表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/230

25 ハニー・トラップ(2)

 それは俺が、朝呟いた言葉だった。


「本気かよ…………」


 本当に……名前がないんだな……。

 なんとも言えず、言葉を失う。


 冒険者になってしまったからには仕方がなかった。

 あのゆるゆる動くゾンビ達を二人がかりでなら、どうにかなりそうな気もした。


「俺、今のうちに依頼書掲示板、見てくるよ」


 そう言って、カウンターから離れる。


 今日一日は、一緒にダンジョンに入って俺が戦えばいい。

 武器代と宿泊代を稼いで。


 きっと、どうにかなる。


 依頼書掲示板を物色する。

 初心者ダンジョンの内部地図……?

 どうやら、冒険者ギルドが出したその依頼は、内部がどうなっているのか知りたいというもののようだった。


 これなら出来る。

 幸先はいい。


 そう、思った。




 くるりと後ろを振り向く。


「あれ?」


 朝なので、人もまばらなギルドの中。

 食事をする為のテーブルが並んでいる。

 その向こう側にカウンターが見える。

 ダニエルが、困った様な顔をしている。


 …………女の子は、何処だ?


 トイレ?


 ついさっきまで、そこに居たのに。

 自然と、早足でカウンターへと向かっていた。


「ダニエル」

「……はい」

 いつもの笑顔はどこにいった?


 なんだか、嫌な予感がした。


「あの子は?」


「それが……」

 ダニエルが、やはり困った表情を浮かべる。

「中級ダンジョンに向かうって」


「…………え?」


 目の前の景色が揺らぐ。


「何言って……」


 本当に戦えるのか?

 もし戦えるとして、武器無しで?


 いや、待て。

 あの女の子がいなくなって、困るような事なんて、ない。

 冒険者の登録料を、払わされたくらいで。

 それ以上の被害はない。


 探す義理もない。


「あなたを待たなくていいのかって止めはしたんですけどね」

 それでも、俺はいくらか不安な顔をしていたんだと思う。ダニエルは俺の顔を見て、

「中級ダンジョンは、馬車に乗らないといけないから、すぐに会えますよ」

 と、慰めるような事を言った。


 ダニエルに馬車乗り場の場所を聞いて、そこへ向かう。


 大丈夫だ。アイツは金なんか持ってないから。


 ……いや、何が大丈夫なんだ。いいじゃないか、居なくたって。


 きっと、馬車乗り場でウロウロしているに決まってる。あんな世間知らずの女の子なんだから。


 もしかしたら、あの冒険者登録料を盗るのが目的の、ハニートラップだったのかもしれないし。


 追いかける必要なんてない。


 追いかける必要なんて……。


「すみません……っ」

 中級ダンジョン行きの乗合馬車を見つけ、御者台に座っていたおじさんに声をかける。

「銀髪の女の子を、探してるんですが……!白いワンピースに、赤い上着の……」


 息が上がる。

 ……俺、いったい何やってんだ。


 馬車の中には、居そうにはなかった。


 ほら。


 きっと。


 やっぱり騙されたんだよ。


 袖で汗を拭いながら馬車の中を見渡す。

 焦っているのか落ち込んでいるのか、なんなのか自分でも掴めない気持ちを抱えたまま、引き下がろうとした瞬間だった。


「ああ、その子なら、」

 ビクッとする。


 そんな情報、聞きたくはなかった。

 嘘であってほしかった。


「歩いていくって、一人で森に入って行ったよ」

さて、二人は再会出来るでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ