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静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


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84 足で歩くのは大変なんだって(3)

「馬車……って……」

「あれだよ」


 と言って見せてもらったのは、なかなか大きな馬車だった。

 仕事で使っているものなのか、見た目こそシンプルだが、分厚い木で作られており、広さも十分にある。

 華美な細工がない分、使いやすそうな馬車だ。


 これなら確かに馬車だけで金貨5枚出しても惜しくない。

 借金が金貨5枚なのでバランスは取れていそうだ。


「うちは今、父さんの身体をなんとかするのが先なんだ。馬車を一旦売って、借金を返して、父さんを治したい」

 決意の瞳は、なかなか見どころがある。


「……馬車がなくなって、平気なのか?」


「……馬が一頭あればなんとかなるよ。俺、馬車は操れないけど、馬には乗れるんだ」


 そして、少年はあり得ない事を言う。

「馬は一頭残すから、二頭つけるよ。金貨5枚で買ってくれないかな」


 おいおいおいおい。

 金貨5枚で売って、借金返して、残りゼロでどうするんだ?

 父を治して、馬車を買い直さないといけないんじゃないのか。

 馬なんてつけたら、いくら中古の馬車だって、金貨8枚は出させないといけないところだろ。


「…………いや、馬車だけでいい。金貨6枚出すよ」


 ……善人ぶっているだろうか。

 いや、これくらいはいいはずだ。


「そんな……!」

 言ったはいいが、やはり金が必要なのだろう。少年はすぐに引き下がった。


 馬車を買う予算を下回って、こちらとしても有り難かった。


「ありがとう、助かるよ」


 ユキナリが少年と握手を交わし、交渉成立だ。




「とはいえ」

 ユキナリが「う〜ん」と腕組みをする。

「これ、引く動物はどうやって調達するんだ?」


 そこで、ハニトラがニヤリとした。

「獣なら居るじゃない。丁度四つ足の」

 チラリ、と見るのはマルの方だ。

「弱弱弱弱!あなたこそ、馬車くらい引けるんじゃございませんこと!?」

 ツン、とマルが鼻を上に向ける。


「心当たりならありますわ」

 マルが遠く、山の方を向くと、その白い垂れ耳が揺れた。

「あの山をご覧になって」


 マルの視線を追うと、大きな尖った山が見える。

 木の一つも生えていない、岩ばかりの山だ。


「あの山になら、四つ足の動物がいますわ」


「動物……?」


 呆けたユキナリを、マルが訝る。


「この世界には、“動物”もいるのか?」


「もちろん。普通の動物もいますわ。魔物とは違いますの。魔物は、種族ごとに社会を営む、人間以外の者たち、ですわね」

 マルが、自分の言葉に少し嫌な顔をした。


「喋ったり、できるのか?」


「ええ、もちろん」


「けど……スケルトンだのの魔物は?喋れなかったろ?」


「あれは……」

 マルだけでなく、ハニトラまでもが眉をひそめる。

「魔女に心を売った者たちですわ。大抵は種族ごと、全てが魔女の手に堕ちます。魔女派の魔物達は、脳も精神も壊された者たち、なのですわ」


「嫌な事を聞いてしまった……」


 まさか、斬っていたものがそんなものだったなんて……。


「気にする事ありませんわ。もう元には戻りませんもの。魔物の中にだって、そいつらが仇の者はたくさんおりますし。敵は敵ですわ」


「なるほど、な」


 重い気持ちになる。

 この世界には、この世界の、仕方ないこともあるのかもしれなかった。

さて、山登り開始ですね!

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― 新着の感想 ―
海(の孤島)にはスケルトンが居たのだし 山にはケモ美少女が居るはず! 続きが楽しみですね。
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