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異界暗殺業  作者: 紅鈴
鍛冶屋
137/181

7-1

7章開始です。

王都ロイエンタールの南区の一角に『ダロン鍛冶店』と看板が掛けられている店がある。

鍛冶の名の通り、ここでは様々な金属製武器や防具、日常で使う包丁等を作り出しており、それらの販売も行っている。

また、鍛冶に関わる事だからと研ぎの依頼も受けており、工業地区である南区の中ではかなりの騒音をたてていた。

そんな所にルインは来ていた。


「タイレル!居るか?!」


店の中に入り、大声を張り上げた。

だが、金づちの音が五月蠅い上に作業場と書かれた扉が固く閉ざされている為、聞こえてはいない様であった。


「【音量増大】・・・タイレル!居るか?!」


魔法で自分の声量を増大して呼び出してみた所、扉が開いて人が出て来た。


「すみません、お客・・・なんだ、ルインさんか。」

「何だとは何かな?ミルド君?」

「だって、いっつも変な事しか頼まないじゃん。この前だって、警邏隊の調査とは言えフランベルジュの事聞きに来たし・・・。」

「いや、今回はちょっとした依頼なんだが・・・ミルド君だと無理だな。」

「あ、酷い!俺だって見習いとは言え、親父の下で働いている鍛冶師だ!ちょっとした剣ぐらいなら作れるぞ!」

「武器の製作じゃなくて研ぎの依頼なんだけどね。・・・ほら、これ。」


そうして取り出したのは、手術道具であるメスだった。


「つい最近なんだけど、色々切り過ぎて、ほんの少しだけ切れ味が落ちてね。」


そう言ってメスを渡すとミルドは見分し始めたが、ある事に気が付いた。


「コレ、研ぐ必要無いんじゃないですか?自分でも研いでますよね?」


鍛冶師の弟子であるミルドは刃物の鑑定もおこなっており、その賛美眼がメスの研磨の必要性を全く感じなかった。


「まあ、自分の使う道具だから自分でも整備してたんだけど、どうも何処かに引っ掛かりがあって切りにくいんだよ。実際、ネズミを切ってたら途中で切りにくい部分があってね。」


だが使用者であるルインは何処に不備が在るようで、それのせいで思い通りに切れなかったようだ。


「ええ~・・・、こんなに綺麗なのに、なんでだ?」


詳しく調べるミルドだが、自分ではどこが悪くなっているのかが全く理解できなかった。


(刃元のグラつき?いや、これは一体の奴だからそんな物は無い。じゃあ刃の角度?それも無い。刃の角度が違えばこんな薄い刃なら最初から切れない。う~ん・・・、何だろ?)


調べれば調べる程原因が分からなくなってきたミルドは背後の気配に気づいていなかった。


「よう、タイレル。すまんがミルド君が持ってるの研いでくれないか?」

「え?・・・うぉう!びっくりした!」


ルインの言葉でミルドが振り返るとそこには鍛冶の師匠にして自身の父が立っていた。


「・・・息子、貸せ。」

「ほい、どうぞ。」


ミルドからメスを受け取ったタイレルはじっくりと見始めた。

刃先から見たり柄から見たりしていると、徐に自分の指先に刃を当てた。

幾度か刃を押し込むと、メスをミルドに見える様に向けた。


「・・・刃先、刃毀れ。」

「え!?何処にそんなのが?」


タイレルは刃の曲線部の中央付近を指差した。


「・・・視力強化。」

「【視力強化】・・・あ、本当だ。」


小さな刃毀れだったが、深く切る時に引っ掛かりやすい様に欠けていた。


「・・・視覚、必要。頼り過ぎるな。」

「はい。」

「・・・精進。」


そう言いながらタイレルはルインに向き合った。


「・・・何を切った?」

「人とか動物、偶に魔物。最近は人の皮を取るのに使った。」

「・・・仕事?」

「そうだな、治療の為に使った。」

「・・・そうか。」


そう言ってタイレルはカウンターから砥石を取り出した。


「俺も砥石で研いだが?」

「・・・違う。」


そう言うとまたカウンターから砥石を2つ取り出した。


「・・・粗砥、中砥、仕上げ砥。」


タイレルはまず粗砥と呼んだ砥石でメスを研いだ。

幾度か研いだ後に次に中砥で同じ様に研ぎ、同じ様に仕上げ砥でも研いだ。

研ぎの出来を目で確認すると、徐に塊肉を取り出した。


「・・・切ってみろ。」

「何処から・・・いや、試し切り用か。」


言われた通りに切ったルインは感触を確かめた。


「ここまで完璧に出来るとはな、流石本職。」

「・・・息子、できる。簡単。」

「成る程、後は経験だけね。」


そうしてルインはカウンターに銀貨を1枚置いた。


「・・・多い。」

「手持ちで足りそうなのがこれだけなんだが・・・。」


ミルドがカウンターの中に入ると銅貨を30枚程出してきた。


「・・・息子、少ない。」

「親父、商売なんだよ。頼むからもう少し貰っときな。それとも何?母ちゃんも俺も何も食べるなって事?」


そう言われたタイレルは唸るだけだった。


「じゃあ、おつりはこれで。」

「おう、ありがとな。」


そうしてルインが店を出た後、ミルドがタイレルを叱り始めた。


「大体さ、親父は口下手だから客商売に向いて無いんだよ。母ちゃんが買い物から戻ってくる迄は俺がカウンター作業をする約束だろ。」

「・・・すまん。」

「けど、助かった。取り置きして、後で親父に見てもらおうかと思ってたから。そうしたらルインさんも仕事に支障が出るじゃん。そうならなくてよかったよ。」

「・・・戻るぞ。」

「おう。」


そうして2人は作業場に入っていった。

切りが良いのでここで切ります。

大丈夫です。ただの口下手です。


使用魔法

音量増大・・・系統外魔法の1つで音を増大する。(人口音でもいける為、系統外)

視力強化・・・補助魔法の1つで身体強化の亜種。視力の強化をする。


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