ろ、駄目。」


それを聞いたミルドは肩をすくめた。


「偶には我が儘を言ってもいいんじゃない?」

「・・・十分、我が儘、言った。趣味、基本、利益、出ない。」

「確かに。あれが利益出すのって基本は裏の仕事だけだよね。」


タイレルが趣味で作っているギミック武器は利益度外視で色々詰め込む関係上、十分に利益になるような事は余り無く、偶に作ったギミックの1つを鍛造品に仕込む時だけが利益が出る時だった。


「・・・槍、穂先、出来た。」


喋っている間に今日分の槍の穂先が仕上がった。


「早いね。・・・バックラーはどうするの?」

「・・・持ち手、取付、後。鋳造、再開。」

「うい、了解。・・・また魔力使うのか~。」

「・・・嫌か?」

「嫌じゃ無いんだけど、魔力切れ寸前のあの虚脱感だけどうにかならないかな。」


魔力が底をつきかけると急に虚脱感が襲い、それ以上の魔力行使を行なうのを躊躇する感覚は経験した全員が嫌がる物であった。


「・・・無理。専門家、解決策、力業。」

「魔力回復ポーション飲みましょうってやつ?あんな高価なもん庶民が飲めるか!」


魔力は自然回復以外にも専用ポーションで緊急に回復できるが、費用が1個銀貨3枚と馬鹿高いので一般庶民で魔法を使う職業についている者はそれを頼らずに、自然回復で済ませようとする物が大半だった。


「・・・頑張ろう。」

「う~い。」


そうして鋳造作業に戻る2人だった。

切りが良いのでここで切ります。

調子が良いと仕事って早く済みそうな気配がしますよね。


魔力量上昇について

魔法を限界まで使い続けていれ体が慣れて魔力量が増えます(イメージは筋トレを想像してください)

魔力回復のポーションを飲んで回復は出来ますが、魔力量の上昇にはつながりません。(一時的なブーストの為)

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