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異界暗殺業  作者: 紅鈴
鍛冶屋
145/180

7-9

微妙な胸糞注意

タイレルは夢を見ていた。

それが夢だと気づいたのは、場所が墓地だったからだ。


「助けられる命と助けられない命、どっちを取る?と言ったら俺は助けれる方を選ぶよ。」


隣にはルインが喪服で立っていて、自身の装いも喪服だった。


「・・・感謝。許せない。」

「それでいいよ。許してもらおうなんて思って無い。」

「・・・君、仕事。状況、仕方ない。」

「あの時はあれが正解だとは思ったが、彼女を見ると失敗だったかもしれん。」


目の前には墓に縋りついて泣いているミュリアがいた。

そしてその墓にはミルド=アザキエルと書いてあった。



寝苦しさから目を覚ましたタイレルは、今の夢をしっかり覚えており、その夢を反芻していた。


(未だにあの出来事を夢で見るのか。)


ルイン曰く、過去に関連した夢を見るのは、その事に後悔がある場合が多いらしい。


(それにしたってルインは無いだろう。その頃はまだ知り合ってすら無いんだぞ。)


あの出来事の時はルインは子供と呼べる歳で、場所も墓地ではない。


(そもそもの前提が違う。あれは裏の依頼を完遂した時だ。)


競り落とした依頼を完遂した際、偶然見つけてしまったモノが全ての始まりだった。


(後悔、先に立たず。だったか?何処に後悔が在るんだよ?)


見つけたモノはそのまま放っておく訳にもいかず、自分で処理しなければいけなかった。

だが、雑に処理する訳にもいかないモノであった為、どうするか悩んでしまった。

結局はミュリアにモノの存在を話し、自分達で何とかしているのだが、それが一種の後悔なのだろう。


(・・・偶にはお墓参りに行きますか。死人もモノの状態も知りたいだろうし。)


依頼の後始末は密偵達に任せてはいるが、あの依頼の犠牲者の墓の位置は無理を言って知らせてもらった。

だから墓参りは気が向いた時にする様にしていた。


(次の休みは・・・明後日か。出来れば晴天になってほしいが、どうなるか。)


休みの予定を決め、軽く体の調子を確かめた後、ベットから起き上がった。



そうして休みの日が来た。

食卓にはタイレルとミュリアしか居らず、切り出すには丁度良かった。


「・・・今日、俺、用事、在り。」

「何かありましたっけ?」


今日の休みには予定なんか無い筈なのに、いきなり予定が出来たと言ったタイレルを訝しんだ。


「・・・墓参り。」

「お義父さんはまだ先ですよね。誰なんです?」

「・・・依頼。」

「・・・ああ、成る程。」


その言葉でミュリアは何処の墓か感づいた。


「いいんじゃないですか?偶には。」

「・・・大丈夫?」

「子供じゃ無いんですよ、心配しないでください。」


そうしてミュリアは自身のお腹を叩いた。

それを見たタイレルは席を立った。


「・・・危険、迫る、隠れ家。」

「は~い。貴方も気をつけてね。」

「・・・行ってくる。」


そうしてタイレルは家を出ると、北区の方に向かって歩き始めた。

北区には広大な霊園があり、その中に件の墓がもあった。

タイレルは途中で買ってきた花とワインを墓前に置き、静かに祈りを捧げた。


(あなた達が残したモノは今、私が管理しています。殺した者に管理されるのは業腹でしょうが、あなた方が悪いんですからね。)


あの時の依頼内容は今でも覚えていた。

ある伯爵の娘が誘拐され、数日間の懸命な捜索の後に救助された。

だが、救出された娘は精神が崩壊していた。

家族は何とか彼女に立ち直ってほしくて懸命な介護を続けたが、数か月後に妊娠が発覚した。

彼女は誘拐された数日間に誘拐犯によって強姦され、無理矢理妊娠してしまっていたのだった。

これに激怒した伯爵は犯人を捕まえるべく、裏の組織にまで依頼を出し、犯人を捜しだした。

そこで問題が発生した。

調査を依頼した裏の組織が伯爵の無知さに漬け込んで、対抗組織のボスを犯人の様に仕立て上げてしまったのだった。

それのせいで何も知らずにボスが投獄された対抗組織は伯爵家を襲撃。

結果、襲撃当日に伯爵家にいた人員が死亡する事態となったが、偶然その日居なかった後の当主が事件の真相をオークション経由で知り、偽情報を渡した組織と伯爵家を襲撃した組織と誘拐犯に対してオークションを通じて暗殺依頼が入った。

そしてオークションの結果が自分と『網元』ともう1人が別々で落札し、自身は偽情報を渡した組織に暗殺に入った。


(馬鹿な奴らだよ。ちゃんと調べたんならその時点で情報を渡せばいいのに、欲を搔くから余計な厄介を呼び込む破目になっちまうんだから。)


組織壊滅の為に色々家探しをしていたら、組織はちゃんと誘拐犯自体の情報も仕入れており、無駄に悪知恵を働かせたせいで壊滅する事になってしまった様だった。


(・・・まあ、厄介事は欲を搔かなくても呼び込まれるからな。)


家探しの結果が例のモノに繋がったのなら、厄介事は突然やって来るのだろう。

モノを自身の懐に入れた事に後悔はない。無い筈なのだがあの時以降、偶に夢で嫌な予感を突き付けてくるようになってきた。


(何時かは俺も貴方達の様になるのだろう。それに後悔はない。だが息子が巻き込まれることが無いように立ち回るしか無いな。)


そう決意しながら、タイレルは墓地を去った。

切りが良いのでここで切ります。

わざと暈かしてます。


オークション落札記録:ある犯罪組織2つと誘拐犯についての報告書

依頼者である伯爵に嘘をついた組織並びに伯爵家を襲撃した組織と伯爵家子女を誘拐した犯人は各落札者が無事依頼を完遂。

伯爵家には噂話で報告済み。

2組織壊滅の余波は余り無いものと推定される。

備考:落札者タイレル=アザキエルが依頼完遂後不測の事態発生。

当人の提案により■■■を保護。

以後■■■を落札者と共に経過観察をされたし。

再備考:■■■は脅威にならず。

この報告書は以後破棄されるまで記入がないものとす。

(■■■は塗りつぶされてます。)

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