47 教会の夜
かわいそうに、犬は、ベッドの上で眠りにつくと、夢でも見ているのか震えていた。
もしかすると、捕まっていた記憶が、トラウマになっているんじゃないかと思えた。
そりゃあ、あんな真っ暗な中で、鎖に繋がれていれば、嫌な思い出にもなるよな。
寝ながら震えている犬の背中を撫でる。
「もう、大丈夫だから」
独り言にも似た、そんな言葉を囁いた。
バタン!
そこで、扉が開いた。
「ユキナリ!私、やっぱりこっちで……」
「ハニト……」
「あああああああああ!!!!ユキナリ!!!!」
ハニトラは、言うなり自分の服を脱ぎ出す。
ぽよん、とハニトラの胸が跳ねた。
「なんだよ!?なんで脱ぐんだよ!?」
俺はつい、犬の事も忘れて叫んでしまう。
いい加減、全裸はやめてほしい。色々な気持ちがないまぜになる。
「ユキナリだって、その獣と…………、ベッドで……裸で……!」
「裸って……。犬だろうが」
呆れた声で言う。
「い、犬…………?獣の事?ユキナリはそういうのがいいの!?」
「どういう事だよ!いや、お前は服を着ろよ!」
犬に恋愛感情を持つわけじゃない。
俺だって、流石に人間がいい。
そんなすったもんだをやっているうちに、ハニトラは結局、ずるずると犬を引きずって出ていってしまった。
おいおいおいおい。
まさか…………食べたりしないだろうな?
慌てて追いかけようとするけれど、パタン、と閉められた女の子の部屋に、入っていいのかと躊躇する。
すでに相手は素っ裸なわけで。
これ、入って行ったらもう言い逃れできないんじゃないか?なんて。
そんな事を思っているうちに、ドアは開けられ、犬が出て来た。
「アンアンッ」
「……?」
様子が変わった、といえば変わったのだけれど、まさか人間じゃない者同士、通じるものでもあるのだろうか。
ガバッと飛びかかってくる犬を抱きながら思う。
夜中、寝苦しくて目が覚める。
「!?」
身動きも取れず、目を開けると、右側に犬がガッツリとくっついて眠っており、左側にはハニトラが、いつも通り裸で抱きついていた。
なんだこの状況……。
熱いやら苦しいやらで大変なんだが。
これじゃ寝返りも打てやしない。
無理に身動きを取ろうとすると、左側の腕に直接触れている張り付く様な柔らかさに、気がおかしくなりそうになる。
「…………はぁ」
深呼吸をする。
その気配で起こしてしまったのか、犬が俺の腹の上に、頭を乗せた。
「………………お前はさ、この教会に残っても大丈夫だぞ?それとも、次の町で、飼い主でも探してやろうか?」
静かに言う。
犬は、知らんぷりで、目を閉じてしまう。
ユキナリは、天井を見上げた。
木製の、天井。壁の高いところに、灯りがいくつかついている。
この国には、天井に灯りをつける習慣は、どうやらないらしい。
「とりあえず、次の町まで来るか?」
「アンッ」
少し嬉しそうな声が返ってくる。
ルナに似ている犬。
ただそれだけで、大切にしてやらなければと思える。
ちゃんとした飼い主、見つけてやらないとな。
犬が元気になってきましたね!




