表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/230

75 水の中に(2)

 …………?


 身体が、動かない。

 けれど、どこからか誰かの声がする。


 息が、出来ている。


 助かった……のか…………?


「ユキナリ……様…………」

 ああ、マルの声だ。なんだ、泣きそうだな。

「ユキナリ」

 ハニトラも居る。

 二人が、助けてくれたのか。


 そこでふと、思う。


 これは…………定番の人工呼吸シチュエーションでは?


 目を開けた途端、ハニトラが照れたらどうしたらいいだろう。

 照れた顔で目を逸らすのか…………。

 いや、悪くないな。


 その瞬間、喉の奥に、ゴッと衝撃が走る。


「!?」


 目をバカッと開ける。

 目の前に、まだ明るい空が見えた。


「!?!?!?」


 口の中に、入っているのは、ハニトラの髪の毛だった。


「!?!?!?!?」


 目を疑う。

 それで気道を確保してるのか???

 ハニトラは人間ではない分、髪が触手だったりするんだろうか……?

 それにしたって、随分と物理だな……。


「もご……っ、ごっ……」


 あまりの事に声をあげると、

「ユキナリ……!」

 と半泣きのハニトラが抱きついてきた。


「ぐ……っ、ぐるじ…………」


 抱きつかれて息が出来なくなったのを、勘違いしたハニトラが余計に抱きついてきた。

「そんなに苦しかったんだね……!生きててよかったぁあああ」


 ……まあ、コイツはコイツなりに心配して助けてくれたんだもんな。


 ハニトラを何とか引き剥がし、息を吸える事に感謝すると、

「ありがとう、ハニトラ。それに、マルも」

 と息も絶え絶えに笑いかけた。




「この人が、助けてくれたんだよ」

 一息ついて紹介されたのは、40代くらいのおじさんだ。

 おじさんは、ありがたい事に、俺達を自分の家まで招待してくれた。

「ありがとうございます」

「いやいや、いいって事よ」


 ベッドに寝かされ、裸のまま布団を被る。


 このおじさん、冒険者といった感じでもない。

 外観からすると、飲食店のようだったが……?


「俺は、ヤス。ここで料亭をやってる」


 ヤス。


「は〜〜〜〜……」

 つい、その聞き覚えのある名に感心してしまう。


 あのゴーレム博士が本に書き記していた、山香派の店の料理人じゃないか。


「もしかして、ここでは、山香派のフライが食べられます?」


「おお!知ってるか!」

 お、やっぱりこの店だったか。


「けどなぁ。実は、魚をとる前に、クラーケンに出くわしてな。今日出せる魚が無いんだよな」


「それは残念ですね」


「まあ、もし捕って来るんなら、特別に無料で料理してやってもいいぜ?助けた責任ってものがあるからな」


 随分と親切な人だ。


「ありがとうございます」

 と言いつつ。

 まあ、お世話にはならないだろう。これからすぐ、ここから旅立つつもりだしな。


 と思ったのも束の間。


 ハニトラの目が、キラキラしているのを見てしまった。

 マルに至っては、背筋を伸ばし、真面目な顔をしているくせに、口からヨダレが垂れている。


 いやいやいやいや。


 けれども俺は、残念ながら、こういう視線にはとても弱いのだ。

魚釣りイベントフラグですかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
第三のヒロインは山香派のおじさんだった……! 次回、クラーケンの天ぷら、触手のポン酢和え。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ