37 結局二人旅(4)
その日は、泥だらけのまま、冒険者ギルドに行き、苦笑された。
とはいえ、銅貨7枚にもなった依頼は、なかなかの収入になった。
宿に戻り、風呂に入った。
川が多いからか、温泉でも湧いているのか。はたまた泥だらけになる冒険者が多いからか。
風呂という文化があるのは有り難かった。
この国の、それにハニトラの村の情報を集めようと本屋へ行ったりしているうちに、あっという間に夜になった。
小さいながらも民宿らしい宿で、さっぱりとした中庭もついていた。
中庭に、一人出てみる。ありがたいことに、誰もいない。
2メートルほどの木と、古ぼけた木製のベンチ。
ベンチのそばには、鉢植えの中で花が咲いている。
「風、気持ちいいな」
ほっと息を吐く。
正直、このままでよくはないと思っていた。
ハニトラを疑って、そのくせ、ハニトラにばかり戦わせている。
戦う能力が皆無なのだ。
この世界に来てから、出来る限りの努力はした。
けど、そんな付け焼き刃じゃ……。
とりあえず、首都に行く事で、何か道が開ければ、と思う。
「ユキナリ」
突然、声を掛けられて、振り返る。
ここでユキナリの名を呼んでくれる者は、一人しかいない。
「ハニトラ……」
その姿を見て、「ごふっ……!」と吹き出した。
素っ裸だった。
なんでまたこいつは服を着てないんだよ。
けれどハニトラの方は、そんな事お構いなしのようだった。
ハニトラが、空を見上げた。
「星」
「え?」
つられるように、天上を見上げる。
そこには、満天の星が広がっていた。
「え…………?」
元いた世界と変わらない。いや、もっとすごい。こんな星空、見たことがない。
「すご、いな……」
この世界に来て、星空を見たのはこれが初めてだった。
いつから、夜空を見上げる余裕もないほど、こんな眩しい星空に気づかないほどの生活になってしまっていたのだろう。
ハニトラの方を見る。
……正直、綺麗だった。
透明で力強い。
「私、ずっと一緒に居たい」
ハニトラが、仁王立ちで真っ直ぐにユキナリを見た。
その格好で仁王立ちはやめろ。俺の為にも。
「私は、もう決めたから。ユキナリと一緒について行く」
……本当に、しょうがないやつだよ。
「俺も、決めたよ」
覚悟は、決まった。
「行こう、一緒に。まず、お前の村を、必ず探し出す」
そこで、少し泣きそうになったハニトラに、申し訳なさそうに言った。
「俺、まだ戦力にはなれなくて。けど、必ず戦えるようにするから」
「私を剣にして。……あなたは、必ず私が守る」
「ああ……。しばらくは、その調子で頼む」
見たこともない星座の下。満天の星の下。
嬉しい涙を浮かべたまま、抱きついて来ようとするハニトラを、俺はすかさず避けた。
「な……、なんで〜〜〜〜〜〜」
「当たり前だ!宿から追い出されたくなけりゃ、お前もちゃんと服を着ろ!」
やっとパーティー結成ということで!




