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異界暗殺業  作者: 紅鈴
娼館長
118/122

6-6

「・・・では、当会合を終了いたします。本日はお集まり頂き、有難う御座います。お気をつけてお帰り下さい。」


ドアズがそう宣言して会合は閉会した。

そしてドアズはパイン達女性一同を睨むと、一目散に部屋から出て行った。


「何あれ?」

「さぁ?」


ほぼ何時もの事だったのであまり気にしてない女性陣だが、パインだけは違った。


(あいつ、何かやらかしそうなのよねぇ。)


何時もは睨むだけだったのに、一瞬だけ向いたパインに殺気を当てて来たので気になってしまった。

「若い、若い。」

「あんなのに絡まれるのは災難じゃのぅ。」


同じ様に部屋を出ようとしていたオーナーとアンゴラがパインに声を掛けた。

急いで席を立ったパインはアンゴラに礼をした。


「アンゴラ様、今回の事はありがとうございます。」

「何、別にいいさ。偶の善行の様なもんじゃ。」

「しかし驚きました。まさか隠形中の御婆に直接お会いになるとは。」

「ドアズが司会をやるなら恐らく妨害されるだろうと思ってな。実際、ワシの所や他の密偵衆はドアズにマークされとった様じゃ。」


会合の際、オークションの元締めへの連絡は主催者側が行うのだが、基本的に表に裏に忙しい為、自身の密偵衆を使って連絡を行う手筈になっていた。

ドアズはその密偵衆に自身の子飼いの部下を付けて監視していたようだった。


「まあワシ、あんなへな猪口共に嗅ぎつけられる程老いては無いからのう。上手く抜け出して、伝達が早そうなパインちゃんに頼った訳じゃ。」

「へな猪口とは大変、お厳しいようで。」

「実際そうじゃぞ。ゆっくり調べたら、金で雇った素人連中ばかりだったしのう。」

「探索者ですか?」

「いや、其処等辺の浮浪者。もうヤバかった。端金で町中の浮浪者雇って、元受けに通報してるの。」


どうやらドアズはある程度の実力者を頭目に、其処から浮浪者を雇って各密偵衆を監視していたようだった。


「ああいう嫌らしい手は打てるのに、何でその先は出来んのじゃろう?と不思議に思ったほどじゃ。」

「ああ、密偵達の暗殺ですか。やったら自分が犯人だと公言するからじゃないですか?」

「まあ、そうか。」

「やったらあの者は破滅だ。我等とて容赦はせん。」

「・・・オーナー、もしかして自分の所の密偵衆はわざと放置してました?」

「無論。あの程度捌けんではこの先が思いやられる。」


オーナーの所は言外に状況を利用して鍛えたようだった。


「これから先、我らの様な組織は遅かれ早かれ目を付けられる。実際、パインの所は新人として警邏隊の者を引き入れたのだろ?」

「ほう、ロイエンタールの警邏隊か・・・。さぞ優秀なのでしょうな。」

「結構な戦闘狂ですがね。ですが、頼りにはなりましょう。」

「良い良い。血の気の多さはこの業界には偶には必要だ。」


そうしてつかの間の間幕の後に、オーナーは唸り声をあげた。


「どうされました?」

「いや、何故前任はドアズなぞ後継にしたのか疑問でな。」

「確かにのう。あそこの前任は人格者じゃ。あんな痴れ者を後継にはせんじゃろ。」

「それに奴が後任になった後、其処の地域の入札者が逮捕されているのもな。」

「それは初耳ですね。」

「それはそうだろう。何せ逮捕されたのは自分を支持しない者ばかりだったからな。あのような痴れ者がいう訳が無い。」

「・・・臭すぎますね。」

「下水以下の匂いってあるんじゃな。・・・粛清かのぅ?」


そう言ったアンゴラは剣呑な雰囲気を纏い始めた。

粛清が実現すればその地区のオークションは壊滅する事を意味する為、強力な戦力の選出を頭の中で行ない始めたからだ。


「だが、そう簡単に事は運ばん。さっきの逮捕の情報も、奴が後任になった後に今日まで伏されてたからな。」

「恐らくははぐらかしますね。『勝手にへまこいて捕まった』って言いますね、彼奴なら。」

「違いない。」

「何じゃ、残念。」


粛清が実現しないとなった瞬間、アンゴラの気配が霧散した。


「そこでだ。次善策として、この3人で彼奴の過去を調べんか?」

「調べて何になるんじゃ?あまり良いもんじゃ無いだろ?」


オークションの暗黙の了解として入札者や元締め達の過去を詮索しない様にしていた。

どんな状態で誰が入って来るか等を調べても気持ちの良い物じゃ無いし、そんなのを詮索するようではこの世界で生き辛いからだ。


「彼奴の経歴の不自然な所は色々あってな。まず、この組織に入った経緯自体があやふやだった。」

「そんなの何時もの事じゃろ。」

「可笑しいほどあやふやなのだ。過去に誰かを殺されたと言いながら、次の瞬間には暗殺者に憧れていたなぞ言っているからな。可笑し過ぎて精神鑑定をこっそり受けさせたら、全くの素面だったのは逆に驚いたぞ。」

「あの体で暗殺者・・・似合わね~。」

「パインちゃん、口調が・・・いや、儂も笑いそうじゃ。」


パインの素直な感想にアンゴラは呆れたが、自分もその姿を思って笑いがこみあげて来た。


「他にもあるが、一番は特定の地域の者達と頻繁に会っている所だ。全員、黒い噂持ち。しかもこちらの事を言い触らしている可能性もある。」

「・・・嫌じゃのう。もう粛清せんか?」

「可能性で事は起こせん。だから過去を調べて粛清対象にすれば、大手を振って丸事全部消せる。」

「ふむ、・・・良いのう。儂、あやつ嫌いだから頑張っちゃお。」

「賛成です。その案に乗ります。」

「では、パイン。申し訳無いが、お前の所からも結構な人数をかけて調べてくれ。我等では()()()()()では調べれん。」

「あ~、()()()からも調べます。」

「使える手は打つ。基本だろう。我等からも密偵を出す故に頼む。」

「承知しました。」


かくしてオークショニア側からドアズに対しての秘密調査が決まった。

切りが良いのでここで切ります。

最近暑くなってきましたね。

もうすぐ6月ですか。(作者は暑がりなので夏が一番嫌い)


粛清について

基本的にはオークションの存続が1番の為、変に入れ替えをしないが、それでも看過できない事態が起きた時に纏めてオークションを更地にして再建する為の前準備が粛清です。

その地域の入札者(暗殺者)全員と元締めを纏めて殺して、罪状をおっ被せて裏組織が無くなったと思わせる事が目的です。

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