51 3人パーティー(1)
「これくらいか?」
「そうですわね。わたくしの顔の、ちょうど横を通るくらいで」
特注のナイフの形の聞き取りをする。
紙やペンなんかがないから、なかなかに困難を極めた。
まあ、ペンがあっても、この肉球じゃあ、苦労は同じだったかもしれないが。
そのナイフを武器屋に注文しながら、一行は冒険者ギルドへ向かった。
マールの港の冒険者ギルドは、港の近くにある。
そのせいもあって、港側は屈強な海の男達の人混みを抜けると、屈強な冒険者達の人混みに紛れる事になる。
ここでは筋肉が必須なのか、どこも上半身ががっしりとした男が多い様だ。
それは、冒険者ギルドの中においても、例外ではなかった。
「かんぱい!」
の声と共に、ガッシャン!と木製のジョッキを打ち鳴らす音がそこここに聞こえる。
カウンターよりも、その食堂にいる人間の数の方が、多いみたいだった。
「マル、冒険者登録は?」
「……マルチネスですわ。ちゃんと登録してありますわ」
「経験者か。頼りにするよ」
そう言うと、マルは少しツンとした顔でそっぽをむいた。
「…………ちなみに、服とか防具とか、何か欲しいものはあるか?」
「そうですわね……。ナイフ以外にはそれほど必要なものはありませんわね。防具など付けてしまえば瞬発力が落ちますし」
……一応、それとなく服について聞いてみたつもりだったが、やはりいらない、のか。
まあ、毛皮で覆われてるから、いらないよな。
言いながら、ユキナリ一行もテーブルにつく。
ハニトラが向かいに座ると、マルはお座り状態で椅子に腰かけた。
…………そうなるのか。
「わたくし、この肉の盛り合わせがいいですわね」
「あ、それ私も!」
……なるほど、そういう感じか。
マルは、ハニトラに隠れつつも、ギルド員とも会話しているし、まあ、この世界ではこういう種族、がいる事が普通なんだろうな。おそらく。
食事が来る前に、カウンターへ向かう。
この冒険者ギルドはやはり屈強な男が多い様で、出てきたのも、俺よりも1.5倍は背が高いんじゃないかというような眼帯をつけた大男だ。
その大男は、
「じゃあ行くか」
なんて言うと、当たり前の様に、俺達のテーブルまで来て、酒を注文した。
ん?ここでは、そういうシステムか……?
大男は、ドカッと椅子に腰掛けた。
届けられたジョッキを手に持つ。
……ここで飲むのか。
仕方なく、男の正面に座る。
と、後ろのテーブルから、ボソボソと、
「魔物連れかよ。リード繋いどけよなぁ」
なんていう声が聞こえて、マルの目が一瞬黒く光った。
『魔物連れ』……。そういう認識か、ここでは。
けれどそこで、ギルド員の大男が、ジョッキをガン!とテーブルに叩きつけたので、嫌な空気が霧散する。
……まあ、悪いヤツではないのか。
「で、なんだ?何が聞きたい」
……でも、めちゃくちゃ態度がでかいな。
「この港に、初級ダンジョンが出来るって聞いたんだけど」
「ああ、そうだ」
男は、そう言いながら、改めてメンバーを見渡す。
まだパーティーを組んだばかりだというのが、わかるのだろうか。
「……港から見える小島に、魔物が住み着いたようなんだ。それが、スケルトンなんじゃないかって噂だ。ヤツら、自分の骨を振り回してきやがる。調査は終わってるから、書類が出来次第、島がダンジョン認定される。まあ、2、3日後ってところだな」
ハニトラちゃんもマルも、好物は肉です。二人とも、生のままペロリタイプ。




