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静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


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225/230

225 ヒロインはスライム

 あれから一週間。

 首都に留まっているが、魔女はあれから姿を現すことがなかった。

 魔女が居たはずの魔女の家も、精霊達を連れ確認しに行ったが、何もかもが消えていた。

 魔女本人どころか、ベッドやテーブルといった家具も、ゴーレムがあった広い場所も、何もなくガランとしていた。

 ただ、巨大なゴーレムのあった場所の床に、イリスのマスターの黒い染みだけが残っているのが、ここに魔女がいた事の証だった。




 平和だった。


「お兄さん!ポップコーンいかが?」


 女子が不必要なくらいに話しかけてくるようになった事以外は。

 そして、

 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ。

 ハニトラが嫌な音を立てて首元を回るようになった事以外は。


 ……何か削られている気がする……。

 元気になってる、というよりは怒ってるよなぁ。


「じゃあ、ひとつ」


「はぁい」


 魔女の呪いは効いていた。まあ、今度は異性に嫌われるのではなく、好かれる呪いだけれど。

 ……これは、相手に好かれているのが呪いのせいかも、なんて悩んでしまうという悩ましい呪いではあるけれど、正直、魔女として何が面白いのか不明だ。


 ポップコーンの紙袋を抱え、広場に座った。


 首都では、復興作業がどこもかしこもで行われていた。

 視線を巡らせれば、建て直される家や橋、補修される道などが目に入る。

 ユキナリもその作業に明け暮れていたが、今日はもう特にする事もない。


「ほら、ハニトラ」

 指でつまんだポップコーンを差し出すと、ポムッとハニトラが指ごと咥える。

「いてっ」

 ピリッとした刺激が指先にあり、声を上げる。


 最近、時々こういうことがあった。

 ハニトラが、指から何か吸っているような感触だ。……雰囲気的に、怒っているような気もする。

 生気を吸われるというほどではないし、ハニトラの栄養にでもなっているのなら、特に言うことはない。




 夜は相変わらず、ハニトラとマルの間で眠った。


 マルに好かれているという事が発覚したので、

「こういう事はよくないんじゃないか?」

 とは申し出てみたものの、

「わたくしの仕事はユキナリ様をお守りする事ですもの」

 なんて、提案は一蹴されてしまった。


 夜。

 ベッドに横になり、ハニトラの感触を確かめる。


「ハニトラ」


 手に、ぷにんとした感触が乗る。

 深い碧のコアを持つ、銀色のスライム。


 正直、どんな姿であっても、ハニトラはハニトラだと思うし、一緒に居たい気持ちは変わらなかった。


「お前は?」


 なんて、返事のない質問を投げかけて眠る。




 チュンチュン。

 窓の外で、鳥の鳴き声がする。

 目を閉じているのに、眩しい。

 朝、だ。

「ん……」

 今日も朝から炎の教会の補修をしなくては。庭は一旦置いておくとして、今日は塀に取り掛かれるだろうか。いや、先に入口の階段の……。


 ノロノロとそんな事を思っては、ユキナリは、ベッドの上、ハニトラの感触を求めて手を伸ばした。


 むにゅん。


「…………え?」


 なんだかいつもよりも、気持ちのいい弾力が……。


 目を、開ける。


 目の前の光景が信じられなくて、もう一度、

「え……」

 と声を出した。


 陶器のような肌。銀色のおかしな癖のついた長い髪。一糸纏わぬ女の子の姿が、そこにあった。


 手の先を見て、

「ぅあ……っ」

 と驚き、慌てて手を引っ込める。

 感触は忘れないでおこう……。


「む……」

 ハニトラが、眠りから目覚める。

 銀色のまつ毛が震えて、ふっと開いた碧の瞳と目が合った。


「ユキナリ……」


 呟いて、にへっと笑う。

 そこで、何かに気付いたのか、ぱちっと目を開けた。


「え……?私……」

 ハニトラが、自分の身体を見回す。


 弾力のありそうな涙が、ハニトラの瞳で揺らいだ。


「ユキナリ!私……!」


「ああ!」


 そのままユキナリが、ハニトラを抱きしめる。


「ハニトラ!大好きだ!」

明るくハッピーエンドな感じで!

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― 新着の感想 ―
ゴリゴリの怒気から一転、ぽよんが戻ってまいりましたね!
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