表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/230

83 足で歩くのは大変なんだって(2)

「おいおい、そこの野郎ども」


 短剣を振り回しながら声をかけると、男達が一斉にこちらを振り向いた。

 まあ、こちらも見境なくかかっていくほど、どちらが悪人かなんて知ってはいなかった。


「どうしたんだ?そんな子供を寄ってたかって」


「こいつの父ちゃんが借金を返さなくてよぉ」

 男は4人か……。

 その男どもの一番前にいるのが、こいつらの代表のようだ。


「だから!父ちゃんは病気で、金なんか稼げないって言ってるだろ!」

 少年が、威勢よく声を上げた。

「だから俺が稼いだ金を使って欲しいって……」

 少年が、握りしめていた金を差し出す。銅貨3枚。


 その銅貨を差し出した手を、男が蹴り上げる。

「それっぽっちで!」

 銅貨は陽の光を浴びて、キラキラと宙を舞った。

 慌てて拾い上げる少年の背中に、男が言い放つ。

「金貨5枚もの借金が、銅貨3枚でどうやって返せるんだよ!」


「けど!」

 キッと少年が男を見上げる。

 男がまた足を振り上げたところで、横からユキナリが男に蹴りを入れる。


 男がズザザッと倒され、男の仲間達がユキナリを取り囲もうかというところで、ハニトラとマルがユキナリの左右につく。


 男達がたじろぐ。


 その隙に、ユキナリは少年を抱え、走って逃げて行った。




「はぁ……はぁ……」


 下を向いた少年が、悔しげに呟く。

「余計な事すんなよ兄ちゃん…………」

 少年は下を向いたまま、袖で自分の顔を拭った。

「……って言いたいところだけど、あのままだと俺、何されるかわかんなかったな」

 へへっ、と上を向いたそばかすの少年の顔は、清々しかった。

「俺、あれ稼ぐのにあっちの村までたまご運んだんだぜ?」


 男達が追ってくるのを諦めたらしいのを確認すると、丘の上を眺めた。

 丘の上には、ポツンと一軒の小屋が見えた。

 どうやら少年の家は、あそこのようだ。


 家の裏手にある草原に、一同は転がる様に座った。

 草原には、遠くに山羊の群れが見えた。


 少年が言うには、確かにあの男達から借金をしているという話だった。

「うちの父さん、馬鹿なんだ。鳥を売るのが流行るって言ってさ。鳥を借金して買ってきて。そしたら鳥が病気になってさ。全部死んじゃって。自分も倒れて」

 少年は遠くを眺めた。

「一攫千金なんて狙わなくてよかったんだ。うちには山羊だっているんだから」


 どうやら、あの山羊の群れはこの家の家畜のようだ。


 少年が、ガバッと起き上がる。


「兄ちゃん達は?」


「ああ、魔女を探して旅をしてるんだ」


「は?魔女を?」


 ああ、こういう反応になるのか。

 それはそうだよな。


「魔女の情報とか、ないかな」


「……ないよ、そんなの」

 少年はつまらなさそうに、手のひらで草に触れる。


「じゃあ、馬車が手に入るところなんて、知らないか?」


「馬車?」

 少年が、何か考え事を始めた。

「ねえ」

 そして、少年は俺に、決意の目を向ける。


「うちの馬車、買ってくれないかな」

なかなか威勢のいい山育ちの少年です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
商売の才覚! マル「彼、犬ぞりを売りつけないだけ良識がありますわ」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ