81 水の精霊(4)
「これで、土と水ゲットだな!」
意気揚々と言う。
なんだか、ゲーム世界に転移したような気さえしてしまう。
水っていったら、水流か?
敵を押し流すなんてかっこいいじゃないか。
想像する。
短剣を構え、大きな水流に包まれる我!
そして、その水流は竜のように敵に襲いかかる。
水竜から出来ている剣だし、可能性はあるな。
まあ、最初からそこまでは無理だとしても、土で精霊に呼びかけるコツはわかっているし、高圧洗浄機くらいには出るだろう。
青い空の下。
みんなの前で、精霊に呼びかける。
「全てを包む精霊ウンダよ。俺に、力を貸してくれ……!」
格好を付けて短剣を掲げる。
これが俺の力だーーーー!!!
両手で掲げた短剣から、水が弾け飛ぶ。
とぽとぽとぽとぽ……。
「………………」
ハニトラが、「わー!」と嬉しそうに目を輝かせる。
マルが冷めた目で眺める。
それを眺めていたサラが、「クスクス」と野菊のように笑った。
水は、確かに出てきた。
けれど、まあ攻撃って感じではない。
これに似ているものを見た事がある。
ああ、そうだ。ポットからカップに注ぐ時のあの捩れた水の束に似ているのだ。
「これで、水には困らないね!」
ハニトラが嬉しそうに言う。
確かにそうだ。
これさえあれば、水を探し回らなくていい。
脱水症状の不安はない。
水は全ての命の源だから、これで畑を作る事も出来るだろう。
乾燥地帯に水をもたらす救世主にだってなれるかもしれない。
けど、違うんだ。
俺は、これで魔女と戦いたかったんだ。
サラがまだクスクスと笑っている声が聞こえる。
ユキナリはへたり込んだ。
「ここからまた、やってくしかないか〜〜〜〜〜〜」
そんなわけで、一行は教会を後にする。
「気にする事ありませんわ。まず0か1かが大切ですもの」
「む、確かにそうだが」
「それよりも、怖い人でしたわね」
「…………サラか?」
マルが、後ろを振り向く。まるで、まだこの会話を聞かれるのを恐れているように。
視線の先には、もう既に小さくなった教会が見えている。
「その通り、ですわ」
マルが、声を落とす。
「わたくしあの方が味方かどうか判断がつきませんわ。……ただものじゃありませんもの」
そして、思案する顔になる。
「ただものじゃない、って?」
確かに妙な空気だったが。
「私も。なんか、違うものと会ってるみたいだった」
ハニトラが、力強い目でそう言う。何かを確信しているみたいだった。
「そう、か」
確かに、サラがいる時の二人の様子はおかしかった。
二人とも、魔物の第六感のようなものがあるのだろうか。
「俺も、あの人の目、試験させられてるみたいだった」
それを聞いたマルが、更に悩んだ顔をした。
またあのサラとかいうのに会う事があるのだろうか。
「敵には回したくないな」
「ええ。同意ですわ」
何はともあれ、水の力、ゲットです!




