30 結局のところ、さよならだ(3)
その日は、夜中まで本の整理をさせられた。
本というのは、意外と体力仕事なのである。
ヒーヒー言いながら、それでも、それで得られるものはあった。
やはり、魔女の本はほぼ無いということと、精霊の本はどのジャンルにもあるということだ。
この国の地図らしきものも見つけた。
『精霊』というのはジャンルが幅広い。
物語の本にも当たり前のように載っているし、それ以外の歴史書、宗教学、何かの手紙、それに、魔術書のようなものの中にも載っている。
精霊が4人居るというのはどうやら共通認識らしい。
10歳くらいの少年、それより少し年上に見える少女、それに、おばあさんにおじさん……。
実は、そのおじさんには俺にも見覚えがあった。
俺が住んでいた教会にあった像。ペケニョの村を出る時、光の中に見えたような気がしたあのおじさんだ。
キャラの見た目なんてブレそうなものなのに、不思議とどのキャラも見た目は決まっているようだった。
本当に、精霊というものが存在しているみたいに。
精霊というものが、ただの宗教的な概念ではなく、本当に存在しているのでは、なんて考えてみる。
町中で時々見かける、杖を持った人が居るように、実際に魔法的なものがあるんじゃないか、なんて。
まあ、あったとしても、……俺が魔法使えるわけじゃないだろうしな。
夜中を過ぎてから、本屋の爺さんに呼び出された。
魔女の本を何処からか出して来てくれるのかと思ったら、そうではないようだった。
だってこんな本屋なら、地下室の一つ二つあるんじゃないかって思うじゃないか。
爺さんは、店の奥の小さなダイニングテーブルに、俺を座らせた。
そして、窓がちゃんと閉まっていることを確かめると、静かに話しだしたのだ。
「この国は、魔女のオモチャ箱なんだ」
そうだ。
俺がこの世界に落とされた時、魔女はこの国を“カタライの国”だと言った。この国に来て、魔女カタライが支配者だとも聞いたことがある。
「ほとんどの物が、魔女が集めたオモチャだ。この、ワシもなぁ」
「爺さんも!?」
「だけじゃない。この国の多くの者が、収集品かそれの子孫だ。あの、精霊達でさえも魔女に連れてこられたものだ」
「精霊…………。精霊が、本当に魔女に連れてこられたっていうのか……?精霊が……存在している……?」
「もちろんだ」
爺さんは、何か、言ってはいけない事を言うように、真剣な目になった。
「この国に閉じ込められた精霊達は、魔女に対抗している」
「え………?」
光の中で見た、精霊モスの事を思い出す。
「じゃあ……精霊達は魔女の敵なのか?」
「そうだ。4人の精霊達は、ひとつの町で結界を張った。その町が、その後この国の首都となった町、ソルだ」
「魔女…………魔女は何処に居るんだ……?」
部屋の中は、頭がクラクラするほどに静かだった。
「それは……誰にもわからない。どこかの屋敷で、この世界を観察し、楽しんでいると聞く」
そう、簡単にはいかないか。
けど。
まず、首都に行くのはいいかもしれないな。
精霊はどうやら味方のようですね!




