6-19
ゴアズは逃亡の為、自身の隠れ家で荷物を鞄に詰めていた。
祖国が滅亡し、死に物狂いで商売をした。
築いた財を使い商会を発展させ、方々に手を廻し地位を築いた。
地位に見合った事もしたし見合わない事もした。
その結果が机の上に載っている紙であった。
その紙には『オークショニア』のオーナー不由届と共に数々の汚職の写し、その写しがすでに所在地の警邏隊に届けられた事が書かれていた。
(どうしてだ!何故こうなった!)
確かに自分は人格者ではない。
金を得る為の商売には黒い事もやった。
奴隷斡旋に販売、他人の財を無理にでも徴収する闇金に違法土地買収等、数え切れない程やった。
だが、それでも最後の一線まではやらなかった。・・・自身ではだが。
汚職の証拠を見れば自分が示唆した数々の殺人事件が自分がやったようになっていた。
それだけでも致命傷レベルなのに『オークショニア』からの不由届は最悪だった。
(ふざけるな!粛清なんてされてたまるか!私は生きてこの世の贅沢を満喫するのだ!)
不由届が届く事はすなわち粛清を意味していた。
『オークショニア』に入って直ぐの頃、別の街に潜っていた際に『オークショニア』の粛清が発生し、自身は命からがら逃げ伸びた事は年を取った今でも鮮明に覚えている程だ。
それが自身に降りかかる事だけは避けていた筈だった。
(何故だ!何故!)
何故と頭の中が反響するが、明確に答えは返ってこなかった。
そして荷物を完全に入れ終わったその時、隠れ家に誰か入って来た気配がした。
(何だこの気配は!?此処の事は部下の誰にも知らせて無いぞ!?)
この隠れ家は部下の誰も知らず、追跡もされない様に巧妙に偽装していた。
だから自分以外の気配なんて物がする筈がなかった。
感じた気配は迷わずに一直線にゴアズの元まで迫っていた。
(何故だ!この隠れ家には万が一の為に大量のトラップを敷き詰めているのに!何故それに引っ掛からない!)
勿論トラップの位置も自分しか知らない筈なのに何故か全て素通りしていた。
(だが、この部屋の位置までは知らない筈!上手くすれば逃げられる!)
不安からの希望的観測だったが、この部屋の場所は建物の見取り図でも発見できない様にしていた。
幾ら住宅見取り図を使っても存在しない部屋にたどり着くことは不可能である。
その筈なのに何故か気配が部屋の目の前まで迫っていた。
(何だこの気配は!何故ここが分かったんだ!)
扉の前の気配を感じ取った次の瞬間、扉が吹き飛んだ。
「誰も通らない様な山中に居を構えてそこにはダミーを含めたトラップハウス、挙句の果てには見取り図に無い地下室に甲鉄の扉。よくよく考えられてたけど、悪の親玉ていうよりは子悪党の考え方なのよね。」
壊された扉から入って来たのはパインだった。
何時ものドレス姿ではなく、体に纏わりつく様なスーツを着て大型のトロリーバックを転がしながら入って来た。
「貴様!何故ここが分かった!」
ゴアズの怒号にパインは疲れた顔とため息を隠さずに説明に入った。
「使い古された言葉ね。普通に密偵を使って探索したに決まってるじゃない。」
「そんな筈は無い!この場所に来れるのは俺だけだ!」
「魔物除けの結界魔道具なんてその気になれば誰でも持ってるでしょ。馬鹿じゃないの?」
「違う!この山全域には私でしか解けない気配探知の魔道具がある!それなのに何故魔道具に引っ掛からずにこの場所を見つけられたのだ!」
「あんなバレバレな位置に仕掛けてれば、密偵だったら誰でも解除できるわ。隠し場所が初歩的過ぎて密偵が別の罠を警戒する程だったわよ。」
自信の自慢がすべて丸裸にされた事にゴアズは激怒した。
「ふぅざぁけぇるぅなぁ!!!!そんな簡単にできる訳があるかぁ!!!」
「出来るからこの状況なんでしょうが。そもそもあんたねぇ、偽名の設定も雑なのよ。何?名前と苗字の頭文字を入れ替えるだけって。御かげで最高な無駄足を踏まされたわ。」
そう言いながら懐から何かを取り出し、それを机に向かって投げた。
それは机の上に止まるとひとりでに魔法が起動した。
{御足労頂き感謝いたします、シモンズ様}
{いや、奴の情報が取れたのなら直接赴くのも吝かではありません。}
それは音声再生の魔道具だった。
「あんたも知ってるでしょ?アンナ=フリューゲの伯父でシモンズ=フリューゲさん。その人と私達の会話よ。」
「なぜこんな物を聞かせる!粛清は決まっているのだろう!・・・あん?達だと?」
「黙って聞いてろ、クソ馬鹿。お前の死ぬ原因だよ。」
{それよりこの御仁達は?}
{初めまして私はオークショニアのオーナーと言います。もちろん偽名です。}
{同じくオークショニアの責任者の1人でアンゴラと言います。今日はパインさんに言われてこの国に来ました。}
{オークショニア?それにあなたの名前は・・・}
{今はそのままで。詳しく悦明しますので。}
そうして何故かぶつ切りの音が聞こえた後にもう一度再生された。
{成る程。恐らく私の領にもそう言うのが居ますね。}
{話が早いですね。オーナーである私の権限で、貴方の領のオークショニアの責任者と渡りをつけましょうか?}
{其方は後で。・・・説明は受けましたが何故集まったのです?彼女だけいれば十分では?}
{ドアズ・・・いえ、ゴアズですか?あの男の経歴を調べましたらね、出て来たんですよ。}
魔道具から紙がこすれる音が聞こえた。
どうやら何らかの資料をシモンズに渡したようだった。
{これは・・・成る程、私に弟と姪の敵討ちとしてオークションの依頼人なって欲しいと。}
{ええ、そうすれば少人数ではなく大多数での襲撃が出来ます。向こうがどれだけの手下が居るかは把握していますが、少人数ですと奴に逃げられる隙を与えてしまいます。}
{追跡すればいいのでは?}
{一度この世界で逃げる奴が捕まるようなへまはしませんよ。恐らくは隠居生活の拠点もあるでしょうしね。}
{その場所、もう割れてますよ。本名で登録してあるから簡単でした。}
{有難うね、パインちゃん。逃げ込んだら叔父さん所がケジメとりまさぁ。}
それを聞いたゴアズは完全に積みを意識してしまった。
粛清中に自分を守る筈の構成員は大多数の人員により再起不能。逃げ込む場所まで割れているのならどうあがいても自分は死ぬしかなかった。
だが疑問もあった。
なぜこれほど早く自身のありとあらゆる情報が暴かれたのかが不思議だった。
しかもアンゴラやオーナーの所の密偵の目立った動きの報告は無かったのにだ。
だがそれも次の音声で氷解した。
{成る程。・・・しかし驚いた。依頼後の情報収集をわずか3日とは。流石ロイエンタール唯一の新聞社の社長ですね。}
「・・・はぁ!?」
{よしてくださいよ。今のあたしはこのスノームーンの娼館長のパインですよ。・・・まあ、新聞社社長として会ったのが最初ですから、仕方ないですね。}
{何故、娼館までやっているのです?貴方は公爵家の現当主ですよね。}
{実はあたし、この国の侯爵家の中ではちょっと訳ありでしてね、それのせいで一時期この娼館の下働きをしていたんですよ。そこから縁があって、今では娼館長ですね。}
{恐ろしいな。うちでも気をつけないと情報が取られてしまいますね。}
そうして各人の笑い声が聞こえた後、魔道具が砕け散った。
「お・・・お前、・・・何で・・・裏社会に・・・。」
全てを聞き終わったゴアズはしりもちをついて壁際迄後ずさった。
逃亡の為だろうがその唯一の出口をパインが塞いでいた為、何とか逃げようと必死に後ずさった結果だった。
「使い古した言葉だけどね、生きる為に何でもやった結果が、今の地位なのよ。・・・それにあなた気付いてた?」
「何・・・がだ。」
「状況次第だったとは言え貴方、自分の国の王族を殺しかけたのよ。その責任を取らないと。」
そう言ってトロリーバックを地面に転がして開けると、中に手を入れて棒状の物を取り出した。
いや、それは棒では無かった。
棒の部分はパインの胸の位置までで、その先は六角形の馬鹿デカく太いこん棒が付いて居た。
そのこん棒自体もパインの身長に届く程の長さを誇り、使われている金属は金色なのに鈍い輝きを放っていた。
「どう?凄いでしょ。総オレイカルコス製の狼牙棒よ。流石のあたしでも【身体強化】無しだとちょっと振り辛い重量だけどね。」
そう言ってパインは狼牙棒を軽々と振りかぶると、踏み込む為に腰を落とした。
「じゃあ死んでね。大丈夫、あんたに破滅させられた人達が地獄で待ってるから。」
「嫌だ・・・こんな所で・・・・いやだあああぁぁぁあぁぁぁ!!!!」
「その言葉は今からじゃ遅いのよ、ク・ソ・馬・鹿♡」
あり得ない程の速度で踏み込んだパインのフルスイングは、確実にゴアズの命を絶った。
切りが良いのでここで切ります。
誰なんでしょうね?王族。(候補は2人居ますね。)
後、狼牙棒のイメージが付きにくい人は鉄血の超大型メイスを想像していただけると幸いです。
なお振りぬいた際の衝撃は50tの鉄塊が音速で当たるようなものです。
ルイン達何やってたの? グレープフルーツ味
ル「さっさと死ね。(象形拳)」敵「ぐびゃ(首破裂)」鍛「・・・死ね。(武器で暗殺)(ある事情でブチ切れ中)」敵「あびゃ(死亡)」網「死にんさい(武器?で暗殺)」敵「ちにゃ(死亡)」
この様にゴアズの部下を抹殺中でした。
(オーナーの指示の元、各オークショニアオーナー選出人員での狩り)




