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異界暗殺業  作者: 紅鈴
娼館長
119/138

6-7

会合が終わって、数日。パインはメリッサの店に来ていた。


「まだできないの?いい加減できてそうなんだけど?」


壊れたクロスリングの新造発注して数日、何時もなら完成報告が来るはずなのに未だにきてないのが不思議だった為、赴いたのだった。


「・・・緊急事態よ。どうしてこうなった?」

「何が?」

「材料全部入らなくなったんだけど・・・。」

「はぁ!?」


話を聞いてみると、何処かで荷止めが起きたせいで材料が全く入らなくなったそうだ。


「荷止めの原因は?」

「何処かの街で違法薬物が見つかって、その原因が行商人だったせいで行商の荷車全部、検めさせられてるって。だからもう暫くはその状態ね。」

「そんなぁ~。」


愕然としたパインは机に手を着こうとしたが、やめた。

今の状態ではもう一度、机を壊したのと同じになるような気がしたのだ。


「偉いね。思い止まったのなら何も言わないよ。」


手を着かなかったパインが大きく後ろに頭を振り、天井を見て数秒後にメリッサと向き直った。


「・・・こっちでも調べるわ。丁度、色々と立て込んでたから纏めてやってあげる。」

「立て込んでた?いったい何故?」

「どっかの馬鹿があたしに無実の罪を着せる様な動きをしてるのよ。それのせいで密偵の3割を火消しに使う羽目になってんの。」


会合が終わった次の日から可笑しな事が起き始めた。

何故か犯罪者になるように仕向けられ始めたのだった。

小さい物は置き引き犯やスリ、大きい物だと未解決事件の犯人にされかけていた。

勿論そんなのに覚えは無い。

そもそも言われた犯行時間は全部、人と会っていた筈なのに犯人にされかけていた。

『情報筋から連絡があった』と言っていたが、パインとしてはその情報自体が怪しかった。


「うちの密偵や()()()以外の情報屋なんてあたしがオーナーになった際に粗方潰したのに、何で今になってそんな情報屋が出て来てんのよ!おかしいでしょ!」

「それは初耳かな。」

「当たり前よ!言ったって信じないでしょ。」

「確かに。・・・でもさ、あたい達はパインのもう一つの顔を知ってるから信じるよ。」

「それはそうね。・・・そう言う訳だから、全部纏めて調べて、犯人を吊るし上げてやるって決めました。」

「よっ!その意気だ~。」


パインの意気込みをメリッサが囃し立てるが、メリッサ自身はパインがこう言う宣言をした時は厄介事が始まる前兆だと思った。


(何故か知らないけど、なんか気合と共に不運でも寄せてるんじゃないかと勘繰っちゃうのよ。)


パインは表の仕事上、こういう事が良く起きる為何時も警戒しているのに、何処かで穴が在るのかそれとも穴が勝手に掘られるのか、厄介事が起きる前兆に気合を入れる事が多かった。

だから、ロイエンタール入札者の認識では『気合を入れたパインは厄介を呼び寄せる』と認識されていた。


「そんな訳で吉報を待っててね。じゃあね。」

「ちょっと待った!それなら一度、オーバンの所にも行って。」

「何で?関係なさそう。」

「いや実は、昨日行ったらあたいと同じようでさ。ただ、オーバンならもっと詳しく調べてあるかなって。」


そう聞いたパインは怪訝に思った。

オーバンの店は信用できる業者が複数おり、何処からでも仕入れが出来る様になっている筈だった。

それが全滅している事など店舗を持ってから一度も無かったはずだった。


「もしかして、この街の入札者かつ店舗持ちの奴だけ狙って無いかな?」

「あり得るね。ルインの所はやったら国王に目を付けられる可能性が在るから出来ないとして、少なくとも『鍛冶屋』は被害に遭ってる可能性はあるね。」

「そう。」


パインが柏手を打つといつの間にか密偵が近くに来た。


「お呼びで?」

「急いで『鍛冶屋』さんの所に行って。内容は材料その他が入って来てないか如何か。」

「承知しました。何処に情報を持っていけばいいですか?」

「そうね。・・・オーバンの所に行ったらちょっと()()()に寄りたかったから、あっちにお願い。」

「承知しました。では、行ってきます。道中はお気をつけて。」

「お願いね。」


そう言って密偵が出て行った後、メリッサは呆れた。


「社会人が『こそあど』で会話するのはどうかと思うよ。」

「良いじゃない。結構長い仲なんだし。」

「あの子も()()()の事知ってるの?」

「というか密偵衆ほぼ全員、()()()の従業員よ。そうじゃないと何時、何処で、どんな情報が入るか判らないでしょ。」

「重労働極まれりだね。労働監督署に直訴しないと。」

「やめてね。それに、そっちの対策ぐらいしてるわ。言っても無駄ね。」

「何だ、残念。」


他愛の無い会話の後、2人は同時に噴き出して笑った。


「何度目かしら、この会話。」

「何度でも良いよ。あたいも肩の力が抜けた。」

「あ~笑った。そう言えば何でオーバンの店に?」

「仕事着が破れてね。それの新調だよ。」

「成る程、そう言う事ね。・・・じゃあ行ってくるわ。」


そう言ってパインが店を出た。


「頑張ってね『無双女傑』さん。」


そう言ったメリッサのつぶやきは聞こえなかった。

切りが良いのでここで切ります。

社会人になったらあまりこそあど会話をしないようにしましょう。(作者はこれで苦労したことが多々あります)


密偵ってパインの護衛が出来るの?問題

出来ません。

普通にパインの方が強いです。

何か用事がある際に直ぐ出てこれる様に何人かが陰で行動しているだけです。

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