表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/230

80 水の精霊(3)

 ハッとする。


「ほ、んとですか……!」


 ありがたい。

 今持っている土の力に加えて、水の力まで手に入ったとしたら。

 いや、何としてでも手に入れないといけなかった。

 魔女に対抗しているという四大精霊の力。それなくして、魔女とまともに対抗できるとも思えない。


「よろしくお願いします!!」




 教会の中には、杖が飾ってある。

 真っ白な大きな真珠がはめてある、華奢な真っ白い杖だ。

 水の杖といえば青のイメージがあるが、海のそばのこの教会を見れば、海の産物ともいえるこの杖が、とてもよく似合うような気がした。


「外の方が上手くいくの。外で祝福を授けるわね」


「はい」


 空はよく晴れていた。


 サラは穏やかな笑顔を顔に張り付け、ハニトラとマルはそれに呼応してか、微動だにせずに立っていた。

 ただ、目の前の出来事に興味はあるらしく、二人とも瞳だけはキラキラと輝く。


 ユキナリの前に、初老の女性が杖を持って立った。


 そばには教会があり、海があり、そこに水があった。


 サラが、ニコニコと、それでいてあまり興味は無さそうにその光景を見守っていた。

 そして、風でかき消されそうな声で、

「もの好きね」

 と呟いた。


 女性が、杖を持ち上げ、目を閉じる。


 そして、呼びかけの言葉を口にした。


「水達よ、目を覚まして。この者の守護者となるように」


 ………………?


 そして目の前の光が、より一層強くなった様な気がした。

 光の中に……、いや、水の中に居るような気分だ。


 土の加護を貰った時とは違う。

 それは、似ている様で、全く違うものだった。


 どうして…………。


 どうして、呼びかけ先が水の精霊ではないのか。

 どうして、直接水に語りかけたのか。

 どうして、水の精霊の姿が浮かび上がらなかったのか。


 そう……、どうして、この教会は水の精霊の教会であるにも関わらず、水の精霊の像がないのか。


 疑問が湧き起こる。

 けれど、その疑問は湧き起こるのと同時に、答えも知っていたようだった。


 そう。

 精霊に呼びかけなかったはずなのに、確かにそれは精霊からの加護だった。


 その疑問のハッキリした答えを聞いていいのか分からない。

 それはなんだか、口に出してはいけない事のような気がして。


 ユキナリは目の前の、水の加護をくれたその存在を、ただただ眩しく思うのだった。


「どうも、ありがとうございます」

 ユキナリが丁寧に頭を下げる。


 女性は、にっこりと笑った。

「いいのよ。かわいいお嬢さんとワンちゃんにも、水の加護があるようお願いしておくわ」

 女性がそう言うと、ハニトラははにかんだ笑顔を見せ、マルは居心地が悪そうに下を向いた。




 サラが嬉しそうなユキナリ達を眺めながら、

「ふぅん」

 と息を吐いた。


「あんな普通の子達が、モスのお気に入りなの?」

 ゆるりと頭を傾げる。

「ええ。いい子達なのよ」

 その言葉を聞き、尚更、サラは据わった目で3人を眺めた。

「モスもウンダもお人よし過ぎるのよ。これだからお年寄りは」


「あらあら、あなたも、きっとすぐにわかるわ」

ユキナリくんはサラちゃんのお気に召さなかったようですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もう一人来るはずだった子……もしかして、それが山香派のおじさんだったりして。 きっとまた、どこかの街角でいい匂いのする屋台があって、行ってみたら 「よう、坊主」 って言ってくれるに違いないわ。だって第…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ