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静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


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89/230

89そして、ゴーレムは目覚める(3)

 炎の色が、部屋の中を明るく照らす。

 ユキナリは、盾を構え、後ろに跳んだ。


 ゴーレムの持つ杖から、炎が渦巻く。

 かろうじて避けた、と思った瞬間、


「風」


 と追い討ちがかかる。


 目の前の炎が風で煽られ、盾にぶつかる。

 炎は盾の力でぶちまけられるように広がり消えていく。


 その姿を見たハニトラの目が、光る。

「なんて事を……!」


 飛び出すハニトラを、制止したのはユキナリだった。

「待ってくれ!ハニトラ!」

 身体全体で受け止めようと飛び出し、ハニトラとまともにぶつかる。

「ユキナリ……!」

 抱えるような格好のまま、ハニトラを必死で止めた。


 あのゴーレムは、人の言葉を喋っていた。

 攻撃的なわけじゃない。


「待て!この場合、俺たちの方が強盗だ……!」


「けど……、あの石のせいで……ユキナリが死ぬところだったんだよ……!?」

 ハニトラの泣きそうな青い瞳が深く揺れる。


 死。


 そう言われて、実感してしまう。

 死ぬところだった。

 確かに、そうだ。

 震えるほど怖い。

 けど。


「それでも……!勝手に入ってしまったのは、こっちなんだ……」


 そこでやっと、ハニトラの力が抜ける。

 それまで好戦的だったゴーレムの方も、この会話を訝しんだのか、そこで杖を微かに下ろした。


 静まり返った部屋の中。

 部屋の隅の方で、ぽたぽたと微かに水滴が天井から落ちる音だけが響いた。


「あなた達は……盗人ではないのですか」

 よく通る女性の声だ。


 表情は読めない。慎重に、答えなくては。

「俺達は……、誰も傷つけるつもりはない。ここにも、もし首都を攻撃する要素があれば気をつけなければならないと、覗きに来ただけだ」

 ……なんて言いつつ、あの破壊した扉が見つかったらヤバイだろうか。


「そうですか。ここにはそのような危険なものはありません。ただ、イリスがマスターを待つだけです」


 イリス?

 と疑問に思ったが。

 そうか、このゴーレムの名前かもしれないな。


「ああ。すまなかった」

 怖いけれど、盾を出したまま、短剣を腰より下に下ろす。

 ハニトラも、もう戦意はないようだった。


「マスターは、何処へ行ったのですか」


 切実な、声。

 表情が動かなくても、瞳が無くてもわかる。

 切実な声。


「マスターっていうのは、コレを書いたやつか?」

 差し出した例の本を、ゴーレムに差し出した。


 石の腕が、思ったよりも滑らかに動く。

 それは確かに石なので、曲がるのを見るとどうしても目の錯覚を感じてしまう。

 ……実際に石が曲がるなんて。これも魔法だとでもいうのだろうか。


「そうです。確かに、マスターが、私の前で書いていたものです」


 けど。

 コレを書いた人間は、数十年前あの孤島に居た人物らしいと思われる。

 いや、本の中身を見れば、確かにそうだと言えた。

 何せ、“山香派”の店が、数十年前の情報なのだから。


「……失礼かもしれないんだが、その、マスターって奴は、いつから居ないんだ?」


「あと25日で、60年になります」


「その時の、そのマスターの年齢って、覚えているか?」


「はい。60代だったと記憶しています」


 軽く見積もって120歳……。


 俺は、マルを振り返るが、マルも、

「魔族でもなければ……」

 と頭を振った。

それほど平均寿命は長くなさそうな世界ですよね。

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― 新着の感想 ―
つまり第三のヒロインはゴーレムマスターですね! 信じてるから!
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