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静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


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88/230

88 そして、ゴーレムは目覚める(2)

 石だった。


 それは確かに石だった。


 暗がりの中で確かではないが、どうやら暗い色をしている石だった。


 けれど、それは女性だった。


 長い髪、唇、瞳、全てが石で出来ている。

 よく磨かれたのであろう滑らかな肌。

 柔らかそうなローブのように掘られた身体。


 ゴーレムというものを知らなければ、なんと美しい銅像なのだろうと思ったはずだ。

 なんと美しい顔立ちだろうかと。

 なんと美しい布の表現なのだろうと。


 けれど、それは確かに機械に繋がれたゴーレムだった。


 これが…………、魔法を使えるゴーレム……?


 ドキリとする。


 大丈夫だ。

 線を抜いてしまえば。


 線を……。


 手に、ゴーレムから伸びた線を掴む。

 機械から伸びた、何かを注入するチューブ。


 ハニトラとマルが見守る中、手に力を入れ、全ての線を引き抜いた。


 動いてはいない機械のチューブからは、ささやかな煙だけが立ち昇る。


 動か……ない、な。

 繋がっていた線やチューブを全て抜いても、ゴーレムは動かないままだった。


 後は念の為、このゴーレムを破壊してしまえば……。


 短剣を振り上げたその瞬間、

「ん……」

 どこからか、声が聞こえた。


 聞いたこともない声。


 え?

 まさか、ゴーレムが……。

 口は動いていない。そんなはずはない。

 そう思ってから、いや、ゴーレムは石で出来ているから、表情なんて動かないのかもな、なんて思い直す。


「マスター?」


 冷や汗が出る。

 確かに今、そのゴーレムから声が聞こえた。


 嘘だろ……。


 むくり、とゴーレムが動き出す。

 俺は、反射的に短剣の手を引き、その土の精霊の力を纏った短剣を構えた。

 ハニトラとマルが、両側を固めるように戦う姿勢を取る。


 ゴーレムと目が合う。……あの石の瞳と、目が合うという表現が正しいとしたら、だ。


「あら?」

 ゴーレムが窺うようにこちらを見た。

「マスター……ではないですね」

 疑いようもなく、それはゴーレムの声だった。

 見た目通り、美しい女性の声だ。


「あなた達は、誰ですか」

「えっと……」

 まさか、ゴーレムが会話できるとは思わなかった。

 けれど、これは朗報かもしれなかった。

 意思疎通できるという事は、会話で解決できるかも知れないという事だからだ。

 前回のゴーレムとは違う。


「マスターの、ご友人ですか?」

 けれど、ゴーレムの声は冷たくなる。

 もしかしたら表情も変わる場面だったのかもしれないが、俺にはその変化を見つける事は出来なかった。

 まあ、それはそうか。

 起きたら知らない奴がいたんだもんな。


「あ、いや、この本を偶然見つけてさ、どんな場所なのかと思って、お邪魔してみたんだ」

 しどろもどろに適度に本当の事を言う。

 けれど、それはあまり、ゴーレムには嬉しくない話だったみたいだ。


「そのノート……。マスターが大切にしていたものですよ?マスターに、会ったのですか?」

 言いながら、身体の横に置いてある杖を手に取る。


 まずい。


 ゴーレムが立ち上がり、こちらに杖を向けた。


「炎!」

新キャラ登場ですね!

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