210 ゴーレムを追って(2)
「行くしかありませんわね」
目の前には、巨大な足跡があった。
確かにそれは、ハニトラを踏み潰した足だった。
魔女もきっと、一緒に先に行ってしまったんだろう。
足跡を見てしまうと、息が止まりそうになった。
これにハニトラが……。
何も考えないようにして、ただ足跡を追う。
ゴーレムと、魔女を探して。
途中、また一つ踏み潰された町に出くわした。
ゴーレム達が行きの道で踏み潰していった町だった。
ゴーレムが通って数日。
静かで、誰もが暗い顔をしている町だ。
魔女はこんなところを再度通っても何とも思わないのか。
それとも……、楽しんででもいるのだろうか。
足を速める。
もうこんな事が起こらないように。
ゴーレムの足を追うのは、それほど大変な事ではなかった。
何より、空を飛ぶことで、速く移動出来るようになったのが大きい。
ゴーレムの足跡が消える前に辿り着く事が出来た。
そんなわかりやすい足跡で、もしかしたら罠かも、なんていう思いもあるけれど。魔女のいる場所へ行けるなら、どんな罠だって問題はなかった。
ゴーレムの足跡は、質素な家のような場所へ入って行った。
木造で飾り気がなく、ともすれば捨て置かれた廃屋のような場所だった。
見た目だけでは、誰もここに誰かが住んでいるとは思わないだろう。
両開きの戸は大きくて、あの巨大なゴーレムでもくぐれてしまえる大きさだった。
どうしてそこへ入ったのがわかったのかと言えば、そんな壊れかけの廃屋であるにも関わらず、その壁が壊されていなかったからだ。
その先にゴーレムの足跡もない。
ここで突然空へ飛び上がったわけでもなければ、その大きな、まさにゴーレム専用なんじゃないかと思われる戸をくぐって中に入ったに違いなかった。
言葉はなく、仲間達と顔を見合わせる。
戸に触れると、音もなく開いた。
もっとガタガタするのかと思ったのだけれど。見た目よりも手入れされているようだった。
戸を、かろうじてハネツキオオトカゲが通れる程度に開き、そっと中へ入る。
目の前には、真っ暗な場所へ続く地下への階段があった。
音を出さずに、そっと下へと降りて行った。
階段は、かなり下まで続いていた。
数えきれないほどの段がある。
どこまで降りたのかわからないほどのところで、鼻につく妙な匂いがした。
お香でも焚いているのではないかという匂いだ。
一番下へ降りたところで、その匂いが強くなる。
どうやらこの階は、その匂いが充満しているらしかった。
ゴーレムは何処だ……?
暗く、天井の高い大きな廊下を行く。
薄暗い奥の部屋に、あのゴーレムは居た。
「…………」
ユキナリ達は、ゴーレムを見上げた。
さて、ハニトラは見つかるのでしょうか。




