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異界暗殺業  作者: 紅鈴
娼館長
132/180

6-20

ゴアズの粛清が終わり、幾日か経ったある日、パインは何時も通り娼館で政務をしていた。


(最近は新聞社の方の報告もこっちに来るようになったのが嫌ね。)


パインとしては娼館の報告と新聞社の報告は別にしてほしいのに、二度手間になる事を恐れる密偵達が赴く方に全部の報告を置くようになっていた。


(一応、パインとサザンカは別人って事になってるんだけどな~。)


密偵達や娼館の上役等の身内全員が2役生活を知っている為問題は無いが、世間的には同一人物である事を悟られる訳にはいかなかった。

もし知られた場合、情報収集の弊害の他、なぜ自分が偽名まで持って娼館を経営しているのかを探られる可能性が在る。

そうなってしまえばノーチア家の事情まで探られて、最悪は自身の破滅まで行ってしまう事を意味していた。

だから別人になる様に変装しているのであった。


(大変なのよねぇ。胸が苦しいし、化粧が嫌いな方なのに態々化粧をしないといけないし、服も靴も髪も自分の好みの反対を着なきゃいけないしでイライラしてくるんだから!)


長年の客取りのせいでパインの特徴は知れ渡っている為、変装するのは本名であるサザンカとしての方だが、苦労が無い訳ではない。

別人になる為に、まずは邪魔なのが自身の大き過ぎる胸であった。

一部のメイドがコルセットを用意するのだが、コルセットは胸ではなくお腹周りを締め付ける物の為、十分に細い自分では意味が無い。

その為、ルインに教わったさらしを巻き、その上でオーバン特製の胸を潰す下着を着ける事になるのだがこれがかなり息苦しいのであった。

教わった通りに付け始めた頃は、1時間もすれば拷問かと思う位に息切れし、誰も居ないのを確認するとすぐさま下着を外していた。

顔が知れ渡っている以上顔を変えなければ直ぐにばれる。

だから、ある事情からあまり好きでは無い化粧で特徴を作った。

化粧の技術は嬢教育の基本だから簡単に特徴を作り、それを紙で記録してその上でメリッサ謹製の伊達眼鏡で顔の印象を変えた。

そうして出来上がった顔に合う様に髪形を変え、社長っぽさを出す為のスーツを着て準備完了となるのだが、自分の好みは髪を縛らずにゆったりとした服とハイヒールなので、ローヒールにキッチリしたスーツと縛るような髪型はそれだけでストレスが溜まる。

さらにそこから仕事がある為、そこでの出来事によるが余計にストレスが溜まってしまう。


(だから前のは耐えられなくなったんでしょうね~。)


自分の特異体質のせいで壊れてしまったクロスリングは、ミスリルから火緋色の金になった事で銀から淡く輝く金色に変わった。


(この体質は本当に厄介なのよねぇ。)


魚の中には電気を発生させられる体質の魚がいるが、自分の場合はほんの少しの動きだけでもかなり筋力が鍛えられる体質らしい。

この体質に気付いたのはまだ何も知らない子供の頃だった。

机に座っていた自分の周りを飛んでいた虫が鬱陶しかったので加減無しで叩き落とした時に机まで叩いてしまった。

普通だったら手が痛むだけの筈だった。

実際には机を破壊し、勢いを殺せずに頭を地面に打ち付けてしまい、頭部から流血と言う騒ぎになった。

そこから治療院で体を調べられた結果、この体質が判明したのだった。


(あの時は御爺様やお母様に感謝したわね。)


体質の事を知った日から迂闊に何かに触れるのが恐くなり、人付き合いも億劫になる程だったが、母からは励ましを、祖父からは日々の努力の重要性を説かれ、必死に頑張って力を制御できるようになった。


(だからでしょうね。父のあの行為には侮蔑と共に殺意しか湧かなかった。)


自分事祖父と母を殺した父は紆余曲折があり爵位引継ぎの上、鬼籍に入ってもらった。

その為の準備に自分の今までの人生の大半をつぎ込んだ末の結果が、現在のこの地位であった。


(その原因も何もかも片付いたし、暫くしたら少し羽を伸ばそうかな~。)


頭の中で避暑地を考えていると、復帰した御婆・・・シエナが入って来た。


「お嬢様、申し訳ありませんがこちらをお読みください。」


差し出してきたのは豪華な文様が入った手紙だった。


「・・・嫌な予感がする。」

「その予感は合っていますよ。」


受け取った手紙の裏を見れば王家の封蝋がされていた。

慌てた手つきで手紙を広げ、中身を読み込んだパインは天を仰いだ。


「そうよね~。あたしってば公爵家の主人だもんね~。そろそろ自分主催で夜会を開かないといけないよね~。・・・がぁあああぁあぁぁぁ!!!!!」


公爵家主としても娼館の主としても失格な絶叫が口から出てしまった。

届いた手紙は王家のお願いとして公爵家主催で夜会を開いて欲しい事だった。

当主交代からかなりの年数が経過しているのに、未だに夜会を開かない事を不思議がった王家が、お願いと言う形で催促を促してきた。


「お嬢様!乱心してはいけません!何時までにやればよろしいんですか!?」

「1ヶ月以内よ!急いで準備しないと!来客への招待状とドレスの新調とええっと・・・後何だっけ?」

「お嬢様、落ち着いてください。1ヶ月では主だった領の方が来られませんのでそこは無視しましょう。何でしたら、王都中の在中伯爵家に王の無茶ぶりの書類を添えて出せば言い逃れは出来ますので。ドレスは前頂いた大振りのリングが付いたやつので良いのでは?」

「・・・あれを公爵家の主人が着るの?煽情的すぎない?」

「では1月以内の特急でドレスを作るんですか?しかもサザンカお嬢様としての方で?」

「正直、特急で出すには無駄な出費ね。解った、それでいきましょう。」

「では後は・・・」


そうして王の無茶ぶりを叶える為にパインは奔走する羽目になり、羽を伸ばす事は出来なくなった。

今章終わりです。

またいつも通りに人物及び設定を書いて次の章に行く予定ですが、その前に他愛のない話を書くかもです。


無茶ぶりオブザ王家 グレープフルーツ味

「おいコラクソ王、何公爵家に無茶ぶり夜会の手紙出してんだ?おん!?」「久々にあの女傑と会いたいんだよ!悪いかコラ?」「悪いに決まってんだろうがコラァ!ドタマカチ割てやらぁ!」「よぅし、俺が勝ったら法案通せよ宰相!」「通すか馬鹿野郎!そこに直れや!」「夫殿、ファイト!」「いや王妃様、止めてくださいよ!頼むから!」

結果・・・ドロー。(両者クロスカウンターでノックアウト)

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