表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

226/230

226 ヒロインは火の精霊

 サラは一人森の中、岩に座っていた。

 密集した木々ゆえに暗い森だったけれど、サラのいる苔むした大きな岩を中心に、頭上から光が降り注いでいる。


 サラは、疲れた時にここで休むのが好きだった。

 火の気配がないおかげで、サラがここにいる事を悟られ難い。

 静かに一人、風を感じられる場所だった。


 別に、ルヴァがどうだのこうだのというわけではない。ただ、風を浴びると気持ちがいいという、それだけだ。


 三つ編みにしている髪を解き、一つ息をつく。


 その時、パキン、と近くで誰かが小枝を踏む音がした。

「……!」

 サラが、くるりとした瞳を上げた。




 風の教会のてっぺんで、ルヴァは頬杖を突いていた。

 歩いて来るユキナリ一行を見つけて、スルリと地上に降り立つ。


「あのさ」


 いや、出来るだけ真剣にならないように。ならないように。


「どした?ルヴァ」

「サラ、知らないか?」

「え、行方不明なのか?」

「いや、そうじゃないんだけどさ。最近……、昼間いないんだよ」


 そうなのだ。

 サラが、最近、昼間にどこかへ行ってしまうのだ。


「……風で探せないのか?」

「あ、いや……。危険があるわけじゃないから、サラを監視するような事はしてなくて……」

「俺達でできる用事があるなら……」


「違うんだ」

 観念するように呟く。

「誰かと、会ってるんじゃないかと思ってさ」

 そう言うと、ユキナリの顔がキョトンとした。

 慌てて付け加える。

「あ、サラってさ、人に騙されやすいって言うか、前も連れ去られた事あるだろ?だから、また誰かに騙されてるんじゃないかって不安で!」


 伝わったのか伝わってないのか、ユキナリが「ふ〜ん」という顔をする。ちょっとニヤついているところをみると、誤解されたんじゃないだろうな?そういうのじゃないんだが。


「心配なら、探しにいけばいいだろ?」


「…………だよな」

 本当に密会だったらなんて思うと腹立たしいが、本当にそうなら放っておくつもりもなかった。

 ……サラのことだから、変な男に騙されてることもあるわけで。




 一人になって、慌てて、風に問いかける。

 サラは何処だ?


 静かな風の中に、声が聞こえた。

 森?

 森の……奥。


 どうしてそんな所に。

 人目のつかない所に。


 ムッとする。

 これは本当に、密会の可能性があるんじゃないか?


 風を起こし、一気に空へと舞い上がった。

 サラに向かって、全速力で木々の間を飛び抜けた。


 森の奥。

 風が集まる場所。


 見つけた。


 サラは、大きな岩の上に居た。

 それに近くに、誰か、居る。


 なんだよアイツ。


 男だ。

 人間の男。

 サラの絵を描いているようだった。


 ムッとする。


「サラ!」

 躊躇もなく、ズンズンと歩いて行った。

「え!?ルヴァ?」


「何してんだよ。そいつ、誰?」

 尋ねると、「あはっ」なんて笑い声が返ってくる。

「この人は、ジャン。なんかね、ずっと私の像を作ってくれていたらしいの。『美しすぎて女神みたい!』ですって!」


「なんだよ、そんな薄っぺらい言葉に乗せられちゃってさ」


「なっ……。少なくとも一言も言わない殿方よりマシ……」


 サラが言い終わらないうちに、ポカンと口を開けている男の前から、サラを捕まえ、空中へ攫っていく。


「えっ……?」

 サラの赤い髪が靡いた。

 森からズンズン上へ。高く高くまで舞い上がると、サラはもう何も言わなかった。


「あんな奴に笑ってみせんな」


「あー……、うん」


 連れ去った場所が高すぎたのか、サラが妙にしおらしくなる。

 そんなサラが珍しくて、ぼんやりとその顔を眺めてしまった。


「な、何よ」

「……いや、高すぎたかな、って」

「む〜〜〜〜」

 さっきまでの顔はなんだったのかって思うくらい、サラの顔はすぐにプンスカになった。

「そうよ!早く降ろしなさいよね!!」


 そんなに高い場所が苦手なら、まあもうちょっとからかってやろうか。

そんなちょっとしたラブな回、ってことで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ