60 初級ダンジョンの島(2)
そして、一行は初級ダンジョンに降り立った。
中心に幾つか建造物はあるらしいが、今は住む人もなく、ダンジョンになる前は個人の所有物だったという事だ。
ただ一人、ここに住んでいた変わり者というのも、今では行方不明。
行方不明から何十年も経った今、この小さな孤島にスケルトンが住み着いたという事だった。
岩だらけの場所から、島の中へ入っていく。
見た感じ、岩に囲まれた中心が森のようになっている。あの奥に建物があるのだろうか。
周りを見ると、他の冒険者達は迷いなく森の中へ入って行く。
「スケルトンなんて、怖くありませんわよ」
なんて強気な事を言うマルを先頭に、一行も他の冒険者に倣い、森の中へと入って行った。
静かな森の中。
「なぁ、マル」
俺は、マルに声を掛けた。
「なんですの?」
マルは、ツンと鼻を上に向けたまま、ツンとした声で返事をした。
「……“異性に嫌われる呪い”って、聞いた事あるか?」
「“異性に嫌われる呪い”?いいえ。なんですの?あなたがその呪いにかかっているとでもおっしゃいますの?」
「実は……、」
真剣な顔になる。
「そうなんだ」
言葉にすると、それはあまりにも呆気なく、そしてそれは確かに事実なのだと理解する。
女性に嫌われる体質。
ギャグ漫画か何かなら、それで生きづらいなんて事にはならないだろうが、現実、この状態は困る事が多かった。
女性の店員に会う事も多い。ビジネスだからと割り切れる人も多いのか、普通に接してくれる人もいないではないが、大抵は嫌な顔をされたりそうでなくても顔が強張っていたりする。
悪い時は無視される。
買い物もまともに出来ない。
それどころか、このままでは何かあった時、真っ先に疑われるのはきっと自分だろう。
「なるほど、そうですのね」
マルは、何かを思い出すように頭をぐるりと回し、空を見上げた。
ハニトラの方は、ピンとこないというように、キョトンとした顔をしている。
「聞いた事はありませんわ。魔女、ですの?」
「そうだ」
「魔女は、気まぐれに呪いを発しますの。思いつきの、その場限りの呪い」
「抵抗する方法は……」
「聞いたことがありませんわ。解呪したなんて話、聞きませんもの。魔女の話なんて、誰だってあまり話したがらないものですし?」
そしてマルは黙り込んでしまった。
森は段々と深くなる。背の高い木が、風に吹かれバサバサと音をたてた。
「迷子になりそうだな」
「あら、地上はまだマシですわ。小島ですもの、どこ行ったって海ですわ」
「……まるで、地下があるような言い方だな」
そこで、何かが視界をかすめ、
ドシュ、
と、目の前の木に何かがぶつかった。
「!?」
よくよく見ると、白い何かが、木の幹に刺さっている。
それも手に握りやすい太さの何かだ。
「ほ、骨……?」
目の前で立ち止まったマルが、それが飛んできたほうに向かって視線を送っている。
ユキナリも、それに釣られるように視線を横へ送った。
ハニトラが、ユキナリを守るように前へ踏み出す。
木の奥に何か、気配がした。
いよいよ戦闘ですね!




