7 異性に好かれなくなる呪い(3)
さらに3日後の、ローパの町から出ている定期馬車でローパまで行く事になった。
大体、5日に一度、ローパという大きな町から馬車がやって来ていた。
それには、簡単な新聞のようなものや、手紙などの郵便物、それに馬車の持ち主である商人が売りに来る服や雑貨、食料などを載せていた。
出発の前日。
日本から持って来たリュックに、日本から着てきた服を詰め込んでいると、お世話になっている教会に村の人々がやって来た。
見事に、女性の姿がない事に、少し寂しさを覚えながら、向かい合う。
「どうしたんですか?」
尋ねると、目の前に居たおじさんが泣き出した。
「じいちゃんの話し相手になってくれてありがとな。これ、つまんねぇもんだけど」
と、服を差し出してくる。
「ユキナリ!」
と気軽に呼んでくれる10歳前後の少年は、使い古されたランタンを差し出して来た。
「…‥これは?」
「手土産だ。これからも、ユキナリに幸運が訪れるように」
神官が言って、保存食を包んだ布を渡してくれた。
それ以外にも、お金の袋に大きな鞄まで手渡され、ユキナリの両手はあっという間に埋まってしまう。
「ありがとう、ございます」
思いの外、感動する。
少年に、がぼっと持っていたTシャツを被せてやった。
少年が、「ふおおお?」と、Tシャツを眺める。
「俺からも」
きっとしばらく使い道もないはずの、服や、財布に入っていた海外のものも含めた何枚かのコインを、みんなにお礼として渡していった。
少年達とキャッキャしていると、
「ユキナリ」
神官が、ユキナリを呼んだ。
「こっちにおいで」
「はい」
教会には、中心に精霊モスの像が立っている。
それは、背の低い……とはいえ、像自体は俺よりずっと大きいんだけど……帽子を被ったおじさんの像だ。
包み込んでくれるような温かさは、神官に似たところがある。
神官は俺の手を取ると、目を閉じた。
「地に住まう者、恐れを知らぬ精霊モスよ。目の前の若者の道に障害とならぬよう。友となっておくれ」
手が、温か……。
何かの熱を感じたと同時に、カッと神官の杖の先が光った。
何かの幻影なのかもしれなかった。
しかし、その光の中に、像にそっくりなおじさんの姿がぼやっと見えたのだ。
え……?
驚く。
精霊って……本当に居るものなのか?
いや、何かの映像?
日本に居た頃は、神と会う事なんてあり得なかった。
だからここの教会も、宗教なんてイメージだけの、何かの組織なんじゃないかと思っていたんだ。
けど。
まさか……本当に、精霊の加護、みたいなものが……。
温かさを感じた手を眺め、そして精霊が見えた場所を眺めてみたけれど、もう何も見える事はなかった。
そういやここ………剣や魔法の世界、とかじゃないよな。
まさかモンスターが出て来たり、なんて、こと……。
すっと怖くなり、それでも精霊モスに護られる感覚に安心しながら、精霊モスの像を見上げたのだった。
精霊モスはおじさまです。