64 初級ダンジョンの島(6)
…………明かりが点っているとはいえ、階段が暗いのは変わらない。
「ここを……行くのか……」
左右を見る。
ハニトラはもう決心の顔をしているし、マルは頷くばかりだ。
「問題ありませんわ。初級ダンジョンに認定されるという事は、地上であれ地下であれ、スケルトンレベルの魔物しか居なかったという事ですもの。それ以上の魔物は出てきませんわ」
「だよな……」
足が竦む。が、ここで立ち止まるつもりもなかった。
せっかく出来た新しいダンジョン。
初級ダンジョンくらい攻略できなくて、何が魔女と戦う、だよ。
カツン、と前に踏み出す。
地面は頑丈な石でできている。
「待って。私が先に行く」
「ハニトラ、大丈夫か」
声をかけると、どこか泣きそうな笑顔で、
「うん」
と返事が帰ってくる。
俺、何か言ってしまったか?
カツンカツンと響く足音。
人一人が歩くのが真っ直ぐな階段。
ありがたい事にただ暗いだけで、罠などがあるわけでは無さそうだ。
思った以上に長いが。
地中深くじゃないと意味がない事なんだろうか。
そう思い、ふと爆弾の実験でもしていたんじゃないかという考えが頭をよぎる。
いや、周りは海だ。海を越えた隠し通路だとしたら、もっともっと深い場所まで潜る事が、必要なのかもしれない。
そんな風に思いながら、かなり地中深く下がったところで、やっと床が現れた。
硬い石の床。
真っ暗だが、天井は高く、空間は広いと思われた。
この調子なら、階段の下あたりにまた電灯のスイッチがあってもおかしくないとは思うけれど、それらしき物は見つからない。
いや、待て。
壁に、小さな箱が付いている。
表面は扉になっており、派手な装飾で飾ってあった。
開けていいものか……?
この感じだと、スイッチが中にありそうなんだが。
恐る恐る、扉を開ける。
扉は、鍵がついているわけでもなく、簡単に開いた。
中には、大きな取手の付いた大きなスイッチが一つ。
怪しい事、この上ないな。
「マル、このスイッチ、危険はあるか?」
聞くと、マルは眉あたりをひそめた。
「見たことのないものですわ。どうなるかは……わたくしもわかりません」
「そうか……」
暗闇を見る。
ここでこうしていても、どうにかなるものでもないだろう。
「二人とも、警戒しろ」
声をかけてから、スイッチを上へ押し上げた。
バチン!
「!?」
何処かから、電気が弾けるような音がした。
高い天井付近にあるランプが、輪を描く様に順々に灯っていく。
3人は、息を呑む。
想像以上に大きなその円形の部屋に。
その異様な大きな部屋の中心にある、何かの大きな実験器具達に。
そして、ユキナリの背よりも大きな機械から出ている沢山の管と、その管が繋がる大きな石の塊に。
「なんだ……あれ…………」
警戒を解く事は出来ない。
何故なら、スイッチを入れた事で、その部屋の中心に置かれている機械が煙を吐き出し始めたからだ。
石だと思っていた物が起き上がる。
太く大きな管が、ズルズルと引きずられ、そして機械から外れる。
広がってゆく煙の中、その石についている二つの目が、確かにこちらを見ていた。
島エピソードももうちょっと続きます!




