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静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


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82/230

82 足で歩くのは大変なんだって(1)

 丘ばかりが見える道を行く。

 両側には、ハニトラとマル。

 きっと俺が一番最初に力尽きるだろう。


 とはいえ。

 乗合馬車には乗れなかったのだ。

 みんな、魔物であるマルを見ると、嫌な顔を向けた。

 船は大丈夫だったんだけどな。


 これから戦いに出る冒険者と、町から町へ渡る馬車では、対応のされ方は違うように感じた。


 そして、次に俺が冷たい目を向けられる。

 あまり、乗合馬車には乗りたくないというのが本音だ。


 なので、いっそのこと乗合馬車は諦めようという事にしたのだ。

 誰かがそう言ったわけじゃない。

 ただ、自然と、その選択肢は避けたわけだ。

 3人で旅をするのに、わざわざ嫌な気分になる必要はないから。


 とは言っても、長く歩いていられる自信があるわけではない。


 馬車は、手に入れないとな。


 この世界、馬車に基準があるためか、値段が比較的高い。

 なんでも、街道の真ん中で立ち往生されるのは困るので、馬車そのものの作りから、馬の管理方法まで決まっているというわけだ。


「馬車が手に入りそうなところってどこかな」

 なんとはなしにマルに聞く。

「あら、もうお疲れになりましたの?」

 マルがツンと鼻を上に向ける。

 マルチーズらしい犬が、ちょこちょこと歩く姿は、なかなか絵になるものだった。


「で?馬車は?」


 もう一度尋ねると、マルはツンとした顔のままで答える。

「そんな事、知りませんわ。わたくし、馬車なんて必要ありませんし」

「……なるほど?」




 そんなわけで、首都の方角へ黙々と歩く。

 途中、魔女の情報を得たいので、寄れるところには寄る事にして。


 ありがたい事に、今日は野宿しなくてよさそうだった。

 夜までに近い村にたどり着けそうなのだ。


 そして、何より、この国は平和だった。


 魔物の存在が、人間の敵を“魔物”にしていた。

 人間を襲う人間ももちろん居るが、それほど多くはないのだ。

 金が欲しい、何かを成し遂げたい、何かを蹂躙したい、力を試したい。

 そんな気持ちの大半は、魔物へと向いていた。

 そして、その魔物は、基本的に外を歩く事はなかった。

 そこがダンジョンでもない限り。


 なので、あまり人間が外で悪さをする事もなかった。


 まあ、居るには居るが…………。


 ガイン……!


 ほど近くで、刃が何かにぶつかる音が響く。

 嫌な予感がする。


 素通りしてもよかった。

 別に勇者でも、正義の味方でもないのだから。

 ただ、自分の都合だけで旅をしているに過ぎない。


 けれど、偶然にも見てしまったから。

 見えてしまったから。


 一人の少年が、男達に囲まれているのを。


 それを見てしまった3人に、ムッとした空気が流れる。


 そんな光景を見てしまった3人に、それを見過ごせるはずはなかった。


「……行くぞ」

 そう小さく呟いたユキナリに、

「うん」

「ええ」

 二人が反対する理由はなかった。


「守りの精霊モスよ。あの子供を守る為の力をくれ……!」

さてさて、改めて旅に出ましょうか!

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山香派のおじさん「ユキナリは良い食材を見抜く目を持ってる!」 海塩派のおじさん「おれぁユキナリの喰いっぷりに惚れたね!」 山香派「ンだとコラァー!」 海塩派「すっぞオラァー!」 ユキナリ「喧嘩はやめ…
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