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異界暗殺業  作者: 紅鈴
娼館長
126/127

6-14

御婆が部屋から出て行ったしばらくの後、珍しい来客があった。


「マグノリア、どういう用件できたの?」

「個人的なお願いから来ました。」


ポンチョを着たマグノリアであった。


「何のお願い?」

「密偵の人を数人貸して欲しいのです。」

「密偵を?何で?」

「明日、ある孤児が伯爵家に引き取られるんですけど、その引き取りが怪しいんですよ。ですから何かあった際に対象を素早く救出できる方をお借りしたくて。」

「良いわ「お待ちください。」貸して・・・御婆、何の用?」


待ったを掛け、また天井から御婆が降って来た。


「申し訳ありません、お嬢様。先程、尾行対象が懸念対象と接触しました。それによってアンナ=フリューゲ襲撃が確定されました。」


それを聞いたマグノリアは怪訝な顔をした。


「何ですか、それ?何故アンナが襲撃なんて・・・。」

「・・・関係者だから話すけど、他言無用でね。」


少し間を置いたパインは言い聞かせるように話し始めた。


「実は近々あるオークショニアのオーナーを粛清する計画が在るの。その標的のオーナーが最後の悪あがきにあたしを狙ったのが最初の発端。」

「悪あがきって・・・計画がバレてるなら、逃げられませんか?」

「計画自体はバレて無いの。元々向こうがあたしを気に食わなかったんだけど、ちょっとオーナー会議でいざこざが在ってね。それのせいで逆恨みとこの街の利権欲しさに、色々と動かれている状況ね。」


肩をすくめながら話すパインだが、この街の厄介さをドアズが理解できていないのが理解できなかった。


「まあ、そいつがこの街のオーナーになっても速攻潰されるけどね。あの王様を舐めちゃいけないよ。」

「そんなにですか?」

「もちろん。あの王様の厄介な所は先読み不能の自由さと探知能力の高さと決断力だもん。あたし等が何回バレそうになったか教えようか?」

「・・・片手ですか?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


それを聞いたマグノリアはもっと多い事を悟った。


「あたしがオーナーになってから大小合わせて4桁か5桁はバレかけたんじゃないかな?まあ、そうならない様に密偵を色々と配置してるんだけどね。」

「・・・密偵さん、お疲れ様です。」

「ありがとね。そう言ってくれるだけでも嬉しいよぅ。」

「話を戻そうか。そいつは裏工作しながら街の情報を集めていたら、昔自分に舐めた事をした人物をそいつが見つけちゃったの。」

「それがアンナですか。」

「そうね。あのクソ野郎はね、アンナさんが1人っ子なのを良い事に、貴族であった父親を殺して自分がアンナさんの夫になろうとしてたのよ。それを伯父さんが阻止してアンナさんを教会に入れて、爵位を国に返還したの。そのせいで計画は破城、そいつは貴族にはなれなかった。」

「その時のお相手の年齢は?」

「アンナさんの当時の年齢は13歳、そいつの年齢は48歳よ。」


興味本位から聞いてしまったマグノリアは後悔した。

どう見繕っても異常性癖者、又はそういう趣味の人にしか思えなかった。


「そいつは30年前に亡国になった国の生き残りで、性格は男尊女卑の究極典型。容姿は口に出すのがきつい位醜い。」

悍ましい(おぞましい)ので何も言わないでください。」

「そうもいかないわ、その男尊女卑のせいでこんな状況になったんだから。」


呆れた顔をしたパインは話を続けた。


「教会所属なせいで下手に手を出すと教国から指名手配される、かと言って手を出さない様な性分じゃない、そんな中で奴が考え付いたのが、全部の罪をあたしにおっ被せる方法よ。」

「読めました。明日、襲撃してそれをパインさんにって事ですね。」

「そういう事、だから申し訳無いんだけど、依頼は半分しか受け取れないわ。」

「半分ですか?」

「護衛じゃないけど、事態を見守ってアンナさんを死なない様に助ける人員は用意できるわ。」

「それじゃあ駄目なんです!その場にもう1人いて、私はその子を助けたいんです!」

「・・・貴方、同僚はどうでも良いの?」


その問いはパインとしては純粋な疑問だった。

マグノリアが子供好きなのは知っていても、同じテーブルで食事をするような同僚よりも、孤児院の子を優先した事は意外だったからだ。


「どうでもはよく無いですよ。ただ、今回アンナと一緒に行く子供はつい最近入った子で、その前はストリートチルドレンでしたから奇麗な世界を知らなくて・・・」

「そこ迄、それ以上の情報は必要無いわ。同情を誘おうとしても駄目、決定事項だから。」

「そこを何とかお願いしたいんですけど・・・。」

「無理ね。仮に襲撃者を襲撃しても、私達の密偵って戦闘はからっきしなの。できる人でも1人、2人を相手取るだけで精一杯なの。諦めて。」


パインの密偵は戦闘して生き残るより逃走してでも情報を持ち帰る事に重きを置いていた。

無傷で逃げかえれば素早く品を変えて別の国でも活動が出来る為であった。


「駄目ですか?」

「駄目じゃない。その後に何とか『依頼』にこぎつける様にするわ。」

「それじゃ駄目なんですよ!なんとかして助けてください!」


マグノリアの悲痛な叫びはパインとしても理解は出来ていた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「無理な物は無理、貴方はそれを解ってるわよね?あたし達は正義の味方じゃ無い、言葉にすれば必要悪だとか悪の敵って所よ。それに、この作戦にケリが付けば彼女の安全は確保できる。子供の命位あげなさい。」

「・・・ふざけんな!!!」


マグノリアが魔法の発動準備に入るが、パインが動き出すのが早かった。

机から一足飛びに飛びマグノリアの首を掴むと、そのまま壁に叩きつけた。


「御免なさいね、腕輪が無いからあたしの方が早いのよ。ねぇ、違反者になりたいの?今回は見逃してあげるから、協力して。」

「脅迫じゃ無いですか・・・解りました、半分だけお願いします。」

「御免なさいね、その代わり必ず依頼に繋げるわ。」


協力が得られたため首から手を放し、壁から解放するとマグノリアは当然の疑問を言った。


「誰を依頼人にするんですか?」


依頼が無ければオークションの入札は起きない。

件のオーナーは粛清の対称な為、依頼ではない特別枠に指定される物で、別途依頼を付けるのなら誰かを依頼人に仕立て上げなければならなかった。


「それはね、もう貰ってるの。アンナさんの伯父さん何だけど、ちょっと前にあたしの上役が依頼を受けててね。弟・・・アンナさんの父親の敵を取って欲しいそうよ。」

「何ですか、それ!?アンナ達の犠牲は必要無いじゃありませんか!!!」


マグノリアの言う通り、依頼が入ったのならそのオーナーを殺すだけでいいのにアンナを犠牲にする理由が無かった。


「それが在るのよ。依頼開始はアンナさんが危機に陥ったら。報復の為にやって欲しいそうよ。だからこれは必要な犠牲、解った?」


そう言われたマグノリアは苦虫をかみつぶしたような顔をしたが、協力すると言った手前これ以上の争いは違反になる可能性が在った。


「・・・理解はしました。只、依頼の内容の変更をお願いします。」

「なんとなく解るけど、どうぞ。」

「アンナは助けるんですよね?なら、アンナが生きていたら依頼を開始してください。ただ、アンナが死ねば私があなたの命を奪います。」

「良いわよ、それ位なら受けてあげる。」

「そうですか、では。」


マグノリアが去り、御婆と2人っきりになった途端に御婆がキレた。


「お嬢様!何故、あのような約束を!」

「そうしないとあの子が勝手にやっちゃうでしょ、仕方ないじゃない。」

「そんなのは反故にすればよいでは無いですか!」

「駄目、暴れさせないのならこれが1番。」

「そんなにですか?」

「伊達に教国の魔法騎士団に誘われただけはあるわ。」


密偵故に各国の事情が分かっている御婆はそれがどのような恐怖なのか判ってしまった。


「あたしの立場上、そんな被害が出たら、コレなのよ。」


パインは自分の首に手刀を軽く当てる様に表現した。

言外にその行動は処刑ととらえられる行為だった。


「大変だねぇ、()()()()ってのは。」

「でも、あの時はこうしたかったから悔いはないわ。」

「知ってるよぅ。()()()()()()この婆も同じだったからねぇ。」

「見殺しは結果的にでしょ?御婆は知らなかったんだから良いじゃない。」

「駄目ですよ。事実を知った時は奥様や旦那様に申し訳無かったんですから。()()()()()()()()()、この婆はどんな道でもお嬢様について行くって決めたんですよ。」

「体は大事にね。」

「ええ、解ってますとも。・・・部下に引き継ぎをしてきます、それでは。」


そう言って御婆が部屋を出て行った。

切りが良いのでここで切ります。

前章の17話は実はこんな内容の会話でした。


教国の魔法騎士団ってどの位強いの?問題

ロイズ王国の弱小騎士団1個相手に善戦できます。

規模が小さい小国なら魔法騎士団だけで国を制圧できます。

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