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異界暗殺業  作者: 紅鈴
娼館長
130/180

6-18

「オレイカルコス?」

「そう、オレイカルコス。別名『成りそこないの黄金』、『失敗作の魔道合金』って呼ばれてる、錬金術師の負の遺産。」


パインがモザン達を粛清をした翌日、医院の一室にいたメイリンは前々から気になっていた疑問をメリッサにぶつけた始めた。

その一室には他にもジタンやマグノリアそしてオーバン迄居た。


「あの鉄扇はね、全部その金属だけで作ってるの。」


まずはパインが持っている鉄扇についてだった。

金色に色合いを出してるのに、何故か鈍く光るあの金属が前々から気になっていたのだ。


「魔道合金って事は特性は何?」

「そうね・・・火緋色の金の話はしたわよね。覚えてる?」

「うん。オリハルコンを作る為にやった実験の副産物。」

「その通り。だけどね、あの時は話さなかったけどもう一つ合金が出来たのさ。」

「それがオレイカルコス?」


メリッサは頷いた。


「火緋色の金の特性は軽くて魔力の通しは良い。オレイカルコスはその逆だよ。」

「そんなの研究にはいらないじゃない?」


錬金術の研究には魔法や魔力がつきものだ。

それなのに重い上に魔力の通しが悪い合金なんかは邪魔でしかない。


「そうだね。実際、一般的にはオリハルコンの別名として呼ばれてるけど、錬金術師の殆どはあの合金を侮蔑の用語として使ってるよ。」


何かを思い出したのか、メリッサは小さく笑った。


「でもね、逆の特性のおかげであの合金はある程度人気があるの。」

「何なの?」

「硬さだよ。現存する合金の中でも最高硬度を誇ってて、オリハルコンの次には固いの。」


持っていた鞄から何かを取り出しながらメリッサは話し始めた。


「あの鉄扇の重さは大体50kg。そんなのが軽量武器並みの速度で振られれば、殆どは重症。打ち所が悪ければ死ぬでしょうね。」

「成る程、朝の頭陥没死体はパインさんの仕業か。」

「そんなに酷かったんですか?」

「頭がへこんでる上に頭部が胸まで入っていてな、頭を取り出すのに時間がかかるらしい。」

「らしいとは、また無責任な。」

「捜査権限が別の隊なんですから仕方ないでしょうが。」

「メリッサ、鉄扇の重さは50キロ何だよね?パインにそんなに筋力がある様には見えない。」


やいのやいの言い始めた3人を無視したメイリンは次の疑問に入った。


「そっちはね、あの人の体に秘密があるの。」

「体に?」

「特異体質って奴でね、あの人って見た目は華奢なんだけど実際の筋肉量は相当なの。魔法使用禁止での身体性能測定は不可能な程ね。」

「どれだけ凄いの?本気なら机を壊せるのは知ってるけど。」

「メイリンちゃん。それ、間違いだぞ。当人としては()()()()()位だな。」

「・・・え?」


メイリンの驚愕を前にジタンが説明しだした。


「何時も付けてる腕輪あるだろ?あれな、警邏隊でも重罪人の護送にしか使われない超強力な拘束魔道具と同じ物なんだよ。魔法も使えないし体に物凄い負荷がかかる。少なくとも俺は同じのを付けられたら一切動けん。」

「・・・化け物?」

「そう思ってもらっても構わんだろうな。今朝の遺体の1つに顔面がつぶされたのが在ったんだが、どうあがいても人間の手で握りつぶされた跡しかなかった。」


それを聞いたメイリンは顔が青くなった。


「次から失敗しないようにしよ、殺される。」

「そう簡単には殺さないですよ。・・・後、補足なんですけどあれでいて魔法の腕も相当なんですよ。身体強化の魔法を使ったら、この国ではだれも止められないんじゃないですかね。」

「公式記録ではマンティコア同時に10体相手に傷無しで完勝したからね、あの子。」

「嘘ですよね?闘技場の伝説と言われる『無双女傑』ってパインさんだったんですか?」

「オーバンさん、10年前の情報を知ってるなんて、結構ミーハーなんだな。」

「丁度、知り合いからあの試合の券を貰いましてね。今でも印象に残っています。」


其処から男性陣がその試合の感想を言い始めた為、暫く女性陣は蚊帳の外だったがメイリンの一言で戻って来た。


「そう言えば、なんでみんな此処に居るの?私は患者の容態を付きっ切りで見る為と留守居。」

「私はお見舞いです。その患者の関係者で、今日は私は暇でしたので。」

「私は昨日、ルインさんに入院患者の服を仕立てて欲しいと依頼が有ったためですね。それなりの長期入院になるから、巻頭衣だけでは物悲しいからと。」

「アタイは今朝方ルインに頼まれてね。何でも暫く町を離れるから薬の補充をしといて欲しいんだと。」

「俺も今朝方だったな。まだ事件の影響か、此処を強制捜査されるのを避けたいから暫く監視兼護衛を頼まれた。・・・何か知らんが、パインさんに引き摺られていったけどな。あれは何だ?」

「ん、パインに引きつられて何処かのオーナーを粛清に行った。『鍛冶屋』さんと『網元』さんも一緒。」

「何でその人員なんだ?腕の差か?」

「その人選は別名がありましてね。パインさんが無条件で信用できる人員の上位陣ですよ。」

「『網元』と『鍛冶屋』がパインが入る前、ルインが同期で付き合いが長いから信用してるの。」

「向こうのオーナーも暗殺者を大量に保持してますから、確実に裏切らない人員を選抜するとそうなるらしいですよ。」

「ふ~ん。」


そうこうしているとメイリンが壁に掛かっていた時計を見た。


「時間だから患者観てくる。」


そう言って部屋の出口の方に歩き始めた。


「手術の際にかなり深い眠りに入ってるんですよね?起きますか?」

「起きる起きないは判らない。ただ、起きた時に説明が必要だから定期的に観とくだけ。」


そうしてドアノブに手をかけた時、メイリンの動きが止まった。


「そう言えばメリッサ、パインの昔の武器って何?」

「・・・誰に聞いたの?」

「今日、パイン本人から。『鍛冶屋』さんが大荷物持ってきてパインに渡してたから聞いた。」


受け取ったパインがはぐらかしたらしい事を読み取ったメリッサは顔をひきつらせた。


「此処に居る皆にお願い、今から話す事は秘密にしてね。」


明らかにしゃべりたくない雰囲気を出しながらメリッサが話し始めた。


「実は昔の武器を振ってたら壊したらしいのよ。で、さっき話したオレイカルコスでその武器を新造したの。」

「うん。それで武器って何?」

「それはね・・・」


その武器を聞いた全員が、粛清対象に無言で祈りをささげた。

切りが良いのでここで切ります。

搔きましたよね。

坊(物凄い怪力で相手を撲殺する)の力を持った寅の元締めだって。


闘技場伝説『無双女傑』編

マンティコア(ライオンの体に大型鳥類の翼と毒サソリの尻尾を持つ魔物)10体対素手の人間1人の世紀のデスマッチ。

当時18歳のパインが開始早々マンティコア1体をグーパン1発で瞬殺。

その後は殴る蹴る投げるの応酬の末、最後の1体を高角度ジャーマンスープレックスで地面に叩きつけて試合終了。

オッズはマンティコア1倍に対して人間5000倍だった為、人間に賭けた者は暫くお金持ちになった。

なお、このマッチを実現させた人物がその後、変死体になって発見された模様。(パインが秘密裏にやりました。)(理由は賞金未払いの為。)(この頃はお金がかなり必要だった為、金額が払われなかった腹いせ。)

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