61 初級ダンジョンの島(3)
光の下に、相手が出てくる。
ハニトラはブン、と腕を刃に変え、構えの姿勢を取った。
そこに出てきたのは、確かに、スケルトンとも言うべきものだった。
人型の骨。
まるで、小学校の七不思議か何かのようだ。
その骨が、自立して歩いている。
この世界の"人間"というものが、俺の知っている人間と同じ骨格を持っているらしき事に安堵すべきなのか、この状況に驚くべきなのか。
よし、俺も。
「土を司る守りの精霊モス。力を貸してくれ」
その瞬間、刃は青に光り、強い衝撃が走る。
見えないけれど、刃の周りには盾ができているはずだ。
盾で身を守るように構えた。
まず、動いたのはハニトラだった。
ぴょこんとバネのように飛び上がると、十字に構えた腕の刃を前にスケルトンに飛び込んで行く。
スケルトンは、ガシャン!と盛大な音を立て、ばらばらに崩れた。
けれど、次の瞬間、まるでバラバラにされたブロックが、また組み上がるように、骨達はまた、同じ人型の形に戻ってしまう。
「!?」
ハニトラが体勢を立て直す。
「コアは!?」
ハニトラが叫んだ。
コア?RPGなんかによく出てくる、魔物の心臓、みたいなものか?
それに答えたのはマルだ。
「ありませんわ!けど、見てくださいまし!壊れた骨は、もう元へ戻りませんわ!」
見ると、ハニトラが刃で叩き壊し、欠けた骨は、落ちたままだ。
ハニトラが、黙って頷く。
よし、俺も。
と、身構え、ふと思う。
スケルトンの、顔を見る。
骨であるが故に、頭はもちろん骸骨なのだが。落ち窪んだ目の中は、向こう側の景色が見えている。
……いや、ちょっと待ってくれ。
これって、目潰しできる目があるのか?
シュバッ!
とりあえず、顔に向かって、砂を吐いてみる。
「………………」
「………………」
スケルトンは、何事も無かったかのようにこちらへ向かって歩き出す。
ひええ。
そりゃ、そうだよなぁ。目、ないもんなぁ。
けど。
ハニトラが脚の骨に向かって、刃を叩きつけた時。
その銀色の光が眩く走り、スケルトンが砕ける瞬間。
俺も、戦いたいと思ったんだ。
もう、一人で見守るだけなのは嫌だ。
「うおおおおおお!」
盾をスケルトンに叩きつけるように、短剣を持ち、突っ込んで行く。
ゴキ……ッ!
折れ、た……!
盾がぶつかっただけのところは流石に押し返しただけだったけれど、短剣で斬りかかったところは、思った以上にあっさりと折れた。
行ける……!
この短剣、思った以上に丈夫で強い……!
改めて、すごいものを貰ってしまった事を実感する。
肋骨1本。
たった1本だけれど、それは、大事な1歩だ。
唐突に、スケルトンが右側へ吹っ飛ぶ。
左からハニトラがスケルトンの頭に向かって刃を叩きつけたのだ。
バキン!と大きな音を立てて、頭蓋骨が割れる。
そのまま、身体だけで飛びかかって来たスケルトンを盾で制し、そこをまたハニトラが叩く。
そんな風にするとあっという間に、スケルトンは動かなくなった。
辺りには、欠けた骨が散らばる。
「やったか……?」
マルが近付いてきて、スケルトンを見渡した。
鼻で辺りを嗅いでみる。
そして、
「大丈夫のようですわ」
とホッとした声をあげた。
戦闘もなんとかなりそうですね!




