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9 町へ(2)

 トッ、と降り立つ先は、煉瓦造りの道路の上だ。


「こ、ここが……、ローパの町……」


 この世界に来て初めてのレンガの感触。

 人のざわめき声。

 馬車が行き交う音。


 視界いっぱいに大きな石造りの建物が並ぶ。

 どうやら商業地区らしく、建物自体は地味だけれど、どの窓の奥にもカラフルな商品が並ぶ。

 服屋が多いだろうか。


「おじさん、ありがとう」

 村で持たせてもらった銅貨を4枚、おじさんの手の上に載せた。


「なんてこたぁない。また、村へ帰る時は俺が送ってやるからな」

「しばらくそんな日が来ない事を願うよ」

 ハハッと笑って、手を振った。




 しばらく一人で歩いてみる。


 人が多いんだな。

 どうやらショッピング街のようで、沢山の家族連れや女の子達が行き交う。

 特に武装もしてない。


 服装はなんだか世界の名作に登場しそうなドレスのようなワンピースの格好が多いけれど、連れ立って歩く姿は日本とそう変わらない。


 もしかして俺、馬車のおじさんに担がれたのかな。実際、魔物なんて非現実的だし。

 なんて思っていると、向こうから服を血で染めた武器を持った集団が歩いて来るのが見えた。


 ゴクリ。


 あんな格好なのに、誰も注目すらしない。

 やっぱり、そういう世界なのか……。


 何か情報を得ようと、周りを見回した。


 あれ?……文字が……読める。


 店舗の入口には、それぞれクリクリとした見た事もない文字で店名が書かれているのだが、見た事もない文字なのに難なく読む事が出来た。


 文字を読むのは初めてだな。

 変な感じだ。


 村では本どころか、店舗名も誰かの名前すら見る機会は無かった。

 文字のない、もしくは識字率が低い世界なのかと思ったが、そういう事でもないらしい。


 服屋、服屋、お菓子屋、カフェ、日用品……。

 あ、あった。


 人に聞くまでもなく、冒険者ギルドは、その商業地区の外れにあった。


 人が賑わっていた所では、小綺麗なお姉さん達が行き交っていたが、この辺りまで来ると、武器を持った人間が多くなる。

 服屋よりも酒場の方が増えてくる。


 そんな場所で、何人もの人間が出入りしている大きな石造りの建物。

 そこに、『冒険者ギルド』とそのままの名称で看板が出ていた。


 様子を窺いながら、大きな木造の扉に手をかける。

 ギッ、と音を立てて覗いた先は、人と血と酒の匂いで溢れていた。


 ドキ、とする。


 ここが……、冒険者ギルド。


 入ったすぐにある大きな広間の中心は、テーブルがいくつも並べられ、この昼間から酒を酌み交わす人間が何人も見えた。

 奥には大きなカウンターがあり、そこには丁寧に身だしなみを整えた案内係達が笑顔で対応している。

 その脇の壁に向かっている人が多いのは、やはり人員募集掲示板のようなものがあるからだろうか。


「こんにちは、こちらは初めてですか?」


「え、あ」

 圧倒されたままぼんやりしていると、声をかけられる。

 くるりと振り向くと、ここの案内係らしきお姉さんが笑顔でこちらを見ていた。

やっと旅立ちって感じですね!

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