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異界暗殺業  作者: 紅鈴
娼館長
123/179

6-11

「はい、皆さんちゅうも~く!社長直々のスクープが書きたい人~!」

「社長、そんなのは全員ですよ。また前みたいにくじ引きにしましょう。」


そう社員の1人に言われたサザンカは不貞腐れた。


「も~う、そんなのつまんない。」

「面白いで仕事する訳にもいかんでしょ。で、スクープって何です?」

「ついさっきの事件なんだけどね、何と西区で4頭立ての馬車が暴走しました!」

「で?」

「それを真正面から止めた人がいます!」

「社長、嘘つくんだったらもっとマシな嘘にしましょうよ。」

「あたしが直接見たのよ。それに、警邏隊に聞きこめば普通にその情報も出るわよ。」


サザンカの説明に、周囲の社員は居住まいを正し、文章作成の準備を始めた。

その中の1人が挙手をした。


「警邏隊も出張ったって事はかなり事件ですね。どんな事件だったんですか?」

「事件現場は西区の大通。内容は魔法薬によって暴走した4頭立て馬車が群衆に突っ込んだんだけど、逃げようとした群衆の1人が足を切られて逃げられなくなったの。」

「切った犯人の特徴は?」

「まるで無し。突如切られたそうよ。・・・で、それに気づいた人がいてね、その人が体を張って馬車を止めたのよ。」

「4頭立てなんですよね?どんなオーガなんですかそいつは?」

「『スノームーン』の娼館長さん。ほら、あの人とんでもない噂ばかりじゃん。今回の事で噂が本当だって証明されたよ。」

「ああ、あのビンタで頭がもげたとかの奴ですか。」

「そう、それ。何でもあの人、身体強化魔法がかなり得意らしいんだよね。それの御かげで止めれたみたい。」


集まった社員の内、男性社員の何人かがうめき声をこぼした。

恐らくそう言うのを妄想したことがある人が、反撃された際の様子を想像したのだろう。

誰だって自分の頭が吹き飛ぶ瞬間なんて考えたくもない物だが、もしもを想像してしまうのは一種の性だろう。


「そんな訳で馬車は止まって、切られた人も無事。暴走した馬も処分されずに目出度し目出度しってね。」

「目出度く無いですね。魔法薬は何時飲まされたんでしょう?」

「それは判らないかな。警邏隊も調査中みたいだし、一次情報としては此処までってところだね。」


そう締めくくったサザンカをしりに、聞いていた社員の一部がチームの結成をし始めた。

それを見たサザンカは更に発破をかける事にした。


「他にも聞きたい事がある人は西区に行ってね。あたしからの情報だけじゃなくて他人から事件情報を聞くのも仕事の内だから。ハイ、社訓復唱!」

「「「情報は多角的に、報道は正確に。」」」

「よし、じゃあ解散!」


そう言うと同時に一部の社員は外に、残りの社員は文章作成の為に机に向かった。


「すみません、此処に社長がいるとの事ですが何処に居ますか?」


其処に1人の社員が入って来た。


「あれ?副社長、如何しました?」

「ダネル?如何したの?」


ダネルと呼ばれた男性は、サザンカを見つけると詰め寄った。


「社長、出社したなら社長室に来てください。幾ら全権を委譲されれも、私は副社長なんですから。」

「私、現場主義者で~す。書類仕事やだ~。」

「そうも言ってられないんですよ。私ではどうやっても対処できないのでお願いします。」

「・・・如何したの?説明して?」


ダネルの態度にきな臭さを感じたサザンカは説明を求めた。


「他国の大貴族が社長に極秘の面会を求めてきました。何とか躱してたんですが、社長が出社したのを何処かで嗅ぎつけたらしくて現在、社長室で鎮座しています。」

「はた迷惑だな~。解った、会うよ。」


ダネルを伴いながら社長室に歩き始めたサザンカはダネルに尋ねた。


「誰が会いにに来たの?」

「名前はシモンズ=フリューゲ、公爵です。この国に来たのは観光だと言ってましたが・・・。」

「観光じゃ無いわ、姪っ子さんを見に来たのよ。」

「姪ですか?」

「そう。今、東の孤児院に居るのよ。名前はアンナ。」

「教会に入った子を見にですか?それは何とも・・・。」

「事情があるのよ。面会もそっち関連ね。」


そうして社長室に入ったサザンカはソファーに座った偉丈夫の前に座った。


「初めまして、シモンズさん。私は「挨拶はよい。本題に入って良いかな?」と・・・せっかちですね。」

「情報を扱う者が速度を重視しないのかな?」

「最近では正確性も求められますよ。」


それを聞いたシモンズはからからと笑った。


「これは1本取られたな。確かにそうだ。」


笑っているのだが、完全に笑っておらずその目は据わっていた。


「何かおありで?」

「・・・弟がな、居たのだよ。兄として出来の良い弟だった。だから自領を減らしてでも弟に領地をやったのに、それを横からかすめ取ろうとした奴を許せなくてな。」

「その原因が情報の正確性ですか?」

「ああ。10年前に可笑しな情報に踊らされ、そのせいで弟の部下が失跡をして、それのいざこざで弟が死んだ。聞いた時は『なんだソレは!』と驚いたものだよ。調べたら情報を流した奴が貴族位欲しさに偽情報を流して、弟の娘を妾にしようとしていてな、慌ててあの子を引き取って遺言通りに教会に預けたんだよ。」

「それは・・・お気の毒に。」

「今日此処に来たのは、その偽情報を流した奴はいつの間にか逃げ果せていてな、そいつの情報が欲しいのだよ。何とかできんか?」


その言葉にサザンカは頭を掻きながら話した。


「あのですね、うちは新聞社であって探偵社じゃ無いんですよ。情報収集の為に情報の買取はしていますが、情報の売渡は行って無いんですよ。」

「それは知っている。だが、其処を曲げて何とか!頼む!!」


頭を下げたシモンズを見たサザンカだが、決意は変わらなかった。


「頭を下げても無駄です。金銭も無駄です。」

「どうしてもか?」

「無理ですね。情報を集める事は出来ますが、それを1度でも売ってしまえば自分も欲しいと殺到してしまいます。ですので、我々は基本中立でないといけません。」

「・・・そうか。なら、記事には出来るのだな?」

「出来ますが、何故?」

「記事を使って奴の情報が得たい。何か奴の悪事が判ったのなら掲載してほしいのだ。」


そう言いながらシモンズが出した資料の一番上を見たサザンカは目を見開いた。

その資料にはドアズの顔が鮮明に描かれていた。


「この男・・・ゴアズ=ドメインと言うのだが奴についての情報を載せてくれ!」

切りが良いのでここで切ります。

記事を書くものは中立が良いですよね。


フリューゲ家凋落事件

当時のアンナの父親が部下の失態を雪ぐ為の行動中に暗殺され、アンナに継承権が来たが、それを狙ったゴアズがアンナを妻(妾)にしようとした為、シモンズがアンナを引き取り領地接収及び爵位剥奪を行った。

アンナは安全確保の為に教会員になり、ゴアズは爵位習得が出来なかった。

なお、アンナの父はゴアズの行動に気付いていたが、暗殺の回避が出来なかった事を留意されたし。

(だから次善策としてアンナの事を教会に任せる遺言を書けれた。)

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