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異界暗殺業  作者: 紅鈴
娼館長
127/180

6-15

翌日、アンナは襲撃されたが、何とか生存した事を聞いたパインは安堵した。


「見張っていた者の報告によりますと、犯人は使用禁止魔法を使い襲撃、即逃走しました。」

「居場所は?」

「掴んでおります。南区商工業組合長の家にいます。」

「解った。アンナさんはルインさんの所よね?」

「そうです。あ、それに関してルインさんから要請が在ります。メイリンを貸して欲しいそうです。」

「向かわせて。相手が女性だから、女性の事を見れる治療者が必要なんだと思う。ついでにマグノリア辺りが見舞いに来るでしょうから、メイリンに魔法の授業もさせる様に。」

「了解。現状報告は以上です。」


報告を終えた密偵が一旦下がると、パインは少しだけ伸びをした。


(行動自体は予想通り。使用禁止魔法は驚いたけど、ルインさんなら生きてさえいれば何とかする。博打みたいなものだけど、どうにかなったわね。)


向こうは殺したと思っているだろうが、こっちには反則級の腕を持つ治療師がいる。

瀕死の重傷でも何とかできてしまう存在はこういう事業をやっていれば安心できるものである。


(なら、彼奴らの次の手はこっちに罪を擦り付ける事。)

「悪いんだけど、噂を流して。内容は『南区の商工業組合長が危険人物を雇った』って。」

「それで引っ掛かりますかね?」

「目暗ましで良いのよ。直ぐにあっちが行動するから。」

「はぁ?」

「判って無いわね。向こうが噂の火消しをしようとしても元々のホームグラウンドじゃ無いから、どうやっても噂雀が鳴き辛い。逆にこっちは噂雀も無しに鳴くことが出来る。この差を利用すればあいつ等の勢力を一気にあぶりだせるでしょ。」

「ああ、成る程。」


向こうが馬脚を出すなら出しやすいようにすればいい。

そうすれば勝手に獲物が吊り上がるからだ。


「あぶり出したら一気にやっちゃえばいいわ。何なら『鍛冶屋』と『網元』を使って追い打ちをかければ良いし。」

「あの御2人が乗りますかね?」

「『鍛冶屋』は流通の関係で怒ってたし、『網元』も漁に使う道具が入らなくてイラついてたから、真実を知れば引き受けてくれるわよ。もちろんそれなりの報酬は必要だけどね。」

「現金ですね。」

「オーバンに言わせれば当たり前の事よ。」


今回の出来事のせいで『鍛冶屋』は売り上げが一時期落ちた。

原因としては材料の搬入と商品の取引先への迷惑行為が主だったが、そのせいで普段は寡黙で善人な『鍛冶屋』が大槌片手に界隈を練り歩く事態となっていたらしい。

勿論、『鍛冶屋』はそんな不審者ではない。

実際には取引先に入ったら偶々暴漢がおり、卸しの為に持ってきたウォーハンマーを使って暴漢を叩きのめしたようだった。

『網元』の方は直接的な被害自体は無かった方だが間接的に被害があり、仲間の投網の材料が一時期入荷不可の状態に陥り、仕方なく自分の古い投網を一時期貸していたそうだ。

古い投網の為慎重に投げなければいけなかったせいか、漁獲量が一時的に減り、収入がちょっとだけ落ちた為、仲間内での宴会が減ったのが少し癪に障った様だった。


(偶然会った時に情報を求められたのは驚いたわ。)


長年の経験がある『網元』はこれが裏組織への攻撃と見抜き、パインに情報を求めて接触して来た。

流石に粛清の事は話せなかったが、何かあれば直ぐに協力の連絡するように言いつけられてしまった。


「お嬢様、厄介な事態になりました。」


その時、御婆が慌てて入って来た。


「厄介って?」

「あのモザンとか言う奴、相当な快楽殺人鬼でしたよ。」


そう言って御婆は資料を渡してきた。

其処に掛かれていた内容を読んだパインは天を仰ぎ、そして叫んだ。


「何でこんなんが今まで生きてるのよ!」

「そんなに酷いのですか?」

「快楽殺人でも種類があるわ。此奴はね、その中でも凶悪よ。辻斬りなんて序の口、一番酷いのだと組織の家族を人質に取りながら全員切り殺して、その家族も全員殺害してるのよ。」

「・・・よく捕まりませんでしたね。」

「ドアズの馬鹿が裏で手を廻して捕まらない様にしてたのよ。奴の犯行全部に多額の金銭をかけて潰していた様ね。血に飢えた猟犬なんて一番厄介よ。」


この手の快楽殺人鬼ほど厄ネタが転がり込んでいるが、モザンは金を使えばもみ消せるラインの見極めが異常に旨い。

だから今までは何とか生きてこれたのだろう。


「だから奴の言いなりに・・・。」

「言いなりなもんですか。ただ単に便利だから使われてるだけよ。面倒になれば主人でも噛みつくわね。」


一度会ったから解る。

モザンは自分の快楽要求に便利だから組んでいるのであって、使えなくなったら容赦なくドアズを切り捨てるだろう。

それも、容赦ない外道なやり方で。


「さて、どの様に嵌めますか、お嬢様?」

「試さないで、御婆。そうね・・・。」


パインは必死に考えるが妙案と言う物は浮かばなかった。


「では、この御婆の案をお使いください。」

「何それ?」

「御耳を。」


そう言ってパインに近づいた御婆はひそひそと耳打ちをする。

最初は平然と聞いていたパインだったが、次第に顔が悪くなった。


「・・・と言う次第に御座います。」


話が終わった御婆はパインから離れた。


「・・・いや。絶対に嫌。」


それに対してパインは子供の様に首を振り始めた。


「お嬢様、非情になりなさい。大丈夫です、この婆なら切り抜けますので。」

「・・・必ず成功させれる?」

「物事に絶対はございません。ですので、コレが終わりましたら暫く(いとま)をください。」


そう言った御婆は笑顔だった。


「・・・解った。・・・全員に通達、アンナの無事を確認後『オークション』の開催をいたします。全関係者に一報を。」

「あい、解りました。ほら、行くよ。」

「はあ?解りました。」


御婆はすでに居た密偵と一緒に部屋を出た。

パインはそれを見送ると机に突っ伏した。

そして机から擦り切れた紙を取り出すと、突っ伏しながら眼前に掲げた。


「・・・何度覚悟を決めても、人を死地に送り出すのはいやね。」

切りが良いのでここで切ります。

鍛冶屋の人となりを一応出しておくと、かなりの口下手です。

それのせいで寡黙に見られるだけです。


パインって本来は善人?問題

善人と言えば善人ですね。

だから暗殺自体は必要悪と認めてる。

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