38 最初の相談(1)
朝起きると、ふにょん、とした感覚を感じた。
「…………?」
目を開ける。
そこには、ハニトラが居た。
?????
昨夜、確かに部屋着を着せて、隣のベッドを使うように言い含めたはずだった。
けれど今、ハニトラはまたもや全裸で俺に抱きついている。
「〜〜〜〜〜〜〜」
恐怖と、ちょっと嬉しい気持ちが入り混じる。
毎朝こんな気持ちと戦わなくてはならないのか……。
そっと後ろへ離れる。
素っ裸でスヤスヤと眠っているハニトラの姿は、それはそれでおかしな絵面だ。
布団をかける習慣もないようだが、とりあえず、布団をかけておいた。
朝食は、街へ出て屋台の猪肉のサンドを買ってきた。
猪自体は美味しいのだけれど、いかんせん、ここでは三食猪肉だ。
宿へ戻り、多少の飽きと共にもさもさと食べながら、窓の外の青空を眺める。
「この中に、知ってる町の名前はあるか?」
サンドはさっさと食べ終え、目の前の古ぼけた木製のテーブルに、地図を広げる。
ハニトラが口にマヨネーズをつけながら、その地図を眺めた。
キョロキョロと地図の上を視線が流れて行く。
最終的に、フルフルと頭を振りながら、
「ない」
と一言だけが返ってきた。
おかしな癖っ毛の銀色の髪が、陽光の下でゆるゆると揺れた。
「そうか」
とはいえそれも、まだ予想の範囲内だ。
「これから俺達は、首都を目指そうと思う」
「首都?」
ハニトラがサンドイッチを咥えたまま、こちらに目を向けた。
「この国の、中心地らしいんだ。教会や伝承なんかも、きっと沢山あるだろ」
「うん」
ハニトラの、ラメでも入ってるんじゃないかと思えるほどのキラキラとした目に真剣さが宿る。
ハニトラも、故郷の事は気にかけていると見える。
「まず、お前を村まで送ってやる」
「うん」
そこで、ハニトラはユキナリに、怪訝な視線を向けた。
「ユキナリは、どうして旅をするの?」
「俺は……」
パーティーは、信頼関係が大切ってやつか。
ある程度は、言った方がいいよな。
「魔女を、探してる」
「…………魔女を……」
ハニトラが、サンドイッチの最後の一口を飲み込むのと同時に、真剣な顔を上げた。
流石のハニトラでも、魔女は知ってるか……。
「どうして、魔女を?」
「呪いを解いて、俺も家に帰してもらう。……俺、魔女に連れて来られたんだ」
「あ…………」
ハニトラが、目を見開く。
「どこか……、帰るんだね……。それって、遠いの?」
「ああ。すごく、な」
ハニトラのショックな顔は、少し心臓に悪い。
「もう、会えなくなるの?」
「そうだな。俺も、こっちへ来る方法、分からないし」
「そう、なんだ……」
ハニトラは、困ったような顔を見せて、それ以上は何も言わなかった。
ハニトラの事だから、『やだやだついて行くー』なんて言うかと思ったんだけどな。
すり合わせをしながら、首都へと向かうとよさそうです。




