表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

228/230

228 静かにしろよ、ハニー・トラップ!(2)

 そして3日後。

 慌ててセッティングしたにしては、なかなかいい雰囲気の祭り会場が出来上がった。


「大丈夫なの?ナーナ」

「大丈夫よ」


 しばらく療養するかに思えたナーナも、祭りには女王として参加するという。

 横でオロオロするサラに、ナーナは表情を硬くしながらも、決意の瞳を向けた。


「私も司祭の娘です。魔女に、あんなもの問題にもならなかったと意思表示したいの」


 流石のサラも、その言葉には折れるしかなかった。


 そんなわけで、ナーナを女王に迎えた祭りは始まったのだ。




「いらっしゃい」

「きゃー!!!!」

 出店で客を迎えたユキナリが、一言口にしただけでこの有様。

 ……焼きとうもろこし売ってるだけなんだが……。


 後ろでバキン、と生のとうもろこしが粉砕される音がする。


 デレデレしてるわけじゃない。むしろ怖いと思っているのにその反応はないんじゃないか……。

 改めて、これが魔女の新しい呪いなんじゃないかと思う。そんなバカな……?いや、絶対そうだ。


 実際、モスの畑で作られたとうもろこしは絶品だし、ヤスさんから教わった山香派の味付けをアレンジしたものなので、味も最高。

 別に俺の呪いのせいだけで売れてるわけでもなんでもない。


 とはいえ、言い訳の一つでもしたほうがいいのかと、後ろを振り返る。

 すると、後ろでは涙目のハニトラが、ペロペロと粉砕したとうもろこしを芯ごと食べている最中だった。


 うっ……。


 泣かれるとよけい心にくるわけで……。


 ユキナリは、空の一番星を眺める。


「あ〜……、ヤスさん?」

 隣の出店で魚のフライを売っているヤスさんに声を掛けた。

「ここの出店、まかせてもいいかな」


 するとヤスさんは、ニヤリと口の端を上げた。


「みんな!」

 そう言うと、ユキナリはハニトラの手を取る。

「仕事は終わりだ!祭りにいくぞ!」


「…………!」

 ハニトラが、涙目のまま嬉しそうに笑った。

「うん!」




 祭りの夜が来る。


 すっかり暗くなった広場で、ランプの光が一つずつ灯される。


 ユキナリが、ハニトラと向かい合う。


「一緒に踊ってくれる?」


 するとハニトラが、ぽぽぽぽぽ、と音がしそうな顔をした。

 ……魔女の呪いって、魔物には効いてないよな……?


 赤い顔でポカンとしているハニトラの手を、半ば強引に引く。


「ユキナリ……!」


 音楽に合わせて、くるりくるりと二人で踊る。


 視界に、マルとトカゲが一緒になってクルクルと踊る姿が見えた。

 イリスは、自分の姿のせいか躊躇していたようだが、ナーナに手を引かれ、隅でゆっくりとステップの練習を始めた。


 広場の中で、楽隊の音楽が流れる。

 一際明るい街の明かりの中、人々は笑い声を上げた。

 煤汚れた弦楽器、少し欠けた笛。その笑い声もどこか、いつか傷ついたものだったけれど。


 目の前で、少し変わった癖っ毛の少女が踊る。


 ユキナリは、幸せだと思う。


 ずっと、みんなと、こうしていたいと思った。

 そしてみんなで、最後は笑うんだ。

次回、最終回です!よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ